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BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBA世界Sウェルター級タイトルマッチ

2011-12-05 11:33:11 | Boxing
王者 ミゲール・コット VS 挑戦者 アントニオ・マルガリート

コット 10ラウンドTKO勝利

考察 ~コット~

コットをマルガリートと様々な面で比較すると
一発パンチ力は互角として、ディフェンス、スピード、フットワークで優り、
耐久力、スタミナ、闘争心では劣る。
技巧に重点を置くならば充分に予想できる結果が出たわけで、
エンターテインメント性よりも自身の健康を優先するという
戦前の言葉通りのファイトスタイルだったといえる。

相手が目が腫れて塞がってきた。
弱点だ、狙え。
この姿勢は完全に正しく、またこの作戦を選ぶところに
コットのring smartとその限界が見えた。
プランとしてはとにかく左アッパー連打だけはもらわない、
そのための距離作りとリズミカルに不規則な左右ステップの連続。
そして相手の手負いの右目を狙う自らの左フック。
これは元々サンデーパンチではあるが、この試合ではさらに効果的に活用すべく、
ガツンというナックルパートのインパクトよりも
擦りつけるような軌道とタイミングを敢えて狙っていた。
また威力よりも軌道を重視するその哲学は前戦に自身のパンチで前進を止めなかった
マルガリートへの敬意の表れと取ることもできる。
プランは練り上げられていたは、それを実行するコットに
終盤で失速する気配が常に感じられたのは、
試合展開が初戦とオーバーラップしていたからかな。

全体的に見て、3年前よりも明らかに力量は落ちている。
それは度重なる激闘の代償以外の何物でもなく、
ボクサーのこのような力の衰えを見るほどに
セニョール本田が西岡に引退を勧告するのも理解できなくはない。
完全なる判定勝ち狙いにコットの執念を見出すべきか、
それとも落胆すべきかはそれぞれのファンのスタンスによる。
口の悪いファン(というかうちの親父)になると今日のコットを指して
「亀田興毅みたいやな」と評する。
ちなみに私は前者の立場で、この点で父にはとても賛同しかねる。
パッキャオへのリベンジは遠ざかったが、
案外メイウェザーから声がかかるかも、という内容と結果だった。


考察 ~マルガリート~

前戦では6ラウンドにアッパーを連続で巧打し、
一気に後半からの流れもスコアも引き寄せたが、
今回は流れこそ3ラウンドで引き寄せたものの、
ポイントを奪うほどの効果的な攻めを見せられなかったのは
自身のゲームプランもファイトスタイルも変わらなかったところに
相手のプラン変更がぴったりハマったからに他ならない。
抽象的に言うならば、前戦のコットはdefensive、今回はelusive。
具体的に言うならば、マルガリートの左アッパーの射程にコットが
留まってはくれなかったということ。
自分よりスピードで優る相手に見入ってしまう傾向は誰にでもあり、
その場合に肝心の手数が減ってしまうのはボクサーの公準なのだろうか。
それとも右目の腫れで遠近感を狂わされたか。
答えはおそらくその両方だろう。

モズリー、パッキャオによって壊されたと確信していたが、
キレだけのパンチならばまだ耐えられるということを証明したのは
流石としか言いようがない。
しかし精神力に支えられたタフネスは何とか保っているものの、
細胞レベルでの防御力は確実に落ちている。
網膜剥離、眼窩底骨折と眼へのダメージ蓄積はcriticalで
ティファナの竜巻も早晩消滅してしまうことは残念ながら間違いない。

WBA世界Sウェルター級タイトルマッチ予想

2011-12-03 21:40:38 | Boxing
王者 ミゲール・コット VS 挑戦者 アントニオ・マルガリート

予想:コットの5ラウンドTKO勝利

管理人的にあれこれと想像が膨らむリマッチだが、
決定的な決め手になるものがない。
互いに禁断の比較対象としてM・パッキャオがいるのだが、
それについてYouTubeでHBOでの両者Face-Offを観たが、
最も共感できたのは最後のKellermanの
"I'm so glad I'm calling this fight"というセリフだ。
あれこれと試合の内容や結果を予想するのも楽しいが、
頭を空っぽにしてただ単に試合だけを待つというのもたまには良いものだろう。
なので今回は予想なし。
ちなみに冒頭の予想はうちの親父のもの。
「お手並み拝見といきますかな?」

WBA世界フライ級タイトルマッチ

2011-12-03 21:29:16 | Boxing
王者 エルナン・マルケス VS 挑戦者 ルイス・コンセプション

マルケス 1ラウンドTKO勝利

考察 ~マルケス~

初回早々から「コイツは打ち気に逸っている。打ち終わりは隙だらけだ」
と見切ったことだろう。
実際に相手は左右ともにガードが低く、また上体も振らないので
カウンターの格好の餌食となった。
これほどイージーに勝てるのは計算外だったろう。
ドネア戦後から明らかにレベルアップしているように見えるが、
まだ本当の意味では試されておらず、
同国人E・ソーサのrevanchaでポンサクレックと統一戦を行うのは完全に時期尚早。
おそらく楽な選択防衛戦を挟んでから本格的なランカー相手の防衛路線に乗り出すはず。
そこには当然日本ランカーも含まれるのは間違いない。
日本のフライ級近辺選手にとっても攻略しがいのある王者ではなかろうか。


考察 ~コンセプション~

一時ボクシングから心が離れていたというか浮ついていたらしいが、
闘争心を戻してリマッチに臨むそのattitudeは買いだ。
だがこれだけ綺麗にカウンターを浴びるということは
前戦の反省が不足しており、また自身の耐久力の過大評価もある。
なにより陣営の指導不足で、そうでないというならば指導力不足。
右フックをもらって効いた瞬間に次なるディフェンスアクションが取れないのは
経験不足というよりも練習不足=指導に穴があるということ。
これは左右こそ違え、J・M・ロペスにも当てはまる。
日本にはこの男とよく似た経歴の持ち主がいる。
元牛若丸あきべぇだ。
ただしコンセプションはあきべぇのようなbounce backはできないような気がしてならない。
パナマのボクサーはメンタル面で時に撓んでしまうことがあり、
その最大の例がロベルト・デュランの"No mas"だろう。
コンセプションもそうしたメンタルの不安定さを持っていると推測される。

WBC・WBO世界バンタム級タイトルマッチ

2011-12-03 21:04:45 | Boxing
王者 ノニト・ドネア VS 挑戦者 オマール・ナルバエス

ドネア 判定勝ち

考察 ~ドネア~

サンドバッグを打ち続けるかのような12ラウンドに
「クロッティ戦のパッキャオの気持ちが分かった」とコメントしていたが、
正直そこまでは感じられない。
クロッティはパッキャオに対してそうするしか選択肢が無く、
ナルバエスはドネアに対して積極的に消極的な戦法を採用した印象がある。
サンデーパンチのカウンターの左フックは主体的なパンチではなく、
あくまでカウンターであることを露呈してしまったが、
逆にその威力と効果を当たらずとも証明したとも言える。
ただし商品価値が上がらなかったことは事実。
これは次戦において商品価値を上げられるマッチメークが約束されたことを意味する。
そしてその相手はアルセではなく西岡がふさわしい。


考察 ~ナルバエス~

緩い右リードがなく、また左殺しのカウンターパーンチャーに対して打ち終わりに
自身の左を狙っていく、当てていくその姿勢は正解で、
カウンターパンチャーはカウンターへのカウンターに強くはないことを
証明することができていたように思う。
ただ、このgame planはほぼ100%相手に手数で劣ることになるので、
よほどの攻勢あるいは印象的なパンチの威力を有していない限り、
判定で敗れることは必然と言えよう。
Sフライへのリターンを明言していることから、
payday狙いだったことは明らかで、ダメージを避けるその戦略は西岡の参考にはなるまいが、
その戦術的な技術には西岡のヒントになるものが無数に隠されていた。
試合の構図や展開にそこかしこでかつてアルセを手こずらせた
ロケ・レルというアルヘンティーナを思い起こさせたが、
アルゼンチンはファイター産出国でありながら、
決して激闘型一辺倒ではなく、ディフェンスに優れた技術を持つ選手も多い気がする。
メキシコ、プエルトリコ、ドイツ勢に席巻されているボクシング界だが、
アルゼンチンはフィリピンと並んで改めてその地位を上げてきている。

ちなみにこの試合を観た親父の感想は
「亀田興毅はこのナルバエスにもとても勝てんな」
首肯される向きは多いと思われる。

WBC米大陸Sウェルター級タイトルマッチ

2011-11-21 23:08:01 | Boxing
アルフレド・アングロ VS ジェームス・カークランド

カークランド 6ラウンドTKO勝利

考察 ~カークランド~

観客、視聴者の最初のダウンへの感想はこうだ。
「クリンチの仕方を学んでへんのかい!?」
石田戦でいきなりダウンし、守ることを忘れ、
カウンターを浴びまくった悪夢の再来を思わせたが、
クリンチはできずとも"Protect yourself at all times"の
ポリシーは身に付けたか。
1分30秒時点ではホールドが空振りし、コーナーで連打を浴び、
ストップは目前かと思われたが、パンチは見えてはいたようで、
ディフェンス意識とアゴへの疑問はそのままだが
回復力は証明したと言えるかもしれない。

ボクシングでは往々にしてあることだが、
自分が効いてトラブルに陥っている時ですら、
相手に効いた瞬間が訪れれば即座に立場が逆転することもある。
真っ先に思い出されるのはやはりコラレスvsカスティージョ。

攻撃力の高さに定評はあったものの、ディフェンスに難ありというのはよくあるタイプで
技術的な欠点は修正されているようには見えなかったが、
敗北から精神的に教訓を得たところの評価は大きい。
人間なかなか変わらない(変われない)というのが管理人の持論だが、
こういうふうに”精神的に”変わった姿を見るというのは衝撃的で、
カークランド評とともに自分の考えの方も変わってしまいそうだ。

石田へ雪辱せずに世界戦というのは自他共に納得できないだろう。
もしくは世界タイトル初防衛に石田を選ぶというシナリオか。
それにしても試合枯れでfade outしつつあった石田の株が
ここへ来てまた急上昇してきた感がある。
これは私的にFight of the Year候補。
来年まだまだカークランドには頑張ってもらわねばと思うのだが、
精神面の次は技術面を磨かなくてはテクニシャン相手に競り負けそうだ。
そのあたりはアン・ウルフに期待するとしよう。


考察 ~アングロ~

観客、視聴者の最初のダウンへの感想はこうだ。
「クリンチの仕方を知らんのかい!?」
実際にクリンチの必要性など知らず、無造作に勝ち、
そして無造作に負けてきたことでカークランドと明暗別れたのかな。

元々ガードの置きどころが悪く、打たなければ打たれていたし、
無造作にスイッチしてシャープさに欠ける右ジャブにカウンターを
かぶせられたりしていたが、タフネスひとつで乗り切ってこれたのは
そのタフネスを上回る攻撃力の持ち主とぶつからなかったという幸運のおかげだったようだ。
シントロン戦で一瞬効いた素振りを見せただけで、
アゴの強さは階級出色だと思っていたが、歴戦のダメージがあったのか?
そこまできついマッチメークをこなしたキャリアではないにしろ、
パンチというのは食えば食っただけ微小なダメージが蓄積する。
それが一気に噴き出すのはやはり精神的に負けを認めてしまった瞬間だ。
今後のトレーニングとマッチメークは相当慎重に行う必要がある。

ここで少しワイルドな妄想をすると、
このアングロに完勝したシントロンを2度にわたって正面から押し潰したマルガリートを
完膚なきまで叩きのめしたパッキャオ……と3度伍したJ・M・マルケスと考えると、
やはりボクシングには相性というものが存在するらしい。

それにしても最後のCancunのファンのブーイングは何だったのだろうか?
まさか早いストップで不満というわけはあるまい。
ならばストップのタイミングが遅かったということに対する不満か。
レフェリーの仕事というのはつくづく難しい。

ミドル級10回戦

2011-11-21 22:33:48 | Boxing
ピーター・クイリン VS クレイグ・マクイワン

クイリン 8ラウンドTKO勝利

考察 ~クイリン~

ジョー小泉は「スリルがある」と評するが、管理人の感想は異なる。
うまい表現がなかなか出てこないが、
なんというか人が死なない2時間サスペンスドラマのような
煮え切らなさ、もどかしさを観ていて感じてしまう。
killer instinctが足りないというよりも精神的な余裕の無さなのかな。
断言はできないが、今後ステージが大きくなり相手のレベルが上がれば
どんどんカウンターパンチャー化が進んでいくと考えられる。
売り出そうとすればするほど地味になっていくのだろう。
ただしそれは全体として見た場合で、パーツを取り上げていけば
随所に光るところがある。
たとえば右の打ち出しと引きの速さは、黒人特有の速筋云々というよりは
ボクシングをするために生まれてきたとしか思えない鮮やかな軌跡を残す。
来年には本人も観ている側も震え上がるような、
サスペンス溢れるマッチメークを期待したい。


考察 ~マクイワン~

いくらなんでもストップが早すぎる。
『効いた』というのと『勝負アッター』というのは全くの別物だ。

長身サウスポーというのは型にハマっていることが多いが、
この選手は悪い意味で期待を裏切ってくれる。
インサイドでガチャガチャやるのは本来の姿ではあるまい。
長い距離から打ち下ろすのが本来のスタイルだと思われる。
ただそれが通用しなくなるレベルに来たときに二枚腰で踏ん張れるかどうかか問題だ。
ミドルレンジで形勢不利ならばクロスレンジでの勝負を選択するのは必然とはいえ、
相手のハンドスピードから積極的に逃げた姿勢と言えなくもない。
クリンチ多用については管理人は擁護派だが、普通のファンは反対派だろう。
ただし、レフェリーはいかなる場合においても中立であるべき。
"Break"や"Walk out"の指示を出すときにレフェリーが近くにいないと
メイウェザーがオルティスに見舞ったlegal sucker punchが出るかもしれないし、
ホールディングに対してボクシング指示を出しながら、一度も正式な注意をしなかった。
度重なるクリンチの代償がこのタイミングのストップということなら
ボクシングの本質が変質しかねない。

WBO中南米フェザー級王座決定戦

2011-11-21 22:33:23 | Boxing
ファン・マヌエル・ロペス VS マイク・オリバー

ロペス 2ラウンドTKO勝利

考察 ~ロペス~

初回から印象的な右フックを4発、左ストを2発食い、
さらに2回にも右フックを2度もろに被弾した。
前戦の内容からまず見るべきはディフェンスの技術と意識。
その部分に改善が見られなかったのは私生活のトラブルが原因なのだろうか。
倒す味を覚えて雑になったというのなら世界を獲る前に淘汰されていそうなものだが、
類い稀な攻撃力がそのタイミングを不幸にも遅らせてしまったのだろうか。
一発のない相手だから少々被弾してもOKというのは完全な間違いで
このままでサリドとの再戦やフェザー級トップ戦線復帰に臨むことは
歓迎すべき判断とは言えない。


考察 ~オリバー~

31歳でこの童顔はどういうことか。
ボクサーは別に見た目で相手を震え上がらせる必要はないが、
こういう相手を目の前にすると闘争心ではなく母性が湧いてきそうだ。
マシンガンというニックネームの片鱗は初回ほんの数秒だけ見せたものの、
あとは典型的な負け役のボクシング。
右フックに光明が見えたが、ルーズなディフェンスを突けるほどの
攻撃力は持っていなかった。
ただしこの選手が露わにしたロペスの穴にほくそ笑んだフェザー級ランカーは
中南米で十指に足りないだろう。

WBOインターコンチネンタル・Sフェザー級王座決定戦

2011-11-21 21:25:09 | Boxing
ローマン・マルチネス VS ダニエル・アッター

マルチネス 6ラウンドTKO勝利

考察 ~マルチネス~

目のフェイントでサウスポーを追い詰めたというよりは
パンチ力と強面で威嚇してコーナーに追い込んだという方が正確か。
最初のダウンは顔面へのスマッシュ。
右ストの突っ込みから小さくバックステップしてからの
右の戻しの反動で打ったサンデーパンチ。
サウスポー崩しの定石を打つというよりは
その場で対してみての感覚を重視するタイプなのかな。
凝視の瞬間に軽い左ストを食うのはお約束。
サウスポーへのスイッチは癖なのだろう。
普通に長い右ストレートとインサイドでの印象的な左右ショートアッパーで
王座返り咲きはタイミング次第で充分可能。
ただしディフェンスに関して課題を残すので長期防衛については
否定的な見方をせざるをえない。
内山の将来の対戦候補として実に興味深い。
英国へ出向くほどだからオファー次第で来日してくれそうだ。


考察 ~アッター~

ナイジェリアと聞くだけでワクワクしてくるのは
アフリカという未知の大陸への
アフリカでもガーナや南アフリカはボクサー産出国として
地位を確立しているが、ナイジェリアはサミュエル・ピーターぐらい。
日本の大輔現象を考えると後継ボクサーはあと10年から15年後に登場か。

サウスポーの典型というか気弱ボクサーの典型だった。
リードで左フックは来ないのだから、右ジャブでペースを取れたはず。
それができないのは顔面の迫力負けだろう。
バッティングアピール中にダウンを食らうところも哀愁を誘う。
5ラウンドあたりから出し始めた右ボディは効果的にヒットし、
実際に相手も嫌がっているように見えた。
もっと早い段階でこれができればと思わせるが、
追い詰められてからでないと反撃できないメンタルの弱さは
管理人の bias を reinforce する。
負け役としては充分な健闘か。

WBO世界Sライト級タイトルマッチ

2011-11-17 19:54:45 | Boxing
王者 ティモシー・ブラッドリー VS 挑戦者 ホエル・カサマヨル

ブラッドリー 8ラウンドTKO勝利

考察 ~ブラッドリー~

パッキャオ戦に目が眩んでキャリアの大事な時期に数ヶ月を無為に(敢えてそう云う)
過ごしたボクサーがここにも一人。
ブラッドリーのボクシングの本質は踏み込みと手数。
この両者が渾然一体となって、はじめてバッティングが容認される。
近年のボクシングはよりskillfulに、よりtacticalになること目覚しく、
ホプキンスがライトに食らわせたように、
ポンサクレックが亀田興毅に食らわせたように、
バッティングもカウンターで放つ選手が現れる時代だ。
そのような時代の趨勢に抗い、かつてのKorean fighterよろしく、
嵐のような手数と前に出る勢いの持ち主が、
この大人しいボクシングとは何事か。
ジョー小泉ではないが、パンチのない選手でも強くは打てるだろう。
しかし、それでは効かせられないのだ。
古豪をTKOしたのは事実だが、Sライトの統一路線を放棄した罪はこの程度では消えない。


考察 ~カサマヨル~

ララ、リゴンドー、ガンボアとCuban Sensationが躍進する中、
世代の筆頭たる意識はないのだろうか?
それとも負けぐせが染み着いてしまったか。
コラレス、カチディスを破り、マルケスと激闘を繰り広げた頃は
当代随一のカウンターパンチャーだったものだ。
試合前からバッティング対策に「アメフトのヘッドギアを着用する」とかいう
キューバンジョークを飛ばしていたが、カウンターで迎撃宣言できなかったところに
この選手の限界を読み取るべきだったのだろう。
実際の試合でもバッティングへの警戒の色は見えず、相手にその意図もなく、
にもかかわらず左ストのカウンターで止めきれなかったのは
ごちゃごちゃ考える癖がついてしまったからだ。
つまり普通のカウンターパンチャーになってしまったということ。
この選手の現状を見ていると粟生の将来像に一抹の不安を感じざるを得ない。

WBO世界ウェルター級タイトルマッチ

2011-11-13 16:28:53 | Boxing
王者 マニー・パッキャオ VS 挑戦者 ファン・マヌエル・マルケス

パッキャオ マジョリティーディシジョンで勝利

考察 ~パッキャオ~

管理人採点ではドロー。
最初スコアが読み上げられた瞬間には「すわ、ユナニマスドローか?」
結果はパッキャオの勝利だが、これはかなり分の悪い勝利。
というかジャッジが好意的だったと言っていいかもしれない。

仕上がりが悪かったとは思わないが、良かったようにも見えなかった。
ベストなウェートであることは間違いないが、
ある意味それ以上に重要なメンタルのコントロールを狂わせた、
もしくは狂わされた影響が実戦にも顕れていた。
マルケスの言動やパフォーマンスTシャツに激怒していたと報じる記事を読んで
言い表しようのない不安を覚えたファンは多かったことだろう。
贔屓の選手の常ならぬ言動に変調を感じるのがファンだからだ。

試合では潜在的なカウンターへの恐怖感がところどころで顔を出していたように思う。
このレベルに達しても過去の亡霊が蘇ってくるのか。
また踏み込んでの左ストレートがことごとく空を切ったのは、
打ち出しのタイミングを読まれていたからだ。
おそらくほんのちょっとした目線の動き、爪先や肩、胸の筋肉の動き、
微妙な息遣いに至るまでじっくり研究、観察されており、
そのことを察知したがゆえの不気味さも手伝って、
あの異常なペースの踏み込みが最後まで見られなかった。
ただし小さい右フックはそこここで当たっており、
ダメージングブローにはならなかったが、ポイントを奪う一助として機能した。
これは終盤近くになって見せ始めた左アッパーについても当てはまる。

力が落ちたとか、調整失敗だとかではなく、peace of mindを失ったことが苦戦の最大の原因。
ボクシングにおいて psychological game はしばしば策として弄され、
実際に心理的に乱されて勝てるはずの試合を落とした選手は歴史的に多い。
最大の例としてはやはりキンシャサの奇跡(アリの"You've disappointed me!")。
そのフォアマンに敗れた人間機関車ジョー・フレイジャーが試合前に追悼されたのも
パッキャオの縁と言えるのかもしれない。


考察 ~マルケス~

本人としては完璧なプランで臨み、そして完璧にプランを実行したのだろうが、
あと一歩が足りなかった。
パッキャオを懐まで踏み込ませないまでは確かに完璧。
しかし、攻め込ませていてはポイントを取り切れるものでもない。
ジャッジに対して圧倒的な(=三者が一致するような)印象を与えなければ
今のパッキャオから判定を奪えるものでもない。

それでもプラン自体は素晴らしく練り上げられており、
なぜマルケスがパッキャオに分が良く、他のボクサーはそうではないのか
という疑問に一定の答えが出たようにも思う。
まず異口同音に語られる「パンチが見えない」について。
これは少し前述もしたが、パンチを見るのではなく、
踏み込みの予兆を見ることでかなり解決する問題ではないか。
パンチを時速40km、ボクサー間の距離を1mとしたとき、
そもそもパンチに反応できるものではない。
マルケスは他のボクサーが勘で把握できない部分を超えて
パッキャオを視ているのだと考えられる。

もう一つはガードの置きどころについて。
ハットンは残念ながら論外、クロッティは全く逆ベクトルで論外。
コット、マルガリートらとマルケスを比較するに、
前者はガードをアゴ、テンプルにがっちりと貼り付け、
後者は打ち易さだけでなくパリーも意識した、どちらかというと
キックボクサーにも見られるようなガードの位置。
これが実はパッキャオにとって攻略しづらい、
いわば先回りする空間ガードになっているような気がする。

当日150lbでよくバランスを崩さないものだと感心するが、
年齢以外の要素でやはりスタミナを減じていたようだ。
ライト級に帰る気はどうもなさそうだね。
Chapter 4 はさすがに勘弁して欲しい。