★この記事の内容はユーチューブで英語版を投稿しました。海外からの反応も見ることができます。⇒ The Mystery of the Japanese Word IKIGAI Our respective IKIGAI
「IKIGAI」(Francesc Miralles 、 Héctor García共著)という本が500万部を超える世界的なベストセラーになったことがひとつのきっかけとなり、「IKIGAI」という日本語も世界的に知られるようになりました。実際私がXでおこなったアンケート調査によると、回答してくれた282名のうちの約46%の人々がこの言葉の意味を知っていました。⇒ アンケート結果
では「ikigai」という日本語は、上に挙げた本ではどのように理解されているのでしょうか。日本語の「ikigai」に近い語にはフランス語の「raison d’être(レゾン デートル)で「存在意義」「存在理由」という意味ですが、この語とて二語で出来ており、しかも元は哲学用語で、日本語の「ikigai」のように昔から気軽に日常の中で使っていた言葉ではないのです。たった一語で「ikigai」に匹敵する意味を表す外国語はないようです。
この本によれば「IKIGAI」とは、「私が生きる意味とは何かWhat is the meaning of my life?」や「長く幸せな人生の秘訣とは何かWhat is the secret to a long and happy life?」という問いへの答えだと理解されています。すでに「ikigai」を見つけた人ともいれば、探し中の人もいるけれど、ともあれ日本人は、それを持つことは非常に大切だと考えると、この本は紹介しています。
しかし日本人にとって「ikigai」は、生きる意味や目的というほど大げさな意味だけではなく、もっと気軽に使う日常語でもあります。毎朝飲む一杯のコーヒーに「ikigai」を感じる人もいるでしょう。「カラオケで歌うのが私のikigaiだ」という人もいるでしょう。しかし、「カラオケで歌うのが私の生きる意味だ」という言い方はちょっと奇妙に響きませんか。つまり日本語の「ikigai」という言葉の意味はこのようにかなり幅広く、ぴったりの訳語はないのです。
私は数週間前に大学時代からの友人たち数人と久しぶりで会い、楽しいひと時を過ごしました。こうした古き良き友人たちと談笑するのは、私の「ikigai」の一つと言ってよいでしょう。しかし、それが私の生きる目的だとうにはちょっと違和感があります。
一番目の回答。「僕の生きがいは、自分で作った2つの語学メソッドを広めること。僕のつくった①英語メソッドは、日本人に英語を話させるメソッド。日本人が英語を話せるようになると、日本人はポジティブになります。②日本語メソッドは、英語国民に日本
語を話させるメソッド。彼らが日本語を話せるようになると、彼らは個人主義的な欲望を抑制し、心がやさしくなります。世界がいま混迷を極めているのは、西洋文明の使命がもう終わったから。だからこそ、言葉の交流を通して、新しい文明原理を探しだす必要があるはずです。このミッションを実践してゆくことが僕のikigaiです。」
二番目の回答。「私の現在のikigaiは、SNSを有効に使って日本文化を世界に発信すること、オンラインで世界中の人々と交流すること、そのために英語力を向上させることなどです。またその手段としての英語力の伸びを少しずつでも実感できることが日々のikigaiとなっています。」
三番目の人物については、直接彼からの回答はなかったが、彼の生き方そのものが充分に彼のikigaiを推測させる。彼は一般会社を退職したのち63歳から69歳まで大学院で社会福祉デザインを学び、博士課程を修了した。そしてこの分野での社会貢献を続けているようだ。
四番目の回答。「私が心掛けているのはスティヤング、シークプレジャー。齢とるな、そして旅行というのではなく、楽しさを求める旅人でありたいということかな。」
五番目の回答。
これはかなり長い文章の回答でした。前半では、「ikigai」を含むいくつかの日本語が、日本人の持つ哲学や生き方そのものにどれほど深く根差すかを解説しています。この部分は訳すのが難しいので省略します。ともあれ、「ikigai」という言葉は、日本の文化全体や日本人の生き方そのものかかわっているので、それを簡単に説明することは難しいとしたうえで、「私のikigaiのひとつはこんな日本人の哲学、日本性とは何かを探求することだ」としています。
以上のようにこの5人はいずれも75歳を超える年齢でありながら、それぞれ自分の明確なテーマをもち、追求し続けているのです。彼らはそれを「ikigai」という言葉で問い直したり、自覚しなおしたりする必要はおそらく感じていないでしょう。私も同様です。しかしそれぞれ自分のテーマの追求にikigaiを感じているは確かで、それを改めてikigaiとして意識する必要もないのです。ところで写真の中の誰がどの回答をしたかはあえて示しませんでしたが、おそらくそれぞれが持つ雰囲気から推察できるのではないでしょうか。
私達と同様に多くの日本人もいつもikigaiを意識して生きているわけではないでしょう。「あなたのikigaiは何?」と聞かれれば、これこれが私のikigaiかなと思い出す程度でしょう。
しかし日本人には深く伝統に根ざした日本人に特有の生きる姿勢があります。それは様々な職人の生き方にとくに顕著に表れる生き方ですが、一般の日本人も多かれ少なかれその伝統を受け継いでいます。それは、自分のプロフェッショナルとしての技術をとことん磨いていこうとする姿勢です。そして技術の向上と人間としての成長を不可分なものとして捉えるのです。つまり仕事の場を技術の向上だけではなく人間としての成長の場として捉えるのです。そして多くの日本人は、そこにikigaiを見出す傾向があるのです。
ひとつ例を挙げましょう。海外の日本食レストランでは、ひとつのレストランで寿司、天ぷら、ラーメンなど、代表的なほとんどの日本料理を堪能できます。しかし日本では、寿司屋やラーメンショップ等々とそれぞれの料理に特化したレストランが圧倒的に多いのです。そして、寿司職人は誇りを持って少しでも上質の寿司を提供しようと努力します。ラーメンシェフもまた、少しでも美味しいラーメンを提供しようと励むのです。彼らはみな、専門の料理人としての誇りをもち、たとえikigaiという言葉を意識せずとも、そこにikigaiを見出している場合が多いのです。
もう少し一般的な例を挙げましょう。日本を訪れる海外旅行者たちは、日本の様々な店や交通機関、公共機関などでの客へのサービスの質の高さに感銘を受ける場合が多いようです。日本のサービスの質が高い理由のひとつは、それぞれの職場の人々がその仕事にプロとしての誇りを持っている場合が多いからです。彼らもまた自分のできる最善のサービスをしようと努力します。そしてそこに誇りとikigaiを見出す場合が多いのです。
もちろん、自分の仕事に誇りもikigaiを見出せない日本人も多いでしょう。しかし、どんな仕事でもプロ意識と誇りを持って取り組む日本人が比較的に多いのも確かです。日本製品が世界中で信頼される理由のひとつも、個々の製品の背後に、仕事へのこうした姿勢があるからです。
自分はこの仕事の専門家として、限りなく技術の向上させていきたい、そしてそれを通して人間として成長していきたい、現代の日本人も多かれ少なかれそういう生きる姿勢を伝統として受け継いでいます。
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「IKIGAI」(Francesc Miralles 、 Héctor García共著)という本が500万部を超える世界的なベストセラーになったことがひとつのきっかけとなり、「IKIGAI」という日本語も世界的に知られるようになりました。実際私がXでおこなったアンケート調査によると、回答してくれた282名のうちの約46%の人々がこの言葉の意味を知っていました。⇒ アンケート結果
では「ikigai」という日本語は、上に挙げた本ではどのように理解されているのでしょうか。日本語の「ikigai」に近い語にはフランス語の「raison d’être(レゾン デートル)で「存在意義」「存在理由」という意味ですが、この語とて二語で出来ており、しかも元は哲学用語で、日本語の「ikigai」のように昔から気軽に日常の中で使っていた言葉ではないのです。たった一語で「ikigai」に匹敵する意味を表す外国語はないようです。
この本によれば「IKIGAI」とは、「私が生きる意味とは何かWhat is the meaning of my life?」や「長く幸せな人生の秘訣とは何かWhat is the secret to a long and happy life?」という問いへの答えだと理解されています。すでに「ikigai」を見つけた人ともいれば、探し中の人もいるけれど、ともあれ日本人は、それを持つことは非常に大切だと考えると、この本は紹介しています。
しかし日本人にとって「ikigai」は、生きる意味や目的というほど大げさな意味だけではなく、もっと気軽に使う日常語でもあります。毎朝飲む一杯のコーヒーに「ikigai」を感じる人もいるでしょう。「カラオケで歌うのが私のikigaiだ」という人もいるでしょう。しかし、「カラオケで歌うのが私の生きる意味だ」という言い方はちょっと奇妙に響きませんか。つまり日本語の「ikigai」という言葉の意味はこのようにかなり幅広く、ぴったりの訳語はないのです。
私は数週間前に大学時代からの友人たち数人と久しぶりで会い、楽しいひと時を過ごしました。こうした古き良き友人たちと談笑するのは、私の「ikigai」の一つと言ってよいでしょう。しかし、それが私の生きる目的だとうにはちょっと違和感があります。
一番目の回答。「僕の生きがいは、自分で作った2つの語学メソッドを広めること。僕のつくった①英語メソッドは、日本人に英語を話させるメソッド。日本人が英語を話せるようになると、日本人はポジティブになります。②日本語メソッドは、英語国民に日本
語を話させるメソッド。彼らが日本語を話せるようになると、彼らは個人主義的な欲望を抑制し、心がやさしくなります。世界がいま混迷を極めているのは、西洋文明の使命がもう終わったから。だからこそ、言葉の交流を通して、新しい文明原理を探しだす必要があるはずです。このミッションを実践してゆくことが僕のikigaiです。」
二番目の回答。「私の現在のikigaiは、SNSを有効に使って日本文化を世界に発信すること、オンラインで世界中の人々と交流すること、そのために英語力を向上させることなどです。またその手段としての英語力の伸びを少しずつでも実感できることが日々のikigaiとなっています。」
三番目の人物については、直接彼からの回答はなかったが、彼の生き方そのものが充分に彼のikigaiを推測させる。彼は一般会社を退職したのち63歳から69歳まで大学院で社会福祉デザインを学び、博士課程を修了した。そしてこの分野での社会貢献を続けているようだ。
四番目の回答。「私が心掛けているのはスティヤング、シークプレジャー。齢とるな、そして旅行というのではなく、楽しさを求める旅人でありたいということかな。」
五番目の回答。
これはかなり長い文章の回答でした。前半では、「ikigai」を含むいくつかの日本語が、日本人の持つ哲学や生き方そのものにどれほど深く根差すかを解説しています。この部分は訳すのが難しいので省略します。ともあれ、「ikigai」という言葉は、日本の文化全体や日本人の生き方そのものかかわっているので、それを簡単に説明することは難しいとしたうえで、「私のikigaiのひとつはこんな日本人の哲学、日本性とは何かを探求することだ」としています。
以上のようにこの5人はいずれも75歳を超える年齢でありながら、それぞれ自分の明確なテーマをもち、追求し続けているのです。彼らはそれを「ikigai」という言葉で問い直したり、自覚しなおしたりする必要はおそらく感じていないでしょう。私も同様です。しかしそれぞれ自分のテーマの追求にikigaiを感じているは確かで、それを改めてikigaiとして意識する必要もないのです。ところで写真の中の誰がどの回答をしたかはあえて示しませんでしたが、おそらくそれぞれが持つ雰囲気から推察できるのではないでしょうか。
私達と同様に多くの日本人もいつもikigaiを意識して生きているわけではないでしょう。「あなたのikigaiは何?」と聞かれれば、これこれが私のikigaiかなと思い出す程度でしょう。
しかし日本人には深く伝統に根ざした日本人に特有の生きる姿勢があります。それは様々な職人の生き方にとくに顕著に表れる生き方ですが、一般の日本人も多かれ少なかれその伝統を受け継いでいます。それは、自分のプロフェッショナルとしての技術をとことん磨いていこうとする姿勢です。そして技術の向上と人間としての成長を不可分なものとして捉えるのです。つまり仕事の場を技術の向上だけではなく人間としての成長の場として捉えるのです。そして多くの日本人は、そこにikigaiを見出す傾向があるのです。
ひとつ例を挙げましょう。海外の日本食レストランでは、ひとつのレストランで寿司、天ぷら、ラーメンなど、代表的なほとんどの日本料理を堪能できます。しかし日本では、寿司屋やラーメンショップ等々とそれぞれの料理に特化したレストランが圧倒的に多いのです。そして、寿司職人は誇りを持って少しでも上質の寿司を提供しようと努力します。ラーメンシェフもまた、少しでも美味しいラーメンを提供しようと励むのです。彼らはみな、専門の料理人としての誇りをもち、たとえikigaiという言葉を意識せずとも、そこにikigaiを見出している場合が多いのです。
もう少し一般的な例を挙げましょう。日本を訪れる海外旅行者たちは、日本の様々な店や交通機関、公共機関などでの客へのサービスの質の高さに感銘を受ける場合が多いようです。日本のサービスの質が高い理由のひとつは、それぞれの職場の人々がその仕事にプロとしての誇りを持っている場合が多いからです。彼らもまた自分のできる最善のサービスをしようと努力します。そしてそこに誇りとikigaiを見出す場合が多いのです。
もちろん、自分の仕事に誇りもikigaiを見出せない日本人も多いでしょう。しかし、どんな仕事でもプロ意識と誇りを持って取り組む日本人が比較的に多いのも確かです。日本製品が世界中で信頼される理由のひとつも、個々の製品の背後に、仕事へのこうした姿勢があるからです。
自分はこの仕事の専門家として、限りなく技術の向上させていきたい、そしてそれを通して人間として成長していきたい、現代の日本人も多かれ少なかれそういう生きる姿勢を伝統として受け継いでいます。
★この記事の内容はユーチューブで英語版を投稿しました。海外からの反応も見ることができます。⇒ The Mystery of the Japanese Word IKIGAI Our respective IKIGAI