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~グレッグ・アーウィン/ブルー・アイズ~
青い眼からのメッセージ―美しい日本の「こころ」
早春賦/浜辺の歌/みかんの花咲く丘/月の砂漠/青い眼の人形/証城寺の狸囃子
叱られて/この道/里の秋/赤とんぼ/故郷/砂山
歌/英語訳:グレッグ・アーウィン
CD:ビクターエンタテインメント VICL6113
私は、日本の童謡や唱歌は、常にクラシック音楽のジャンルの一つに入れて考えている。一般的に言えばジャンルが違うじゃないか、と言われそうであるが、明治維新以後、初めて日本人が西洋のクラシック音楽を学び、そして日本人の心を反映させて作曲して生まれたのが、童謡や唱歌だからである。その意味では、歌謡曲や演歌の一部もクラシック音楽と言っても決して間違いではない、という勝手な思いが私の心の中にあるのである。そして、これらの曲の中には名曲も少なくない。
ところで、皆さんは米国出身で東京在住のシンガーソングライターで童謡の伝道師”と言われているグレッグ・アーウィンさんをご存知であろうか。グレッグさんは、米国ウイスコンシン州の出身で、ウイスコンシン州立大学で音楽、ミネソタ大学で演劇、ハワイ大学で日本語を専攻したという経歴の持ち主である。このCDのライナーノートによるとグレッグさんと日本の童謡・唱歌の出逢いは次のようなことであったという。来日後しばらくして、童謡・唱歌の英語訳を依頼され、そこに収められたメッセージと美しいメロディーに次第に心を動かされていったそうだ。それは日本と日本の人たちが私の心をとらえる何かが、すべてそこに描かれていたからだという。
日本語の童謡や唱歌を英語に訳すという難しいテーマにチャレンジし、そしてこれらの英訳された詩を自ら歌い、収録したのがこのCDである。我々日本人は、明治維新以来、進んだ文明を持つ欧米の文化の吸収に全身全霊を傾けてきた。そして、その成果は、技術製品については広く世界に行きわたったが、“文化”という面では必ずしも十分発信されているとは言えない。それは言葉の壁に加え、我々日本人が「とても世界には理解してもらえまい」と自らブレーキを掛けてしまってことにも起因している。このブレーキを外してくれた一人がグレッグさんなのである。
この幼年時代と望郷”をテーマとしたCDを聴いていると、日本人は豊かな自然を受け入れ、それらを享受しながら世界的に見ても高いレベルの、それはそれは美しい童謡・唱歌を生み出してきたことを実感することができる。そしてグレッグさんの澄んで伸びやかな歌声は童謡・唱歌の世界にぴったりだ。グレッグさんの尽力で、これらの曲が既に素晴らしい英語に翻訳されているのだから、今度は、日本人自ら英語の歌詞で世界へ向け童謡・唱歌の世界を広めて行ってほしい。私は、若きフォレスタコーラスが最適だと、ひとり思っているのだが・・・。
(蔵 志津久)