BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

ミドル級10回戦

2011-11-08 00:54:46 | Boxing
アンディ・リー VS ブライアン・ベラ

リー 判定勝利

考察 ~リー~

時計回りしたら罰金でも取られるのかというぐらい反時計回りに徹底した。
Irish Warriorというのは激闘型だけではないのだ。
パワーに欠けるというけれど、強く打とうと思えば強く打てると思う。
ライトパンチャーの代表格だった坂田健史も、
プロに成り立ての頃はミットを相当強く打っていたとか。
この選手も同じで、パンチの威力を犠牲にこのスタイルを構築というか
完成させていくと考えられる。
サウスポーにおける鍵となるパンチには第一に右フックがあり、
これはオーソドックスにおけるワン・ツー・スリーのスリーよりもpriorityは高い。
なぜならこの右フックはワンにもツーにもスリーにもなりうるから。
リーにとってはこれが本来のワンというよりは、この試合用のプランだろう。
ナチュラルな体格(身長、リーチ、細い脚)を活かしたボクシングをするのなら
ワン・ツー主体の方が汎用性が高いだろうから。
右フックの引っ掛けは相当練習してきたのだろう。
面白いように決まったのは、相当期するところがベラにあったからだ。
またベラ対策なのか試合中に掴んだのかは判断できないが、
ディフェンスも随所で光った。
クロスレンジで左右連打を浴びるところですらもボディワークが渋く、
左右の肘の上下動のリズムを見るに相手の打ってくるパンチが完全に読めていたようだ。
次戦が純粋に楽しみだ。
何故か試合刈れの石田なんかアメリカという舞台でお手頃だと思うが、さて。

考察 ~ベラ~

入り込んで右を一発は出せても、
相手の右フックの引っ掛けに最後の最後まで対応できなかった。
前戦がどういう内容だったのかは知らないのだけれど、
サウスポーのジャブ、ストレートへの過剰なまでの意識の逆を突かれた格好か。
それでも左ストのカウンターはこうやってもらえという
お手本を見せてくれるあたり、showmanshipも忘れない。
カークランドやマックユーワンに敗れていて、
S・モーラに勝っているなど、一定の能力を有していて、
なおかつ不安定なボクサーというところか。
世界ランクの番人的存在としてあと2年ぐらいは重宝されるのだろう。

ミドル級12回戦

2011-11-08 00:41:16 | Boxing
セルヒオ・マルチネス VS ダーレン・バーカー

マルチネス 11ラウンドKO勝利

考察 ~バーカー~

顔形からEnglishmanには見えず、やや奧目なところはどちらかというとゲルマン系。
これ以外の試合を観たことがないので推測するしかないが、
顔の印象から安全運転主体のボクサーかというステレオタイプを抱いた。
そしてそのimpressionはある意味正しかった。
ガールフレンドか嫁さんに「脇を締めたアナタが素敵」とか言われているのか、
打っても守っても両の脇が緩まないし、撓まない。
ただ西岡と戦ったR・ムンローも固そうな体で固いブロックに長けていたことから
英国ボクシングも大陸の風に吹かれていることが伺える。
N・ハメドまでの英国ボクサーの系譜はそのまま変則ボクサー列伝とも言えるのだが、
21世紀はボクシングにおいても(文化的なシステム同様に)均質化が進むのだろうか?

ジンジルクを左右逆にしたようにイメージで見たとして、
マルチネスは西岡と同じくサウスポーを得意にするサウスポーだと推測できる。
また王者に久しぶりに右ストをスパーンと決めるところを見て
変則を攻略することができるのは正統派であるということも再確認させられた。
vice versa(逆もまた然り)。
この選手の最大の長所は捨てパンチを打たないところ。
当たるパンチを当たる距離とタイミングで打ち続けるのはスキルと同時に精神力を要する。
これが例えばスキルがあって堪え性の無いボクサーなら、
バッティングのカウンターを狙いたくなるところだ。
偶然のバッティングが2度だけだったというのは
この選手のスキルとポリシーの証明だった。
唐突に見えたKOも、見返してみると納得。
10ラウンドに既に事切れたいたのだ。


考察 ~マルチネス~

キャリアの中で鼻血流血ファイトの経験など皆無だろうし、
そもそもパンチを食いそうで食わないことが最大の長所だったはずだ。
インタビューで、効いたパンチはマルガリート、パブリック、ウィリアムスからしか
食ったことがないなどと、人を食ったようなコメントを出してもいたが、
年齢的に大幅な上積みが見込めないだけに、コンディショニングが重要になる。
だからこそOxnardという温暖な土地を選んだとも聞いている。
100%に仕上がっていなかったのはコンディショニングの問題や
モチベーションの低下もあるかもしれないが、一番は対戦相手の力量の読み違いだろう。
ビッグファイトの後、もしくは直前というのは意外と仕上がりが悪くなるボクサーは多い。
マルチネスもどうやらそうらしい。
それでもスピードとスタミナ以上にパワーを証明するこの結果は
パウンド・フォーパウンド・ベストに連なるボクサーならでは。
head movementでガードオープンを誘い、開けてこないならばこじ開けるぜと
言わんばかりのストレート連打は、パブリック戦の9ラウンドを彷彿させた。
地力はまだまだトップクラスだ。

Sウェルターにlucrative optionsが見当たらずミドルに転級。
今になってカークランド、アルバレスなどが浮上してくるとは
どこまでもツキがない。
階級の上げ下げは得策ではない(体脂肪率6%らしいし)。
ベストの選択はミドルでパブリックとの再戦なのだが、そうは問屋が卸さない。
やはりツキがない。

リングサイドの女性はモニーク・マクライン……ではなくモニーク・マックリンさん。
http://www.boxingscene.com/sergio-martinez-being-champion-outside-ring--43845
リングの外でもチャンピオンであることを称賛された記事。

閑話休題。
日本では芸能人やスポーツ選手が重病人や障がい者への訪問やイベント・観戦招待を
行うという美談が時折マスコミに報じられるけれども、これは実は斡旋業者がいたりする。
アメリカという(経済にとどまらない)格差を許容させられる社会で行われる
著名人らによる慈善・奉仕活動にも、斡旋業者が存在するのだろうか?
いじめに関しては日本では内藤が発言していたが、半分は言わされた感があった。
徳山のワン・コリアというメッセージも賛否両論というか賛2否8ぐらいだったか。
ボクシングは社会的なメッセージを強く発することのできるスポーツだと思うが、
日本ではどうしてもエンターテインメントの部分だけにスポットライトが当てられる。
何故なのだ?