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日本の庶民文化の力

2009年04月02日 | coolJapan関連本のレビュー
日本のアニメやマンガが世界にクールと受けとめられ、広がっているひとつの理由は、それが子ども、庶民、大衆の中から自然に生まれ、展開していったからかも知れない。

伊藤洋一氏と日下公人氏との対話本『上品で美しい国家―日本人の伝統と美意識』のなかで、日本の文化が庶民文化だからこそ、世界を席巻するという。たとえば歌舞伎は、江戸初期にに貧しい芸人がやっていた町人の娯楽が人気となり、それが急速に地位が上がって、今では伝統と格式の代表のようになっている。

料理でも、フランス料理や中国料理は宮廷料理として発展したが、日本料理は完全に庶民のものだ。たとえば寿司や天ぷらは、江戸の街角で職人が食べていた。寿司は当時のファーストフードだったのが、いつの間にか高級料理となって世界に広がった。カラオケも庶民の娯楽だが、これがひろがり始めた1970年代ごろから世界の「日本化」が始まったのではないか、と伊藤氏はいう。

伊藤氏はまた、日本の文化のいちばん強いところは庶民的であることだけでなく、民主主義的であることだという。それは「偉ぶった文化」ではないということだ。そこに日本文化のパワーの秘密があるという。日本の文化がなぜ「民主主義的」といえるのかどうか、一見わかりずらいが、氏は日本のカウンターの例をとって説明する。

カウンターでは、食べる人とつくる人が目と鼻の先にいて会話しながら料理をつくる。カウンターを挟んでの料理人と客の関係はいつも対等で、客がえばって失礼な態度をとると追い出されたたりする。またカウンターでは、料理人とそこに居合わせた見ず知らずの客たちが一体となって会話を楽しんだりする。こういう平等性や否権威性が、日本の庶民文化の底に流れているという。

実は伊藤氏は、このカウンターに注目して『カウンターから日本が見える 板前文化論の冒険 (新潮新書)』というユニークな本も書いている。そこでは、カウンターの店の特徴を「基本的に上座下座がない」、「形状は閉じているが、座る人間の関係は、店と客、客同士を含めてきわめてフラットだ」、「面と向かって座るテーブル席より場の雰囲気がほぐれる」、「常に情報の宝庫である」、「店と客のバトルの場でもある」などから捉えて、そこから日本文化の特質を描くことに成功している。

日本文化が庶民から生まれた民主主義的な文化だからこそ、世界に受け入れられるという主張は、最近、ある別の著者の本を読んで、やや別の角度から同様のことが言われているのを知って、ますますそうかも知れないと思うようになった。その本とは、増田悦佐氏の『格差社会論はウソである』だが、これについてはまた項を改めてじっくり語ろう。
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