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クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

◇クラシック音楽CD◇グリュミオーのベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲/ロマンス第1-2番

2010-01-26 09:24:14 | 協奏曲(ヴァイオリン)

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
         ロマンス第1番/第2番

ヴァイオリン:アルテュール・グリュミオー

指揮:アルチェオ・ガリエラ

管弦楽:ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

CD:日本フォノグラム(PHILIPS) DMP-218

 アルテュール・グリュミオー(1922年ー1986年)のヴァイオリン演奏は、まことにもって典雅で、格調が高く、何よりもヴァイオリンの音色がとろけるような甘さがして、聴くものを夢見ごこちにさせてくれる、数少ないヴァイオリニストであった。いわゆるフランコ・ベルギー楽派の中枢を担う名手として、その名はこれからも不滅であり続けるものと、私は確信している。我が青春のほろ苦い思い出と、常に寄り添うように聴こえてくるのが、グリュミオーのヴァイオリンの音色であるのである。つまり私の中でクラシック音楽の中のど真ん中に位置するのが、グリュミオーのヴァイオリンであり、今回紹介するベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲、それに2曲のロマンスである。そんなわけで、このCDは、私の個人的な立場からするとホンとは“誰にも教えたくない、私だけ名盤”そのものなのである。

 このCDの、グリュミオーが弾くベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は、誠に美しさにむせ返るような演奏内容である。ちょっと美しすぎるのではとも感じてしまうほどである。しかし、毅然とした構成力で演奏されていることにより、ベートーヴェンらしさはいささかも失われていないのが、“さすがグリュミオー”と感じ入ってしまう。ホンとにこの演奏には夢がある。こんなヴァイオリン演奏は、今のヴァイオリニストにはもう期待できないのかも、とも思ってしまうほどだ。そして、このCDの魅力は、ベートヴェンの2曲のロマンスが、何よりもグリュミオーの名演で聴けることに尽きる。ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は、今後もいろいろなヴァイオリニストによって、いろいろな解釈の名演奏が出てこようが、2曲のロマンスの演奏ついては、グリュミオーの演奏に尽きる。優雅で、颯爽としていて、聴いていて一時の甘い邂逅の思いに浸らせてくれるのだ。2曲のロマンスの名演中の名演といえる。

 このCDをさらに盛り上げているのが、指揮のアルチェオ・ガリエラとニュー・フィルハーモニー管弦楽団である。アルチェオ・ガリエラ(1910-1996年)はイタリアの指揮者である。ミラノで生まれ、ミラノ音楽院で学ぶ。1941年指揮者となり、ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団を指揮して、デビューした。第二次世界大戦が勃発するとスイスの亡命する。1964年ー1972年までストラスブール管弦楽団の首席指揮者を務める。このCDのガリエラの指揮ぶりは、実に堂々と明快な演奏をしており、透明な美しさのグリュミオーのヴァイオリンに実にマッチした伴奏がなんとも素晴らしい。イタリア人の指揮者は、トスカニーニやカンテルリも同じだが、イタリアオペラみたいに明確に表現しきるところが魅力だ。しかしこのガリエラも、これからは人々の記憶から忘れ去られていくのだろう。

 そしてこのCDのオーケストラは、英国のオーケストラのニュー・フィルハーモニア管弦楽団である。1945年に創設されているが、設立の目的はEMIのレコード録音であったというから、我々に馴染み深いのもうなずける。初演の指揮者はトーマス・ビーチャムで、以後、クレンペラー、フルトヴェングラー、カラヤンなど一流の指揮者が相次いで演奏している。一時期、経済的問題でニュー・フィルハーモ二ア管弦楽団と名称を変更したが、1977年から再びフィルハーモニア管弦楽団に名称を戻し、現在に至っている。このCDは丁度、ニュー・フィルハーモニー管弦楽団を名乗っていた頃の録音だ。同管弦楽団の音色は明るく、明快な響きが何とも魅力だ。現在の首席指揮者はサロネンである。フィルハーモニア管弦楽団は、過去からから現在に至るまでまで、一貫して高い演奏水準を保っていることは賞賛値する。(蔵 志津久)


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1 コメント

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グルミオー (kinugasa01)
2015-04-06 14:09:00
拝読しております。
私の在白時代(グルミオー生前)住んでいたのが、グルミオが昔住んでいた家だったこともあり、親しみをかんじておりました。

楽屋でそのことを話したら、番地が彼の頃は48番地だったのが、私が住んだ頃は88番地で、日本同様、不況で大きなお屋敷を売って、小さな家がたくさん建て込む状況がベルギーでもあったことをしりました。

思いがけず夭逝(と言っても良いでしょうね)したので、せっかくのパトロンからのストラスヴァリを手にすることはなかったようです。

ベートーヴェンのVn. Concerto早速購入致しましょう。

ありがとうございました。
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