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BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBA世界Sフェザー級統一戦

2012-02-07 07:37:35 | Boxing
正規王者 内山高志 VS 暫定王者 ホルヘ・ソリス

内山 11ラウンドTKO勝利

考察 ~内山~

同じ団体でも2ヶ月休みで休養王者にされる者あれば
10ヶ月休みでも休養王者にされないとは一貫しませんなあ。
正規と暫定の統一戦決定でまた暫定立てるとか、
そこまでいくとWBAのboard of controlは腐っているとしか言いようがない。
承認団体に信を置けないならば、我々は何をもって世界王者を認定するべきか。
それは我々自身の眼に他ならない。

内山の最大の特徴はそのパンチ力。
しかし、最大の長所はというとその洗練されたスタイルだと思う。
最近の日本の世界王者(あるいはその予備軍)は、
性急なマッチメークで当面のランクアップだけを目指し、
ボクサーとしてのレベルアップには目を瞑ってきたように見えるが、
この王者は近年の日本のボクシングシーンには珍しく、
世界王者になるまでに十分な経験を積み、
なおかつ世界を獲得してからもその伸びしろを着実に伸ばしてきている。。

坂東、三浦に一発を食ってきた不安要素は、
技術の欠如というよりも集中力の途切れによるもので、
相手のレベルが高くなるほどconditioningやconcentrationが
より高まるタイプだと推測される。
故E・バレロと互角のスパーを繰り広げたという業界の噂は
試合を観れば観ればみるほど事実だったのだと首肯せざるを得ない。

パンチ力そのもの威嚇としたプレッシャーと
全てに卒のないボディワーク、リングを巧みcut offするフットワークと
それらを総合したintelligenceは日本のボクシング史上において
屈指の完成度と言える。


考察 ~ソリス~

浜さんが言う「変なタイミングの持ち主」という評価は表現としては不適切だが、
評価としては当たっている。
正統派を極める王者の攻撃に対して、歴戦のキャリアで培った勘と防御技術で
対抗しようとしたが、それらを押しつぶす王者の重厚なボクシングに初回から膝を屈した。
中盤以降はカウンターに活路を見出すしか方策がなく、
あわよくばアクシデンタルなノックダウンでも、という心境だったようだ。
超一流相手にKOで沈む姿が様になってきた感すらある。
最後の左フックはそのコンパクトさにおいて日本人離れしたボディメカニクスを証明し、
そのインパクトにおいてドネアを彷彿させた王者。
ガンボアに敗れたところから超一流であることは証明されていたが、
それでも日本のリングでこのレベルの相手にKO防衛を飾った選手は
近年では見当たらない。
素晴らしい敗者(≠負け役)となってくれた。

WBA・IBF世界Sライト級タイトルマッチ

2012-02-03 23:42:32 | Boxing
王者 アミール・カーン VS 挑戦者 レイモント・ピーターソン

ピーターソン 判定勝ち

考察 ~カーン~

単純な体全体のスピードならばメイウェザーを超えているのでは?
そう判断させるほどのスピードがどの試合でも序盤、特に初回にある。
ジュダー戦、マクロスキー戦などもそうで、
相手にとってはこのスピードに煽られるか否かが勝負の鍵を握ることになる。
カーンからすると序盤はほぼ無条件に主導権支配に成功できるわけで、
一度掴んだペースを離さないことが最低ライン。
しかし、この最低ラインが存外に高いハードルであることが判明した。
アインシュタインならずともスピードは相対的なもので、
ボクサーにとってのスピードも、スピード以外の要素で速度の増減はありうる。
それがつまりテクニック。
カーンにとってのスピードはフィジカル面のそれのみで、
たとえば相手が眼のフェイントをいれてきたときに
「まっすぐ」引いてしまう癖があることが露呈した。
スピードスターに特有の脆さと言うべきか、
たとえばM・マイダナ戦で絶体絶命のピンチに陥った経験から
フットワークの真髄を学んだに違いないと(勝手に)確信していたが、
中盤以降にピーターソンが強めてきたプレッシャーに飲み込まれていたようだ。
と言うのも、そのプレッシャーをいなす、もしくは軽減するような策が
何一つ実行できなかったから。
詰めてくる相手をジャブで止めるのか、
ワン・ツーで止めるのか、
カウンターで迎え撃つのか、それとも脚で翻弄するか。
カーンは第4の選択肢をメインに選んだが、
そのフットワークは翻弄するというよりも翻弄されたもので、
たとえばコットがマルガリートとの2戦で披露したような
小刻みなサイドステップを交えるでもなく、
シントロンがアングロ戦で見せた効果的なカウンターを打つわけでもなかった。

何か本質的に弱気の虫でも腹の中に飼っているのだろうか?
プレスコット戦は事故で片付けてよかったのかもしれないが、
今後は対戦相手もかなり強気で向かってくるだろう。
28歳で絶頂のまま引退というプランの実現が困難になってきた。



考察 ~ピーターソン~

初回のスリップは明らかにダウンで、
その後のダウンはスリップに見えた。
第一ラウンド早々のダウンはレフェリーも心理的にダウンを宣告しにくい。
これは河野もフィリピーノ相手に初回いきなりダウンして
レフェリーにスルーしてもらったことがある。
立ち上がりは最悪で、早い段階で連打を浴びてのTKOもありうるかと思わせたが、
カージョ、オルティス、ブラッドリーらと戦ってきた経歴は伊達ではなく、
コテルニク、マイダナ、マリナッジ、ジュダーに勝ってきたカーンよりも
あるいは濃密なキャリアと言えるかもしれない。
そのブラッドリー戦ではプレッシャーをかけても相手に軽くいなされたものだが、
この夜の相手はプレッシャーにもろに圧されてくれた。
あれよあれよとカーンを追い回し、ローブに詰めたが、
そこからのパンチに威力はあるが精度に欠け、
攻勢は取るものの、ダメージを与えるには至らないという、
序盤戦とは異なる意味のサスペンスがあった。

この試合の決め手は最終ラウンドの減点。
hometown advantageだと言ってしまえばそれまでだが、
あまり露骨にそう解釈されてしまうレフェリングもいかがなものかと思う。
確かにカーンのプッシングは見苦しかったのだが……
IBFの役員がリングサイドでどうだこうだという
スキャンダル手前の情報も聞こえてくる始末。
リマッチの機運が高まっているので、決着はリング上でつけてもらいたい。

今後はJ・M・マルケスとの対戦が取り沙汰されているが、
そんなマッチアップになにか意味があるというのだろうか。

WBO世界フライ級タイトルマッチ

2012-01-30 22:04:13 | Boxing
王者 ブライアン・ビロリア VS 挑戦者 ジョバンニ・セグラ

ビロリア 8ラウンドTKO勝利

考察 ~ビロリア~

ゴング直後から一気呵成に攻勢を奪われたが、
初回残りちょうど30秒時点で当てたカウンターの左フックは
実は相当にダメージを与えていたのではないか。
流れが全てそこから逆転していたようだ。
また2ラウンド開始直後の相手の右に合わせる左フックのカウンターは
観る者にcompatriotのN・ドネアをイメージさせ、試合の流れを決定づけたようだ。
3ラウンド以降は相手のアッパーに対してクロスアームブロックを採用するなど
漫画のごとき攻防の妙味が随所にちりばめられていた。
勝負を決めたのもカウンターの左フック。
タイミングとしては早いが、勝負ありとするには十分。

ボクサーは大別すると
コンスタントに力を発揮するタイプ
対戦相手の力量によってキレキレからナマクラにまで変化するタイプ
の2種類があるが、ビロリアは明らかに後者。
評価は取り戻したものの、この特徴から長期政権はやはり難しいか。
日本ボクサーにとっても攻略しがいのある王者である。


考察 ~セグラ~

そのメンタルは100%攻めで構築されており、
ファイトスタイルにおいても引く(≠退く)ことがないため、
浜田氏の言うとおり、もらうパンチの威力が「10の力が20になる」。
自身にとっての打ち易さ(ガードのルーズさ)が
相手にとっての当て易さにならなかったのは何故か。
ひとつには攻撃力そのものが威嚇として作用していた。
もうひとつは階級がライトフライ級であったということ。
前者については高度に情報化されたボクシング界においては
格好の研究・攻略対象であるし、
後者については近年崩されつつあった「階級の壁」が
頑として存在することをあらためて印象づけた。

近年のボクシングはディフェンスの良し悪しが
特に勝敗に直結しているように思えてならない。
「攻撃は最大の防御」という思想は現代ボクシングではもはやタブーか。

Recapitulation 2012

2012-01-01 01:32:27 | Boxing
☆ Fight of the Year ☆

○ ノニト・ドネアがフェルナンド・モンティエルを2ラウンドTKO

普通、他項目でノミネートされたものは年間最高試合には選ばないものだが、
たまにはいいだろう、というか今年はこれ以外はちょっと選びにくい。
ひょっとすると我々は『フィリピンの閃光』に本物のNextパッキャオを
見ているのかもしれないのだ。
パッキャオがモラレス、バレラ、マルケスと拳を交えたように、
ドネアもモンティエル、アルセ、ジョニゴンと次々と撃破していくのかもしれない。

次点:八重樫東がポンサワン・ポープラムックを10ラウンドTKO

次々点:ビタリ・クリチコがトマス・アダメクを10ラウンドTKO


☆ Knockout of the Year ☆

○ ノニト・ドネアがフェルナンド・モンティエルを2ラウンドTKO

この栄誉も文句なしにドネアで決まり。
ダルチニャンをKOしたあの左カウンターは実際にリングマガジンで
年間最高KOかつ年間最高番狂わせともなったが、
こちらのパンチもそれに勝るとも劣らず、
F・モンティエルを痙攣せしめたこの左フックのカウンターは
近年ではパッキャオがハットンを失神させた左、
S・マルチネスがP・ウィリアムスを気絶させた左に並び称される。

次点:ジョニー・ゴンサレスが長谷川穂積を4ラウンドKO

次々点:内山高志がホルヘ・ソリスを11ラウンドTKO


☆ Decision of the Year ☆

○ 西岡利晃がラファエル・マルケスに12ラウンド判定勝利

不可解な判定やレフェリングが横行した年だったように思うが、
思い返せば不可解な判定が出ない年などないわけで、
ノックアウト決着ではなく、かつ合理的な判定決着試合から選ぶなら
この結果に落ち着くしかない。
ハイライトを見て改めて思ったが、I・バスケスのプレッシャーというのは
とんでもないものがあったと間接的にそちらの評価も上昇した。
いやいや西岡はバスケスと同世代、というか年長だったな。
ま、同じ尼崎市民ということで来年こそは鶴橋はまる徳前でばったり出会ってみたい。


次点:ウラディミール・クリチコがデビッド・ヘイに12ラウンド判定勝利

次々点:テーパリット・ゴーキャットジムが亀田大毅に12ラウンド判定勝利


☆ Upset of the Year ☆

○ 石田順裕がジェームス・カークランドを1ラウンドTKO

痛快さという点で群を抜くのがこの試合。
石田の次戦が1ラウンドKOであることは全くプラス評価にならず、
カークランドの再々起路線が光れば光るほど、石田の勝利が輝く。
2月にはやや落ち目のポール・ウィリアムスとの対戦も内定している。
新年明けて早々に2年連続Upset of the Year受賞決定のチャンスがあるわけで、
善戦すればカークランドとのリマッチも射程内だ。

次点:ジェームス・カークランドがアルフレド・アングロを6ラウンドTKO

次々点:アントニオ・デマルコがホルヘ・リナレスを11ラウンドTKO


☆ MVP ☆

○ ノニト・ドネア

戦慄走るノックアウト劇に2階級制覇王者に完勝。
すでにバスケスJr戦、そして西岡戦が内定しており、
言葉の本当の意味においてパッキャオの後継者となれるかどうか、
その真価を問われる一年となろう。

次点:西岡利晃

次々点:井岡一翔

WBA世界フェザー級タイトルマッチ

2012-01-01 00:53:54 | Boxing
王者 セレスティーノ・カバジェロ VS 挑戦者 細野悟

カバジェロ 判定勝利

考察 ~カバジェロ~

はっきり言って舐めていたか、あるいはそもそも練習段階から手を抜いていたとしか思えない。
そんな出来だった。
実況が絶叫していたように疲れてはいたが、それは打たれ疲れでもダメージでもなく、
調整不足から来る単純な疲労のせいだったようにしか見えなかった。
それともWOWOWで観ていると舞台の華やかさや実況、解説の影響で
ボクサーを過大評価してしまうという陥穽にはまってしまうのだろうか。
ガードの真ん中を強引に割っていくジャブ、
かと思うと相手のテンプル目掛けてオープンブローなんのそのの左右フック連打。
これらが見られなかったのは、細野のプレッシャーがそれほどキツかったからなのか?
とてもそうは思えなかったが……

ディフェンスではその長身のおかげで顔面がナチュラルに相手のパンチから遠く、
なおかつ斜に構えてダッキングと戻りのバネでのスウェーまでを駆使するのだから
並みのフェザー級では届くものでもない。
SフェザーでJ・リッツォーに判定で完敗し、そのリッツォーがA・ブローナーに瞬殺と
間接的に株は落ちていたが、この勝利でもその株は戻らない。
敵地で戦ったとはいっても、この王者はもともとフーテンの寅さんばりに
世界を転々としているからだ。


考察 ~細野~

作戦の骨子はインサイドでのボディ攻撃だったと推測するが、
クリンチの際にラビット気味に手が出てしまうのは癖なのだろうか?
クリンチを念頭に置いて戦うのならば徳山とホプキンスのビデオを
擦り切れるまで(今はDVDかBDか)観なければならない。
駄々っ子のごとく相手のアゴを拳でグリグリするのは悪印象しか与えない。
まあ、それだけ必死だったということなのだろうけどね。

最大の敗因はジャブの欠如(≠不足)。
相手は本質的にカウンターパンチャーではなく、
体にもさほどキレがなく精神的にもなまくらだった。
それを追い詰められなかったのは自分自身にもキレがなかったからだ。
バズーカとはいっても「当たらなければどうということはない」
カバジェロほどの身体的特徴を持つ選手対策には
当然それ相応の長身スパーメイトを呼んだものと思うが、
試合になってそれがスコーンと頭から抜けたとも思えない。
結局、練習段階から工夫がなかったわけで、
訳が分からず密着してしまったのは最適な距離を測れず、
また作れてもいなかったから。
それとも相手を苛つかせる作戦が……?
いずれにせよ、意志を込めたジャブであれば相手がそれにかぶせてくることは
99%無いのだから、そこから展開を作るべきだった。
良いパンチを限りなく食い、明らかに効いた場面でも乗り切った
tenacityとresillienceは亀田大毅を上回るものがあったが、
気持ちで勝負が決するのは技術、体力、作戦において五分に近かった場合だ。
これらを無視した精神論は禁断の神風アタックに過ぎない。

WBC世界ミニマム級タイトルマッチ

2011-12-31 20:30:41 | Boxing
王者 井岡一翔 VS 挑戦者 ヨードグン・トーチャルンチャイ

井岡 1ラウンドTKO勝利

考察 ~井岡~

1ラウンド足らずで決着とはいえ前座の京太郎選手と比較すれば、
ボクシングの要諦はやはりタイミングだと分かる。
これは内藤も事前に指摘していたとおりで、
相手の防御のタイミングをずらすためには、
ジャブ、捨てパンチ、フェイント、ブロックの上を叩くなど
講じるべき手段は様々で、どれを選択するかが作戦の肝となる。
井岡がとったのは先制攻撃。
これが見事にハマった形で、自身の視力、反射神経、耐久力と
カウンターパンチへの揺るがぬ自信がこの展開を可能にした。
とどめの一撃となったスマッシュはまさしくタイミングのパンチで、
出会い頭ではない、本物のカウンターを久々に日本のリングで見た気がする。
スケールの小ささを気にしたこともあったが、
これはやはり指名挑戦者の相手が単に強かったということだったのか。


考察 ~トーチャルンチャイ~

コンパヤックにポンサクレックと同門で練習していると聞くだけで
ボクシング関係者ならずとも震えを感じてしまうものがある。
8戦というプロキャリアはアマ、ムエタイのbackgroundのある
タイ人にとっては決して底浅いとは判断できず、
若竹の勢いで伸びている最中なのか、
それともある程度完成して伸びしろは少ないのかは
この結果だけでは判断できない。
初回からガンガン行くという発言に若さを感じたが、
それは無分別でもあったようだ。
世界タイトルに複数回挑戦するも、何かが足りずのR・フアレスのような
選手に成長(?)しそうな気がする。
7年後ぐらいに日本で倒れ屋になってたりして。

WBO世界Sフライ級暫定王座決定戦

2011-12-25 19:38:17 | Boxing
ダニエル・ロサス VS ホセ・カブレラ

スプリットドロー

考察 ~ロサス~

パンチが鋭く、威力もあって良い選手だが、
あまりにもバカ正直というかバリエーションに乏しい。
またスタミナの残量がパンチの質と比例しているようで、
これはスタミナ配分を知らない(キャリア不足)、
または練習不足、調整の失敗など考えうる要因は様々だ。
Offense is the best form of defense.という思潮は米軍だけで十分で、
ボクシングにおけるディフェンスは技術の中で常にtop priorityを取る。
しかし具体的な技術よりも先にフットワークの重要性や
相手の真正面に立ち続けないという基本的事項を
今頃トレーナーにこんこんと説かれているのだろうな。
ちなみに管理人採点ではドローとなったが、
試合後の平手打ちは減点1に値すると考えたい。
ちなみにこの力量ではナルバエス、そして他団体対抗王者には
まったく歯が立たないと思われる。


考察 ~カブレラ~

軟体動物かとツッコミを入れたくなるほど上体の上下動を最後まで維持した。
スタミナと打たれ慣れ、または打たれないことには密接な関係があり、
打たれることと打たせることの間には雲泥の差がある。
L時ガードとダッキングがこの選手の結論であり、
右ストレートのカウンターと返しの左フックは王道だ。
実力的には世界タイトル二歩手前ぐらいと推定する。
亀田大毅は今すぐ成田から飛行機に乗り、メキシコに飛んで
このレベルのcompetitionに積極的に参加すべきだ。
2年で8試合やれれば相当のレベルアップが期待できる。
しかしあの親父は息子たちに歪んだ愛情を抱いており、
かわいい子に旅をさせるつもりなど毛ほどもなさそうだ。
三男?
あれは避難でしょ、多分。

WBA暫定世界バンタム級タイトルマッチ

2011-12-18 19:40:32 | Boxing
王者 ウーゴ・ルイス VS 挑戦者 フランシスコ・アルセ

ルイス 4ラウンドTKO勝利

考察 ~ルイス~

海外では時々明らかにOn Paperでは身長と体重のバランスが不自然なのがいるが
この暫定王者もその一人だ。
実物を見るとなるほどと得心してしまうのも
この手の選手の特徴と言える。
これだけの体躯の選手がパンチの的確さを眼目にしたボクシングをすれば
とても中に入りきれるものではない。
4ラウンドは10-7というよりも両手刈りをレスリング行為として
減点1の10-6かな。
正規王者との統一戦は実現可能性が極めて低いが、
万が一実現しても判定勝ちできるだろう。


考察 ~アルセ~

顔は兄弟程度に似ているが、
ボクシングは不自然に似せようとするトレーナーがいるのか、
それとも本人が兄のスタイルを憧憬しているのか。
いずれにせよ力量は兄に及ばない。
将棋の世界だと兄より弟の方が棋才に優れるという定説があるが、
ボクシングの世界では兄が弟よりも拳才で勝ることが多いらしい。
クリチコ兄弟しかり、マルケス兄弟しかり、パッキャオ兄弟しかり。
カオサイ?
あれは弟はいっても双子だしね。

セコンドの要らざる容喙に怒り心頭の体だったが、
まだ大丈夫だから止めるのだということの重要性を
今頃噛み締めていることだろう。

WBA世界Sフライ級タイトルマッチ

2011-12-07 23:17:42 | Boxing
王者 テーパリット・ゴーキャットジム VS 挑戦者 亀田大毅

テーパリット ユナニマスディシジョンで防衛

管理人採点 118ー110でテーパリット支持

1R 微妙なラウンド わずかに攻勢で大毅
2~8R 打ち合いの中での手数と正確さで明確に王者 
(6R 微妙なラウンド 前進した王者のラウンドと見る)
9R 王者のテクニックが攻防ともに明確に上回る
10R 微妙なラウンド 第一印象で大毅 精査して王者 わずかに大毅か?
11R 明確に王者
12R 明確に王者

考察 ~テーパリット~

スコアだけを見れば完勝で、内容でも完勝。
実際に一発の威力以外の諸々のファクターでは
挑戦者に劣るところはひとつもなかった。
(アゴの強さは互角と見る)
またサッカー界でいうところのマリーシア、マランダラージと形容されるべき
ちょっとしたテクも持っている。
挑戦者のある意味素直な左フックと比較して
王者の近距離での左フックは必ずしもナックルパートを当てることにはこだわらず、
むしろ小指から手の腹の部分にかけてコツコツと狙って当てており、
これが非常にいやらしかった。
打ち合いにおいても緩急をつけない挑戦者の呼吸を
即座に読み取ったかのように強気に応対し、
2~4ラウンドの激闘は「このペースで判定まで行くわけがない」と観る者に思わせた。
実際は挑戦者、王者共に中盤にやや失速(こういうのは中だるみとは言わない)、
終盤に再度の大波が来るというエンターテインメント性に富む展開だった。

王者の勝因は一に手数、二に正確さ、三に防御であると思う。
実際の punch stats は不明だが、トータルの手数は1.5倍。
有効打は2倍、ヒット率で35~38%は達成したものと思われる。
また見るもの全てに訴えた序盤と終盤の近接した打ち合いでは
常に相手の左肩に先手で額をあずけることで
相手のサンデーパンチの打ち出し合法的に妨害。
これもひとつのマリーシアと言えよう。
日本に名前を売りに来たということだが、その名は十分に売れた。
来春の清水との対戦が楽しみでならない。


考察 ~大毅~

これは完全なる実力の違いによる敗北で、
さすがの亀父もこの判定には疑義を呈することはできまい。

最も端的に敗因を挙げるならば、つまらないパンチを食いすぎたこと。
それらはクロスレンジにおける左フックであり、
ミドルレンジにおける右ストレートであり、
ロングレンジにおける左ジャブだった。
キャリア前半を興毅と同じく、癖の少ない選手ばかりで築いた関係で
応用力に乏しいタフネス先行型のファイターになりつつある。

しかし!

それはそれでいいだろう。
鼻血の味と息苦しさを知ったこともキャリアになるし、
ノーフェイントでクリンチに行くとカウンターをもらうことも身をもって学んだし、
目が腫れてくると視界がどうなるのかもまさにその目に焼き付けたはずだ。
はっきり言って大毅に技術的な改善点を求めるのは間違っている。
それは大毅に100mを11秒で走れというようなものだ。
技術的に頭打ちならば、持ち前のタフネスとスタミナを活かしたボクシングに徹するべきで
洗練されたガチャガチャのファイター(何のこっちゃ抹茶に紅茶)の伝統が日本にはある。
今後の目標は明白で、それはずばり川嶋勝重2世だ。
(決して名城になることなかれ!)
大毅に求められるのは泥臭さの美学。
内藤戦の自爆、デンカオセーン戦の惜敗に今回の完敗。
思うところは多かろうがここで腐ってはならない。
以前に大橋会長は八重樫がイーグル京和に完敗した際に
「この試合は30試合分の経験に相当する」と語り、
実際に八重樫は成長を見せ、そして劇的に世界を奪った。
大毅もこの試合を飛躍の契機として、さらなる自信と実力を涵養するのだろう。
八重樫vsポンサワンがなければ、日本の年間最高試合の栄に浴するに足る試合。
オルティアーヌ戦で下がった株もV字回復。
来年この内容の試合を2試合披露できれば熱心なファンは必ず大毅を支持する。

WBA世界バンタム級タイトルマッチ

2011-12-07 21:46:52 | Boxing
王者 亀田興毅 VS 挑戦者 マリオ・マシアス

亀田 4ラウンドKO勝利

考察 ~興毅~

バッティングこそ発生しなかったものの、相変わらずリードを出さず
頭から突っ込む selfish なスタイルが2ラウンドから出現。
相手を早々に見切ったからなのだろうが、
練習のように試合をするという意識はないのだろうか?
こういうパンチ力もスピードもないやつというのは
ボディワークやフェイント技術を試す絶好の相手に思えるのだが。

技術的に優れた面をいくつも見せてはいるが、
ボクシングの技術は常に相対的なもの。
つまり相手次第だ。
ちょっと前までアルセやドネアの名前を出していたが、
亀プロが持つ抜群の政治力は裏工作や立ち回りのためではなく、
ビッグマッチの成立のために行使してほしいと切に願う。


考察 ~マシアス~

20lb近いリバウンドに意志と期待を感じさせたが、
直前にboxrecでレコードを確認してガックリ。
14ヶ月ぶりの試合が世界戦ってマルガリートやメイウェザーかいな。
当日のウェートの開きから興毅のガードの固さを試すような
スピードに欠けるも重さの乗ったパンチに期待したが、
パシャパシャの手打ちでこれまたガックリ。
こういう選手を見てしまうと
「15年前のオレが真面目にトレーニングしてたら世界ランク入れたかも」
とか楽しい妄想の世界に飛び込めそうだ。