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BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBOウェルター級タイトルマッチ予想.

2011-11-11 19:09:04 | Boxing
王者 マニー・パッキャオ VS 挑戦者 ファン・マヌエル・マルケス

予想:パッキャオ判定勝ち

パッキャオ本人やローチ、陣営の面々は早い段階でKOすると息巻いているが、
どうもマルガリート戦のように後半流す展開になるような臭いがする。
なんだかんだでパッキャオのgentlemanhoodは変わらないと思う。
もちろんダウンの一度や二度は奪うことは簡単に予想されるが、
不慣れなことをやろうとすると往々にして大失敗というのが
ボクシングのビッグマッチにおけるジンクスになっている。
ただし、それらは同じ階級の選手同士の場合だ。
今回も一応ウェルター級を少し割るキャッチウェートで、
両者同じ条件ではないか、と思うことなかれ。
この契約体重がパッキャオ、マルケスのどちらに利するかは
両者の直近の試合を比較すれば答えは出たも同然である。

最近、リング外での手練手管(拳ではなく実弾)に長けた輩が
またぞろ跋扈し始めた日本ボクシング界だが、
これも世界標準の腐敗の程度に追いついてきたと見るべきか。
八重樫vsポンサワンがFight of they Year候補だと
堂々と海外で語られる時代に、承認団体による世界戦認可など
貴族政治、殿様政治に過ぎない。
YouTubeやboxrecなどを土台にファンが直接運営するような
民主的な承認団体をネット上に築けないものか。
チャンピオンという称号にアルファベット云々の接頭辞など不要。
チャンピオンはpeople's championであるべきだ。
今という時代は地域格差はあるにせよ、
peopleが最も声高に叫ぶことができる時代なのだ。

ミドル級10回戦

2011-11-08 00:54:46 | Boxing
アンディ・リー VS ブライアン・ベラ

リー 判定勝利

考察 ~リー~

時計回りしたら罰金でも取られるのかというぐらい反時計回りに徹底した。
Irish Warriorというのは激闘型だけではないのだ。
パワーに欠けるというけれど、強く打とうと思えば強く打てると思う。
ライトパンチャーの代表格だった坂田健史も、
プロに成り立ての頃はミットを相当強く打っていたとか。
この選手も同じで、パンチの威力を犠牲にこのスタイルを構築というか
完成させていくと考えられる。
サウスポーにおける鍵となるパンチには第一に右フックがあり、
これはオーソドックスにおけるワン・ツー・スリーのスリーよりもpriorityは高い。
なぜならこの右フックはワンにもツーにもスリーにもなりうるから。
リーにとってはこれが本来のワンというよりは、この試合用のプランだろう。
ナチュラルな体格(身長、リーチ、細い脚)を活かしたボクシングをするのなら
ワン・ツー主体の方が汎用性が高いだろうから。
右フックの引っ掛けは相当練習してきたのだろう。
面白いように決まったのは、相当期するところがベラにあったからだ。
またベラ対策なのか試合中に掴んだのかは判断できないが、
ディフェンスも随所で光った。
クロスレンジで左右連打を浴びるところですらもボディワークが渋く、
左右の肘の上下動のリズムを見るに相手の打ってくるパンチが完全に読めていたようだ。
次戦が純粋に楽しみだ。
何故か試合刈れの石田なんかアメリカという舞台でお手頃だと思うが、さて。

考察 ~ベラ~

入り込んで右を一発は出せても、
相手の右フックの引っ掛けに最後の最後まで対応できなかった。
前戦がどういう内容だったのかは知らないのだけれど、
サウスポーのジャブ、ストレートへの過剰なまでの意識の逆を突かれた格好か。
それでも左ストのカウンターはこうやってもらえという
お手本を見せてくれるあたり、showmanshipも忘れない。
カークランドやマックユーワンに敗れていて、
S・モーラに勝っているなど、一定の能力を有していて、
なおかつ不安定なボクサーというところか。
世界ランクの番人的存在としてあと2年ぐらいは重宝されるのだろう。

ミドル級12回戦

2011-11-08 00:41:16 | Boxing
セルヒオ・マルチネス VS ダーレン・バーカー

マルチネス 11ラウンドKO勝利

考察 ~バーカー~

顔形からEnglishmanには見えず、やや奧目なところはどちらかというとゲルマン系。
これ以外の試合を観たことがないので推測するしかないが、
顔の印象から安全運転主体のボクサーかというステレオタイプを抱いた。
そしてそのimpressionはある意味正しかった。
ガールフレンドか嫁さんに「脇を締めたアナタが素敵」とか言われているのか、
打っても守っても両の脇が緩まないし、撓まない。
ただ西岡と戦ったR・ムンローも固そうな体で固いブロックに長けていたことから
英国ボクシングも大陸の風に吹かれていることが伺える。
N・ハメドまでの英国ボクサーの系譜はそのまま変則ボクサー列伝とも言えるのだが、
21世紀はボクシングにおいても(文化的なシステム同様に)均質化が進むのだろうか?

ジンジルクを左右逆にしたようにイメージで見たとして、
マルチネスは西岡と同じくサウスポーを得意にするサウスポーだと推測できる。
また王者に久しぶりに右ストをスパーンと決めるところを見て
変則を攻略することができるのは正統派であるということも再確認させられた。
vice versa(逆もまた然り)。
この選手の最大の長所は捨てパンチを打たないところ。
当たるパンチを当たる距離とタイミングで打ち続けるのはスキルと同時に精神力を要する。
これが例えばスキルがあって堪え性の無いボクサーなら、
バッティングのカウンターを狙いたくなるところだ。
偶然のバッティングが2度だけだったというのは
この選手のスキルとポリシーの証明だった。
唐突に見えたKOも、見返してみると納得。
10ラウンドに既に事切れたいたのだ。


考察 ~マルチネス~

キャリアの中で鼻血流血ファイトの経験など皆無だろうし、
そもそもパンチを食いそうで食わないことが最大の長所だったはずだ。
インタビューで、効いたパンチはマルガリート、パブリック、ウィリアムスからしか
食ったことがないなどと、人を食ったようなコメントを出してもいたが、
年齢的に大幅な上積みが見込めないだけに、コンディショニングが重要になる。
だからこそOxnardという温暖な土地を選んだとも聞いている。
100%に仕上がっていなかったのはコンディショニングの問題や
モチベーションの低下もあるかもしれないが、一番は対戦相手の力量の読み違いだろう。
ビッグファイトの後、もしくは直前というのは意外と仕上がりが悪くなるボクサーは多い。
マルチネスもどうやらそうらしい。
それでもスピードとスタミナ以上にパワーを証明するこの結果は
パウンド・フォーパウンド・ベストに連なるボクサーならでは。
head movementでガードオープンを誘い、開けてこないならばこじ開けるぜと
言わんばかりのストレート連打は、パブリック戦の9ラウンドを彷彿させた。
地力はまだまだトップクラスだ。

Sウェルターにlucrative optionsが見当たらずミドルに転級。
今になってカークランド、アルバレスなどが浮上してくるとは
どこまでもツキがない。
階級の上げ下げは得策ではない(体脂肪率6%らしいし)。
ベストの選択はミドルでパブリックとの再戦なのだが、そうは問屋が卸さない。
やはりツキがない。

リングサイドの女性はモニーク・マクライン……ではなくモニーク・マックリンさん。
http://www.boxingscene.com/sergio-martinez-being-champion-outside-ring--43845
リングの外でもチャンピオンであることを称賛された記事。

閑話休題。
日本では芸能人やスポーツ選手が重病人や障がい者への訪問やイベント・観戦招待を
行うという美談が時折マスコミに報じられるけれども、これは実は斡旋業者がいたりする。
アメリカという(経済にとどまらない)格差を許容させられる社会で行われる
著名人らによる慈善・奉仕活動にも、斡旋業者が存在するのだろうか?
いじめに関しては日本では内藤が発言していたが、半分は言わされた感があった。
徳山のワン・コリアというメッセージも賛否両論というか賛2否8ぐらいだったか。
ボクシングは社会的なメッセージを強く発することのできるスポーツだと思うが、
日本ではどうしてもエンターテインメントの部分だけにスポットライトが当てられる。
何故なのだ?

フェザー級12回戦

2011-11-03 21:21:34 | Boxing
ユリオルキス・ガンボア VS ダニエル・ポンセ・デ・レオン

ガンボア 8ラウンド負傷判定勝利

考察 ~ガンボア~

この選手の特長はスピードもさることながら
射程の長さ、ヒットポイントの遠さ、懐の深さにもあると思われる。
それらはスピードがあるからこそではないかとも感じるが、
体格、リーチを考えると最適なパンチのヒットポイントがこの遠さであることは驚異的だ。
特に右ストレートは踏み込みとの二段構えで、
この長さと比較できるパンチはポンサクレックの左ストレートぐらいしか思いつかない。
ただ、ポンサクレックは最適なボディメカニクスを駆使していると考えられるが、
ガンボアは生得的なathleticismでこれを行なっている(ように見える)。
肉体的にあまりにも恵まれていることは幸福なことだが、
その反面で精神的なムラがあるようにも感じられる。
どこかというとディフェンス。
自分の打ち終わり、相手の打ち終わりともにガードが低く、
見切っているという確信にも近い自信がそうさせるのだろうが、
カウンターの左フックを見るほどに、
ドネアのようなエキサイティングな見切りではなく、
恬淡とした見切りのカウンター。
まあ、報酬面か相手の実力か、とにかくモチベーションが今ひとつだったようだ。
アフロアメリカンにありがちなメンタルのひ弱さはないにしても、
この精神的なムラっ気はどこかで代償を支払わされる予感がする。
ライト級まで行くとか言ってるけど、軽く通用してしまいそうだ。
もちろんそのためには、本人のモチベーションの充実が不可欠なのだが。


考察 ~デ・レオン~

明らかに本来のファイトスタイルを封印、あるいは改造して臨んでいた。
そういう試合は大体為すすべなく敗れるもの。
ただし、改造したとしても本性が消せるはずも無く、
左フックの一撃に光明を見出したくて仕方がないようにも見えた。
スピードスターには相性悪しだが、打ち合いに応じる相手なら
Sバンタムだのフェザーだの関係なかろう。
ドネアのフェザー転級時の試運転候補となりうる内容だった。
長谷川の再起路線に立ちはだかって欲しいとは思わないけれど。

フェザー級8回戦

2011-10-30 16:48:27 | Boxing
ホルヘ・ディアス VS ラファエル・ローラ

ディアス 3ラウンドTKO勝利

考察 ~ディアス~

明確な反則パンチを打っていく姿勢は、流れとか荒々しさのせいではなく、
意図的なものに思えてならない。
女性レフェリーだからとか、再起戦だからとかはお構いなしに
ファウルを犯すタイプと見る。
自身のリーチの短さとジャブへの意識の低さが
ミドルからクロスレンジでのselfishな戦い方に直結しており、
それが反則上等のファイトにつながっている。
世界の top contention 復帰後は、やはり勝ち星を伸ばせなくなる。


考察 ~ローラ~

これはルイス・サンタナを狙ったのか?
それともフランシスコ・ロレンゾと言うべきか。
反則打を浴びてしまったことは同情するしかないが、
不用意に相手に背を向けてはならない。
たとえば故E・バレロはラビットパンチを浴びる雰囲気があれば
必ず後頭部をガードしたし、同様のムーブは他にいくらでも見られる。
倒れる前から気圧されていたのだろうが、
ギブアップするのならせめて立ち上がってコーナーに目線を送るべき。
ボクサーとして最低限の矜持は示して欲しかった。

WBC米大陸Sフライ級王座決定戦

2011-10-30 16:47:52 | Boxing
カルロス・クアドラス VS ジョニー・ガルシア

クアドラス 2ラウンドKO勝利

考察 ~クアドラス~

過去の試合の感想でカウンターパンチに沈む予感ありと書いた頃と
印象はそんなに変わらない。
とにかく荒い、そして粗い。
リードないしはフェイントによらない攻撃姿勢は若さの特権ともいえるが、
若くして老獪なボクサーが増えている現状では、今後苦労しそうである。
確かアマチュア時代の亀田和毅のライバルだったか?
階級も近いし、無敗対決が近い将来あるか?
相手に正確にボクシングされると苦しいかもしれない。


考察 ~ガルシア~

世界ランカー対決というほどの緊迫感はなく、
互いが互いを格下と見下した立ち上がりは、ガルシアのものだった。
あの左のカウンターパンチは狙ったものというよりは
衝突した感じで、その証拠に2発目は決してヒットしなかった。
名城の世界戦が決まっているが、
こういうレベルの相手との査定マッチをクリアしてくれないと
勝利予想をするのはどうしても難しくなる。

WBA世界ミニマム級タイトルマッチ

2011-10-26 00:05:40 | Boxing
王者 ポンサワン・ポープラムック VS 挑戦者 八重樫東

八重樫 10ラウンドTKO勝利

考察 ~ポンサワン~

ニエテス、オーレイドン、ソーサと黒星を誇ってもいい戦績だ。
そしてTV東京の奉ったターミネーターという二つ名。
タイ人ボクサーというのは往々にしてメチャクチャ強いか、
それともさっぱり弱いかの二極化の傾向が、特に来日タイボクサーに見られる。
ポンサワンは条件付き後者。
八重樫に「逃げ回らないで欲しい」と注文をつけていたのは、つまりそういうこと。

スピードの無さ、そして反応の遅さに固有のものがあり、
high guard のまま前進しながら面白いようにフック、アッパーを浴びた。
特筆すべきはアゴの強さで、並みの打たれ強さの選手なら3回は倒れていただろう。
浴びるべきパンチを当然のように浴びてしまうそのディフェンスはしかし、
打たれ強さへの自身の裏返しでもあり、今回は自信が過信になってしまった。
オフェンス面で特に目に付くパンチはなかったものの、
気になったのは八重樫の顔の腫れと発赤。
イーグル戦ではより多くのクリーンヒットを食っていたが、
アゴ以外の損傷は目立たなかった。
より分かりやすい例を挙げるならば、パッキャオ戦後とモズリー戦後の
マルガリートの顔面の違い。
両者のパンチの質の違いがよく顕れていた。
ただしこれは長所短所ではなく、あくまで特徴と捉えるべきだろう。
一発の威力やキレがあるのは魅力だが、それらがないことは必ずしもマイナスではない。

しかしこの王者はプラスとマイナスの並存が著しく、
勝つにせよ敗れるにせよ、激闘とならざるを得ないのだろう。
最後のブロッキングに反撃の意志が感じられず、
最高のタイミングでのストップをチャンピオン自身が呼び込んだことで
2011年の日本の年間最高試合に決定したと言ってもいいだろう。


考察 ~八重樫~

イーグル戦の悪夢は払拭されていたようだ。
元々スピードは群を抜いていただけに、
そのスピードに酔いしれなければ
スキルフル、テクニカルな面を前面に押し出すことができる。
スキルフルとはパンチを当てること、パンチをもらわないを一義とし、
テクニカルとはそれを支える細かい技術を指す。
左のジャブ、フック、アッパーが効果的に当たったのも
スピードをテクニックに結びつけたから。
それができなければただの速いボクサー止まりとなる。
精神的な成長を感じさせる場面が6ラウンド以降は随所に現れた。
特に疲労とダメージから足を止めて打ち合いに応じざるを得ない場面は
観る者の背筋を凍りつかせる恐怖感をもたらしたが、
意地を捨て、ジャブの弾幕を張りながら後退する様は
初代ターミネーターに対峙したカイル・リースのヒット&アウェイならぬアウェイ&ヒット。
それにしても見事に『致命的な欠点』を突けたもの。
相手の特徴や癖に乗じるのは、相手のリズムやペースにハマる陥穽と裏表だ。
八重樫がこれだけの経験を手に入れたのは大きい。

大橋ジムの世界戦線戦略は防衛を勘定に入れない挑戦ありきの姿勢は
はっきり言って評価できなかったが、
次戦のオプションは?
タイで再戦は正直厳しい。
興行権買取の資金をテレ東やその他スポンサーでどれだけバックアップできるのか。
魅力的なカードの実現を保証すればいい。
すなわち世代を超えた大橋-井岡の実現。
井岡VS八重樫だ。
坂田-内藤が実現させなかった日本ボクシング界も、
そろそろ本気でベルトの権威というものを考えてみてもいい。

WBC世界ライト級王座決定戦

2011-10-18 00:48:12 | Boxing
ホルヘ・リナレス VS アントニオ・デマルコ

デマルコ 11ラウンドTKO勝利

考察 ~デマルコ~

アルファロ戦は参考にならず、我々の持っているイメージとしては
やはりE・バレロ戦のそれとなる。
タフネスと体型の利を活かしたボクシングに見るべき点は多かったものの、
相手の迫力に呑まれまいと正対して見すぎてしまい、
結果として beating を味わったあの試合の印象から、
この試合でもリナレスのスピードに見入ってしまうと考えられ、
実際に見入ってはいた。
が、プレッシャーという点ではさほどでもなく、
またダメージングブローも2発にとどまった。
これは持ち合わせたアゴの強さ、ディフェンス力、勘に加え、経験の要素も大きいと思う。
ボクシング漫画なんかだと「殺されるかもしれない」という恐怖感が描かれ、
その試合の結果如何で(フィジカルメンタル両面もしくは片面で)壊れるものもいれば、
一回り大きく成長するものもいる。
デマルコにおけるバレロ戦はどうやら後者として機能したらしく、
たたき上げの苦労人メキシカンのイメージを補強するとともに、
人を追い詰めやすい日本社会という環境への偏見をも管理人の中で助長した。


考察 ~リナレス~

長谷川のイメージがオーバーラップしたファンは多いと思う。
スタイルにおいてもそうだが、キャリアの進行とその先の試練という面においても、だ。

あれこれ書く気分になれないけれど、
育成過程のどこかでミステイクがあったのかもしれない。
E・バレロが帝拳で健在な頃、リナレスとのスパーは禁じられていたと聞くし、
この試合前のキャンプでのパッキャオとのスパーリングでも
一方的にボコられたという報道もあった。
バレロとガチスパ経験があれば……
パッキャオではなく無難なサウスポーとスパーしていれば……
たらればが尽きない。

効いた相手をどう仕留めるのかというのは重大なテーマ。
しかし、効かされた時にどう動くのかは巨大なテーマだ。
本能的にそれを知っている天才型(メイウェザーetc)もいれば
叩き上げのキャリアの中で身につける者たち(メキシカンに多い)もいる。
この試合のリナレスは5ラウンド終わり頃にもらった1発が試合の流れを変え、
6ラウンド中盤以降の打ち合いでそれを決定的にされたように思う。
手を出さない時には足を動かし、足を動かさない時は頭を動かし、
頭を動かしていない時には手を出すというリズムがそこから崩れたからだ。

天才とか黄金少年という枕詞を除こうではないか。
己が血の味と敗北の苦味を知った若者がそこにいるだけのことなのだ。
リング上の結果が真実だ。
それ以外のものは虚飾だったのだ。

WBC世界Lヘビー級タイトルマッチ

2011-10-17 23:16:56 | Boxing
王者 バーナード・ホプキンス VS 挑戦者 チャド・ドーソン

ドーソン 2ラウンドTKO勝利

考察 ~ドーソン~

おそらくファーストコンタクトで勝敗の予感を得たのでは?
ホプキンス対策を行うこと数年、右ストレート→ヘッドバットの
コンビネーションは充分シミュレーションを行なってきたはずだ。
しかし、自身のメンタル面のコントロールまでは度外視していたのか。
もしくは減点1なら蛙の面になんとやらの心持ちだったか。
ロングとクロース、どちらのレンジでも支配的だっただけに、
続きが見たかったし、リマッチの必要性も感じる。
ただ本人にその気はなさそう。
気になるのはMayweatherも使ったあのフレーズ、
"He started it!" = 『アイツが先にやってきやがった!』
リングで相対した者にしか分からないダーティさがあるのだろう。
あの英国紳士カルザゲも試合後のインタビューでホプキンスをこき下ろしていた。


考察 ~ホプキンス~

実はこの試合、とある現役医療従事者と観戦していて、
その人は管理人が気付かなかったホプキンスの肩の異状を一目で見抜いていた。
(具体的には肩の形状、表情、微妙な動きの総合判断らしいが)
筋力が衰えてくると、転倒時に手や肘をついた際に手首、もしくは上腕を骨折しやすいが、
これは高齢者の話。
ホプキンスはボクサーとしては高齢だが、一般社会では中年もしくは壮年。
後方転倒による肩の脱臼は、負傷としてはもっともありうるものかもしれない。
実際に医師の診断書も脱臼として出たらしい。

技術、戦術云々以前に、あまりにも過去の演技がすぎたために、
オオカミ少年の陥穽にはまってしまったようだ。
ただし、レフェリングにも疑問が残る。
取るべき(だった)手段として考えられるのは
①シューズの裏面以外のキャンバスへの接触ということでノックダウン
→カウントを取る
②スリップダウン扱いにする
→試合再開&続行
③レスリング行為によるダウンのためドーソンに注意
→コミッションドクターによる簡易診断の上で続行可否を判断
などなどがある(もっと候補があるかもしれない)。

最近のUSリングでは不可解なレフェリングが多過ぎる。
コルテスのよそ見、女性レフのアンタイムリーなストップ、
スリップの見逃し、ローブローの見逃し、そしてこの試合。
アメリカでは野球のアンパイアを指して≪必要悪≫と呼ぶらしいが、
ボクシングのレフェリーは何と呼ばれるべきなのだろうか。

PS.
すごくどうでもいいことなのだが、
同時通訳の人には「お疲れ様です」と同時に「もう少し精進を」と伝えたい。
インタビュアーとボクサーの間を一人称「私」で行ったり来たりしていたが、
ボクサーの言葉には意識的に「俺」を当ててはいかがか。
どうしても省略やラグが生じる同時通訳なのだから、
話者が誰なのかをはっきりさせるだけでも、ずいぶんと分かりやすくなる。
デラ・メイ戦の頃より(ボクシング通訳に関して)格段に進歩しているので
もう一つ上のレベルに登っていただきたい。
有料チャンネルには優良サービスを期待するのが視聴者というものだ。

IBF世界バンタム級タイトルマッチ

2011-10-16 19:30:33 | Boxing
王者 ジョセフ・アグベコ VS 挑戦者 アブネル・マレス

マレス 判定勝利

考察 ~マレス~

バッティングにローブロー、キドニーブローと反則の総合商社と呼びたくなるな。
大手プロモーターの有力な若手が黒人ベテランボクサーに不可解な勝利とか誰が見たがるのかねえ。

一発のパンチ力ではアグベコに格段に劣り、連打力ではタメを張っても、
リズム感ではやはり一枚落ちた。
7~8ラウンドにかけて突如精神的に失速したように映ったのは
フィジカル面での力の違いを感じ取ってしまったからに見えたが、さて。
帰るべきコーナーも何回か間違えたのはダメージで頭がボワーっとしていたからだろう。
最終回以前にも細かいローブローを放っており、どこまで事故でどこまで故意なのか。
それは誰にも分からない。
おそらく本人にも分からないのではないか。
なればこそ、第三者が厳格に適正に裁く必要があるのだが、
最近どうも各方面でレフェリーのパフォーマンスに陰りが見えるような気がする。

ボクサータイプに強く、ファイターにあまり強くないボクサーファイターだ。
以前はこれとは逆の印象だった。
元々のスタイルが完成されているので、自身の調子の出来、相手の力量・スタイルが
そのまま評価に直結するだろう。
具体的な穴を複数見せた瞬間にトップ戦線からは脱落しそうだ。
そしてリマッチでは完敗を喫すると予想する。

考察 ~アグベコ~

黒光りする肉体に逆三角形の上半身、ほっそりとした脚、平均より明らかに長い前腕。
ボクサーになるべくして生まれたと言うべきか。
初回、最終回とある意味理不尽なダウン裁定。
注目すべきは初回のダウンだ。
オーソドックスが左フックを放つ際には単発のそれとワンツースリーのスリーに大別される。
日本のボクサーには概してスリーがなく、単発の左フックは肘をあまり曲げないスイングとなる。
川嶋勝重のスイング後、沈み込むようなフォームの左フックを思い浮かべていただければ解りやすい。
ボディメカニクスではなく、根性で放つパンチと言うべきか。
対照的にアグベコのあの左フックは、足首、膝、腰、肩、肘を体幹の軸に沿って伝わったパワーが
左フックの回転終端まで乗り切ったその運動エネルギーが対象に空振りしたことによるバランスの崩れ、
それがすなわち転倒につながった。
運動美という言葉があれば、是非使ってみたいようなシーンだった。
美はそれだけにとどまらず、マニアの中のマニアなら
後半になるほど肩口からスッとまっすぐ伸びる左ジャブに徳山のシルエットを見た人もいるかもしれない。
とにかく見ていて決して飽きないタイプのボクサーだ。

ペレス戦でも眼にパンチが入ったか何かでしゃがみこんでしまったけれども、
なにか根本的にメンタルのひ弱さがあるのだろうか。
いつも黒人選手はメンタルが弱いと言っているが、
これはイコール、黒人選手のフィジカルは素晴らしいの裏返しなのである。