citron voice

詩人・そらしといろのブログ~お仕事のお知らせから二次創作&BL詩歌まで~

『現代詩手帖』2016年8月号・特集【2010年代の詩人たち】に寄稿しました

2016-07-28 14:51:34 | 主な仕事の記録
雑誌『現代詩手帖』2016年8月号・特集【2010年代の詩人たち】(思潮社)に、詩「モーション」を寄稿しました。また、アンケートにも回答しました。
2010年代の詩人の皆さんの、最新作がたくさん読める一冊です。
アンケートへの回答にも、詩人それぞれの考え方や好きなモノが見えてきて、面白い記事になっています。

たぶん、詩そのものは何でもない日常からも出現するものだと思っています。
(最近は、非日常と日常の境目がなくなりつつありますが。)
詩に限らず、何かを表現する人は、それを見てしまったからつい、何とかして掴んで、表すのだと。
それって何だか、お化けや妖怪を見てしまった感覚に似ているのでは、と思う今日この頃です。


【刀剣乱舞×詩】身を濯ぐ【 #刀剣詩 】

2016-07-22 17:11:02 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
今日は二十四節気の大暑ですが、七月とは思えないほどの肌寒い日です。
それでも夏、海を連想する浦島虎徹を近侍にして、気分だけでも夏休みを味わいたい審神者。
その名のとおり、浦島太郎の彫り物が刀に施されている浦島虎徹。
肩には亀の精霊?、亀吉を乗せた、人懐っこい性格のキャラクターです。
海に縁のある浦島太郎の物語ですが、刀にとって海水は錆びてしまうから毒だよなぁ、なんて思ったところから今回の詩を妄想しました。
タイトルは「身を濯ぐ」です。

………………

身を濯ぐ/そらし といろ

きぃらり
きらり
きら

全身で触れる
天空の篝火
赤い波飛沫
誰かの竜宮城

触れる傍からさめてゆく
夢のように氷雨のように

夏に塩水を欲しがるひと
こめかみから塩水を流し
知らないはずの海を導く
ひとのなかに海、波、潮

鋼の生身には毒の塩水
鋼の生身には酒の血潮
塩水を欲しがるひとは
確かに竜宮城なのに、

こめかみを流れるものの
区別がつかなくなる、
魔の夏にこそ降れ、夕立。

ここからも
どこからも
海も
竜宮城も
遠いほうがいい


野川朗読会7が終了いたしました。

2016-07-19 17:34:37 | 主な仕事の記録
昨日、無事に「野川朗読会7」が終わりました。
今年も満員御礼で、たくさんのお客様がいらしてくださいました。
梅雨の晴れ間の暑いなか、ご来場くださり有難うございました!

今回は事前にお知らせしていた出演者の、相沢正一郎さんと北爪満喜さんが急遽ご欠席となり、当日に少しプログラムが変更となりました。
それでも、出演者皆さんの迫力ある刺激的な朗読は、野川の野鳥にまで届いたかと思われます。

野川朗読会では毎回、朗読前に一言を発するのですが、
今年のテーマは「私の名前~私はみんなにこう呼ばれたい~」でした。
出演者それぞれの「私の名前」をまとめておきます。(敬称略)

一色真理・「しんちゃん」
伊藤浩子・「ザロペチョ」
生野毅・「名なしのクイ」
渡辺めぐみ・「みよじ」
そらしといろ・「そらいろ」
三角みづ紀・「海」
長野まゆみ・「なが°のさん」
田野倉康一・「たのくらくん」
新井高子・「子蛸ちゃん」
樋口良澄・「松の木屋」
杉本真維子・「真維太郎」
岡島弘子・「ろこ」

トークテーマの"名前"にちなんだ詩を朗読された方が多かったようでした!
私はそこをあまり意識していなかったのですが、書き下ろした詩にたまたま、"名前"という言葉が入っていることに、実は朗読の最中に気づきました。

今年の野川トークは、企画展の共同主催者である三角みづ紀さんも加わりました。
トークテーマは、「宮沢賢治と稲垣足穂が好んだ美術のちがい」という感じでしょうか。

今年は宮沢賢治の生誕120周年記念です。(宮沢賢治は1896年生まれ。)
宮沢賢治が大好きな長野さんはふと、稲垣足穂が1900年生まれで、賢治と同年代であったことに気づきます。
賢治も足穂も、"鉱石"や"天体"という共通点が作品に見られるのに、二人が好んだ美術はまるで性質の違うものでした。
(美術の年代はそらしが調べたものなので、正確なものではない可能性もあります!)

【賢治が好んだ美術】
・イギリスのヴィクトリア朝……1837~1901年頃
・ラファエル前派……1850年頃
・ウィリアム・モリス商会……1860年頃
・印象派……1869年頃
・後期印象派……1870年頃

【足穂が好んだ美術】
・キュビズム……1909年頃
・ダダイズム……1915年頃
・シュルレアリスム……1924年頃

賢治が好んだ美術は、賢治が生まれる以前の時代に流行ったもので、人物と風景を描いた絵画作品が中心です。
足穂が好んだ美術は、足穂が思春期から青年期にかけて流行ったもので、オブジェや抽象画が中心です。
ちなみに、二人とも実家は裕福な家庭です。

トークの内容で印象的だった部分を、会話っぽく記しておきます。(敬称略)

長野 「たぶん賢治さんは、デュシャンの【泉】を賢治は受け入れられなかったと思う。」
田野倉「賢治は盲目的に好きになる部分があるから、情報通でもダダなどは目に入らなかったのかもしれない。」

長野 「『銀河鉄道の夜』は西洋的な風景が細かく描かれていますね。」
三角 「どこを想像で書いたのか、身近な素材を使ったのか……。」
そらし「生き物の描き方はかなり飛躍しているから、これは想像だと思う。」
田野倉「投稿の詩作品のように捉えれば、どこが想像でどこがネタ元があるか、なんとなく分かると思う。」
三角 「そう言われると、見分けが付けられそうです!」
長野 「じゃあ、これらの景色は画集や写真を見て描いた可能性も?」
田野倉「画集や写真を見た可能性もあるけれど、賢治はどちらかといえば、言葉から更なる妄想を膨らませるタイプかと。」

そらし「今回、二人の好んだ美術を比べてみると、賢治は絵画作品にも、人物を欲したのだと思います。春画収集をしていたから、ヴィクトリア朝のヌード作品の肉体美にも興味があったのかと。」
長野 「(ヴィクトリア朝のヌードは女性だけでなく)男性のヌード作品もありました。」
そらし「!!でも、足穂にはちょっと、肉肉しい絵だったから、ダダやシュルレアリスムに行ったのかと。」
長野 「足穂さんはおしりは好きなんだけれどね。」



旅する詩人と小説家、吉増剛造さんと長野まゆみさんのトークを聞いて。

2016-07-13 18:35:31 | 日記
7月12日(火)、ジュンク堂書店池袋本店にて、詩人の吉増剛造さんと、小説家の長野まゆみさんによるトークイベントが開催されました。
吉増さんの御本『GOZOノート』全3巻が刊行された記念のトークイベントです。
長野さんが『GOZOノート2 航海日誌』へ解説を書かれたので、トークテーマは<旅する詩人と小説家>でした。
トークがとても興味深く面白いものだったので、私なりにメモしたものを記事にしておこうと思います。
箇条書きですが、かなり長いです!
トークを聴きながらのメモなので、空耳情報があるかもしれません。雰囲気を楽しんでいただけたら嬉しいです。

………………

トークテーマ
<旅する詩人と小説家>


トーク
詩人・吉増剛造さん×小説家・長野まゆみさん


★地名から始まる妄想
長野さんは、吉増さんの詩に登場する地名から妄想が始まる、とお話しされる。
吉増さんは長野さんの妄想を、体内のどこか深いところから沸き上がるもの、「タイナイソウ」という風に呼ぶ。
体内の、生きた皮膚の、という言葉も出ていたので、「体内(胎内)想」や「体内(胎内)層」のような漢字を当てるのかもしれない。

★裸のメモについて
吉増さんが書かれる【裸のメモ】と呼ばれる作品は、普通は1週間から10日ほどで書き上げる。
しかし、企画展のために書いてくださった、長野さんへの【裸のメモ】は20日ほどかかった。
メモの制作には、20本くらいの万年筆を用意する。おそらく、インクがそれぞれ違う色で、万年筆を変えるタイミングで何かが切り替わるそうだ。
長野さんへの【裸のメモ】は日付印が押してあり、それを押したのがとても良かったと、吉増さんのご感想。

★驚きが向かう方向
吉増さんが長野さんの小説『あのころのデパート』を読んで、「関西の人がカレーライスに生卵を落とすことに、長野さんが驚いている。」と指摘して、また『フランダースの帽子』収録の「ポンペイのとなり」で、冒頭の階段を上る描写や、ふいにメジャーが巻き戻る描写をお話ししながら、玉子と同様に垂直方向・縦方向の動きに注目されていた。
長野さんの初期作品では、ロケットがよく登場する。ロケットもやはり垂直の動きで、それがもっと身近なものになると、玉子や階段というものになるのだろう。

★洗面器と流線形に対するこだわり
吉増さんも長野さんも、洗面器というアイテムがお好きだという。

吉増さん……幼い頃に洗面器と強烈な出会いがあったよう。今朝、洗面器に顔をつけながら、河童の頭のお皿も洗面器かもしれない、と思った。洗面器から流線形を知ったように思う。

長野さん……昔の、琺瑯びきの洗面器に、ボタンや小石が落ちる音がとても印象的で忘れられない。自分の知らない、何かとても大きな、宇宙のようなものの音と感じた。

★ミルフィーユとデイジー
吉増さんが長野さんの小説『冥途あり』の「まるせい湯」にある、牡蠣殻がミルフィーユのような層をなしている描写に注目された。
牡蠣が船のように移動して繁殖し、死んで、また新たな命が育まれる。小さな生き物への思いやりと、層へのこだわりが感じられる文章だ。

ところで、吉増さんと付き合いが深かった芸術家に、彫刻家の若林奮さんがいる。若林さんの彫刻作品に「DAISY」というものがある。
吉増さんは“デイジー”というタイトルを、映画『2001年宇宙の旅』に出てきた「コンピュータHAL」が壊れかけたときに歌う歌の“デイジー”だと思っているそうだ。
というのも、若林さんとその映画の話題になったときに若林さんが「3回も見た。」とおっしゃっていたそう。

彫刻作品「DAISY」は鉄製の作品で、大部分が地中に埋まっている。設置場所は府中市美術館
実際に鑑賞ができるのは、地上にわずか数センチのみ出ている、鉄でデイジーの花を象った部分だ。
長野さんは地中に深く埋まった部分に注目して、鉄の作品が東京の地層の一部になっていくことを想った。
吉増さんは、長野さんが若林さんの「DAISY」に対して、地層に対する視点を持ったことに、とても感心されていた。牡蠣殻の層から、地層への妄想と連想。
ちなみに、この“デイジー”は、長野さんが雑誌『三田文学』に書き下ろされた短編小説「耳つきの書物」に、“ひな菊”と翻訳された言葉として登場することになる。

★言葉の層を透かし見る
長野さんは、吉増さんの詩作品に出てくる言葉を、層のように捉えている。
吉増さんが作中に「タ タ」と書いたら、そこから“死”という漢字を見る。繰り返して「白」が登場するときは、骨を連想する。
詩の表面の文字のみではなく、その下に吉増さんが刻んだものを見ているようだ。

★田老と津波、そして龍泉洞
旅というテーマなので、長野さんが震災後に岩手県田老町を訪れたときの話題が出た。
今は平穏な港に見えて、当時の津波のイメージが結びつかなかったそうだ。ただ、防潮堤にいやらしさを感じたとおっしゃっていた。
また、見えない津波のイメージを抱えて、龍泉洞へもぐったという。

★声のガウディ建築をしたかった
トークの終盤、吉増さんが忘れられない音についてお話しされた。第二次世界大戦の最中に、吉増さんが聞いた放送【東部軍管区情報 はるか沖合より敵機侵入しつつあり】。
吉増さんは、この言葉と声を「はるかなものの声を聞きました。」とおっしゃった。
現在、竹橋にある東京国立近代美術館(=近美)で吉増さんの展覧会が開催されているが、かつて竹橋に、その放送に関わる軍の施設があったことを、つい最近知ったそうだ。
少年時代に遭遇した衝撃的な言葉の地へ戻ってきてしまったのだ。
長野さんもこのような経験があるようで、「追いかけた背中がうしろにある感覚。」とおっしゃっていた。

質疑応答の際に、私は吉増さんに「吉増さんの好きな音、嫌いな音について教えてください。」とお伺いした。
吉増さんは、幼い頃から音にとても敏感に反応してしまう体質だという。「音との付き合いの77年だった。」という言葉が印象的だった。
だからこそなのか、吉増さんはたくさんの音をカセットテープに録音して集めた。
近美の学芸員さんが、吉増さんの自宅に眠っていたカセットテープの山を見て、なにか直感的にこれを展示するべきだと思ったらしい。

そうして、実際に美術館で1000本ものカセットテープが展示されている。
声ノートと呼ばれる、吉増さんの声を録音したものは300本ほどあるそうだ。
吉増さんはこんなこともおっしゃっていた。

「ノートするっ大事な言葉。」
「声のガウディ建築をしたかった。」




東京ポエケット、お疲れ様でした

2016-07-11 16:40:53 | 主な仕事の記録
7月10日(日)、ポエケットは無事に開催されました。
私は稀人舎さんのブースでお手伝いをしていました。
ご来場いただいた皆さま、ブースへ遊びにいらしてくださった皆さま、有難うございました!

今年のポエケットでのゲスト朗読は役者で朗読詩人の川島むーさんと、特製カタログの編集とデザインを手掛けてくださった、カニエ・ナハさんが、印象的な朗読を披露してくださいました。
川島さんは浴衣を着ていらして、見た目からして涼し気に。大阪弁の響きが心地よかったです。
カニエさんは、下駄でリズムを刻みながらの朗読。呼吸の間合いに緊張感がありました。

Web上では知り合いでも、オフラインでは初めましての方にもお会いできて、嬉しい一日になりました。

次に参加するイベントは、11月の文学フリマ東京を予定しております。
新刊が用意できるよう頑張ります~。

企画展「長野まゆみと詩人たち」の特製カタログの委託販売を行います

2016-07-11 16:18:15 | 主な仕事の記録
★特製カタログの残部の販売につきまして

企画展「長野まゆみと詩人たち」の会場であるジュンク堂書店池袋本店様にて、
5月8日(日)まで限定販売をしていた企画展の特製カタログですが、若干の残部が出ました。

今後、残部はイベント及びギャラリーにて限定販売いたします。
イベントでの販売につきましては、開催日をご確認の上、委託販売をお願いしているブースへお越しください。

【イベント】
6月19日(日)福岡ポエイチ
委託ブース・平地智さん【C-11】
委託部数・限定10部
※福岡ポエイチは終了し、カタログも完売いたしました。
 お買い上げいただき、有難うございました。


7月10日(日)東京ポエケット
ブース・稀人舎さん
委託部数・限定20部
※東京ポエケットは終了いたしました。
 お買い上げいただき、有難うございました。


次回販売予定★11月23日(水)文学フリマ東京


【ギャラリー】
大阪iTohen 
※6月19日以降の販売を予定しております。


「長野まゆみと詩人たち」特製カタログ
☆価格・1,500円(税抜き)

☆収録内容
小説家・長野まゆみさんがオススメする日本の詩集の紹介
長野さんの物語から書き下ろした詩人の詩作品
詩人から長野さんへの質問とその回答 
長野さんのイラスト作品 など

☆参加者一覧(敬称略) 
【小説家】
長野まゆみ
【詩 人】
吉増剛造
田野倉康一
川口晴美
藤原安紀子
望月遊馬
三角みづ紀
そらしといろ
【写真家】
吉原洋一
【装丁家】
カニエ・ナハ


【刀剣乱舞×詩】砂子の舟【 #刀剣詩 】

2016-07-07 14:16:21 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
博多藤四郎後藤藤四郎は、商売や小判と縁のある短刀。
昔も今も変わらず、お金はないよりあった方が良いものでしょう、たぶん。
それでも、お金に代えられない価値のあるものは、たくさん存在する。
そのことを敏感に感じ取っていそうな、博多君と後藤君の視点で、ある本丸の七夕の日を妄想しました。
タイトルは「砂子の舟」です。

………………

砂子の舟/そらし といろ

金のひらたい折り紙の星
ひるがえる祈りの言の葉

届け先に不在の神様
そうして自分に返送される
可視化された祈りは

懐の小判の一枚が
素麺や酒や短冊になる
賑やかな宴の夜とするため
この夜を
明日には持ちこせないこと
流れた時間の行く末は
誰も知らないまま

後付けできない
ひとのいのちを
祈りたいと想う
短冊に走る筆が

小判の一枚に
小判の箱一つに
換算できない日々

金のひらたい折り紙の
星にひるがえる祈りの
言の葉を懐にかかえた
金臭い手で遡上、遡上

この夜が
このひとが在るために

【2016/7/10】TOKYOポエケットに参加します【 #ポエケット 】

2016-07-01 16:18:28 | 主な仕事の記録
第20回 ポエケット
日時:2016年7月10日(日)
   午前10時から午後4時半まで
料金:入場無料
場所:江戸東京博物館1階会議室
ゲスト:カニエ・ナハ、川島むー

………………

昨年と同じく、【稀人舎】さんのブースにて詩集や特製カタログを販売いたします。
当日は私もブースで売り子をしておりますので、お気軽に遊びにいらしてください。
そういえば、開場である江戸東京博物館ではちょうど、大妖怪展が開催されているようです。
妖怪を見ながら、言葉にひそむ怪しい何かを、覗いていただけたら嬉しいです。
以下、販売を予定している本のお品書きです。

☆…☆…☆
企画展特製カタログ『長野まゆみと詩人たち』
価格:1,500円

既刊詩集『フラット』
価格:2,000円

既刊ミニ詩集『palette
価格:600円

直筆詩画2点
価格:1,000円



無料配布『アニポエvol.3』

☆…☆…☆