BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBC米大陸Sウェルター級タイトルマッチ

2011-11-21 23:08:01 | Boxing
アルフレド・アングロ VS ジェームス・カークランド

カークランド 6ラウンドTKO勝利

考察 ~カークランド~

観客、視聴者の最初のダウンへの感想はこうだ。
「クリンチの仕方を学んでへんのかい!?」
石田戦でいきなりダウンし、守ることを忘れ、
カウンターを浴びまくった悪夢の再来を思わせたが、
クリンチはできずとも"Protect yourself at all times"の
ポリシーは身に付けたか。
1分30秒時点ではホールドが空振りし、コーナーで連打を浴び、
ストップは目前かと思われたが、パンチは見えてはいたようで、
ディフェンス意識とアゴへの疑問はそのままだが
回復力は証明したと言えるかもしれない。

ボクシングでは往々にしてあることだが、
自分が効いてトラブルに陥っている時ですら、
相手に効いた瞬間が訪れれば即座に立場が逆転することもある。
真っ先に思い出されるのはやはりコラレスvsカスティージョ。

攻撃力の高さに定評はあったものの、ディフェンスに難ありというのはよくあるタイプで
技術的な欠点は修正されているようには見えなかったが、
敗北から精神的に教訓を得たところの評価は大きい。
人間なかなか変わらない(変われない)というのが管理人の持論だが、
こういうふうに”精神的に”変わった姿を見るというのは衝撃的で、
カークランド評とともに自分の考えの方も変わってしまいそうだ。

石田へ雪辱せずに世界戦というのは自他共に納得できないだろう。
もしくは世界タイトル初防衛に石田を選ぶというシナリオか。
それにしても試合枯れでfade outしつつあった石田の株が
ここへ来てまた急上昇してきた感がある。
これは私的にFight of the Year候補。
来年まだまだカークランドには頑張ってもらわねばと思うのだが、
精神面の次は技術面を磨かなくてはテクニシャン相手に競り負けそうだ。
そのあたりはアン・ウルフに期待するとしよう。


考察 ~アングロ~

観客、視聴者の最初のダウンへの感想はこうだ。
「クリンチの仕方を知らんのかい!?」
実際にクリンチの必要性など知らず、無造作に勝ち、
そして無造作に負けてきたことでカークランドと明暗別れたのかな。

元々ガードの置きどころが悪く、打たなければ打たれていたし、
無造作にスイッチしてシャープさに欠ける右ジャブにカウンターを
かぶせられたりしていたが、タフネスひとつで乗り切ってこれたのは
そのタフネスを上回る攻撃力の持ち主とぶつからなかったという幸運のおかげだったようだ。
シントロン戦で一瞬効いた素振りを見せただけで、
アゴの強さは階級出色だと思っていたが、歴戦のダメージがあったのか?
そこまできついマッチメークをこなしたキャリアではないにしろ、
パンチというのは食えば食っただけ微小なダメージが蓄積する。
それが一気に噴き出すのはやはり精神的に負けを認めてしまった瞬間だ。
今後のトレーニングとマッチメークは相当慎重に行う必要がある。

ここで少しワイルドな妄想をすると、
このアングロに完勝したシントロンを2度にわたって正面から押し潰したマルガリートを
完膚なきまで叩きのめしたパッキャオ……と3度伍したJ・M・マルケスと考えると、
やはりボクシングには相性というものが存在するらしい。

それにしても最後のCancunのファンのブーイングは何だったのだろうか?
まさか早いストップで不満というわけはあるまい。
ならばストップのタイミングが遅かったということに対する不満か。
レフェリーの仕事というのはつくづく難しい。

ミドル級10回戦

2011-11-21 22:33:48 | Boxing
ピーター・クイリン VS クレイグ・マクイワン

クイリン 8ラウンドTKO勝利

考察 ~クイリン~

ジョー小泉は「スリルがある」と評するが、管理人の感想は異なる。
うまい表現がなかなか出てこないが、
なんというか人が死なない2時間サスペンスドラマのような
煮え切らなさ、もどかしさを観ていて感じてしまう。
killer instinctが足りないというよりも精神的な余裕の無さなのかな。
断言はできないが、今後ステージが大きくなり相手のレベルが上がれば
どんどんカウンターパンチャー化が進んでいくと考えられる。
売り出そうとすればするほど地味になっていくのだろう。
ただしそれは全体として見た場合で、パーツを取り上げていけば
随所に光るところがある。
たとえば右の打ち出しと引きの速さは、黒人特有の速筋云々というよりは
ボクシングをするために生まれてきたとしか思えない鮮やかな軌跡を残す。
来年には本人も観ている側も震え上がるような、
サスペンス溢れるマッチメークを期待したい。


考察 ~マクイワン~

いくらなんでもストップが早すぎる。
『効いた』というのと『勝負アッター』というのは全くの別物だ。

長身サウスポーというのは型にハマっていることが多いが、
この選手は悪い意味で期待を裏切ってくれる。
インサイドでガチャガチャやるのは本来の姿ではあるまい。
長い距離から打ち下ろすのが本来のスタイルだと思われる。
ただそれが通用しなくなるレベルに来たときに二枚腰で踏ん張れるかどうかか問題だ。
ミドルレンジで形勢不利ならばクロスレンジでの勝負を選択するのは必然とはいえ、
相手のハンドスピードから積極的に逃げた姿勢と言えなくもない。
クリンチ多用については管理人は擁護派だが、普通のファンは反対派だろう。
ただし、レフェリーはいかなる場合においても中立であるべき。
"Break"や"Walk out"の指示を出すときにレフェリーが近くにいないと
メイウェザーがオルティスに見舞ったlegal sucker punchが出るかもしれないし、
ホールディングに対してボクシング指示を出しながら、一度も正式な注意をしなかった。
度重なるクリンチの代償がこのタイミングのストップということなら
ボクシングの本質が変質しかねない。

WBO中南米フェザー級王座決定戦

2011-11-21 22:33:23 | Boxing
ファン・マヌエル・ロペス VS マイク・オリバー

ロペス 2ラウンドTKO勝利

考察 ~ロペス~

初回から印象的な右フックを4発、左ストを2発食い、
さらに2回にも右フックを2度もろに被弾した。
前戦の内容からまず見るべきはディフェンスの技術と意識。
その部分に改善が見られなかったのは私生活のトラブルが原因なのだろうか。
倒す味を覚えて雑になったというのなら世界を獲る前に淘汰されていそうなものだが、
類い稀な攻撃力がそのタイミングを不幸にも遅らせてしまったのだろうか。
一発のない相手だから少々被弾してもOKというのは完全な間違いで
このままでサリドとの再戦やフェザー級トップ戦線復帰に臨むことは
歓迎すべき判断とは言えない。


考察 ~オリバー~

31歳でこの童顔はどういうことか。
ボクサーは別に見た目で相手を震え上がらせる必要はないが、
こういう相手を目の前にすると闘争心ではなく母性が湧いてきそうだ。
マシンガンというニックネームの片鱗は初回ほんの数秒だけ見せたものの、
あとは典型的な負け役のボクシング。
右フックに光明が見えたが、ルーズなディフェンスを突けるほどの
攻撃力は持っていなかった。
ただしこの選手が露わにしたロペスの穴にほくそ笑んだフェザー級ランカーは
中南米で十指に足りないだろう。

WBOインターコンチネンタル・Sフェザー級王座決定戦

2011-11-21 21:25:09 | Boxing
ローマン・マルチネス VS ダニエル・アッター

マルチネス 6ラウンドTKO勝利

考察 ~マルチネス~

目のフェイントでサウスポーを追い詰めたというよりは
パンチ力と強面で威嚇してコーナーに追い込んだという方が正確か。
最初のダウンは顔面へのスマッシュ。
右ストの突っ込みから小さくバックステップしてからの
右の戻しの反動で打ったサンデーパンチ。
サウスポー崩しの定石を打つというよりは
その場で対してみての感覚を重視するタイプなのかな。
凝視の瞬間に軽い左ストを食うのはお約束。
サウスポーへのスイッチは癖なのだろう。
普通に長い右ストレートとインサイドでの印象的な左右ショートアッパーで
王座返り咲きはタイミング次第で充分可能。
ただしディフェンスに関して課題を残すので長期防衛については
否定的な見方をせざるをえない。
内山の将来の対戦候補として実に興味深い。
英国へ出向くほどだからオファー次第で来日してくれそうだ。


考察 ~アッター~

ナイジェリアと聞くだけでワクワクしてくるのは
アフリカという未知の大陸への
アフリカでもガーナや南アフリカはボクサー産出国として
地位を確立しているが、ナイジェリアはサミュエル・ピーターぐらい。
日本の大輔現象を考えると後継ボクサーはあと10年から15年後に登場か。

サウスポーの典型というか気弱ボクサーの典型だった。
リードで左フックは来ないのだから、右ジャブでペースを取れたはず。
それができないのは顔面の迫力負けだろう。
バッティングアピール中にダウンを食らうところも哀愁を誘う。
5ラウンドあたりから出し始めた右ボディは効果的にヒットし、
実際に相手も嫌がっているように見えた。
もっと早い段階でこれができればと思わせるが、
追い詰められてからでないと反撃できないメンタルの弱さは
管理人の bias を reinforce する。
負け役としては充分な健闘か。