<NHK-FM「ベストオブクラシック」レビュー>
~2021年第18回「ショパン国際ピアノ・コンクール」優勝者 ブルース・リウ 東京オペラシティにおけるピアノ・リサイタル~
ラモー:「クラヴサン曲集」から「やさしい訴え」「キュクロペス」」
「2つのメヌエット」「未開人」「めんどり」「ガヴォット」
ショパン:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」の「お手をどうぞ」による変奏曲 作品2
ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 作品35
3つの新しい練習曲
リスト:ドン・ジョヴァンニの回想
ショパン:3つのエコセーズ 作品72 第3、第4、第5
ピアノ:ブルース・リウ
収録:2023年2月24日、東京オペラシティ コンサートホール
放送:2023年3月22日、午後7:30~午後9:10
今夜のNHK-FM「ベストオブクラシック」は、2021年第18回「ショパン国際ピアノ・コンクール」で優勝したブルース・リウの東京オペラシティ におけるピアノ・リサイタル(2023年2月24日)の放送である。
ピアノのブルース・リウは、1997年パリで生まれる(カナダ国籍)。両親は中国・北京からのフランス留学生で、後にカナダへ移住。モントリオール音楽院で学び、ダン・タイ・ソン(1980年アジア人初の「ショパン国際ピアノコンクール」優勝者、現在カナダ、モントリオール在住)に師事。クリーヴランド管弦楽団、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団、モントリオール交響楽団などのオーケストラと共演し、中国NCPA管弦楽団とは北米ツアーを行う。近年では、ウクライナ国立交響楽団およびリヴィウ・フィルハーモニー管弦楽団との2年連続の中国ツアーや、サル・ガヴォーでのラムルー管弦楽団との共演がある。仙台、モントリオール、テルアヴィヴ、ヴィセウなどの国際ピアノ・コンクールで入賞、そして2021年第18回「ショパン国際ピアノ・コンクール」優勝を果たす。
今夜、ブルース・リウの最初の曲は、ラモー:「クラヴサン曲集」から「やさしい訴え」「キュクロペス」」「2つのメヌエット」「未開人」「めんどり」「ガヴォット」である。ブルース・リウのピアノタッチは実にまろやかで、流れるようにバロック時代の作曲家ラモーのクラブサンの作品が現代のピアノで演奏される。この繊細で、上品な仕上がりは、なかなか魅力に満ちている。これは師であるダン・タイ・ソンの薫陶の賜物といった感じがした。しかも、ただ古の音楽に思いを巡らすだけではなく、現代的なピリリと引き締まった感覚もあちこちに姿を現して、決して飽きることはない演奏内容となった。
次からは、ショパンの作品へと変わる。ショパン:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」の「お手をどうぞ」による変奏曲 作品2、ショパン:ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 作品35そして、ショパン:3つの新しい練習曲である。ブルース・リウのショパン演奏は、自然な流れの演奏において、時折見せる劇的な盛り上げを巧みに取り入れるところに真骨頂があるようだ。決して安易な妥協をせず、曲の本質に真正面から切り込む。ショパンの音楽は、こんなにも力強い側面が隠されてるのだよ、とでも言いたいように・・・。通常だと鼻につくところだが、ブルース・リウの場合は、ショパンの音楽が持つ多様性を存分に語りつくすので、そのようなことは微塵も感じさせない。ショパンの音楽が持つ流麗な流れを、ブルース・リウが奥深いところで身に着けていることが、リスナーににじわじわと伝わってくるのだ。
そして、リスト:ドン・ジョヴァンニの回想へとブルース・リウの演奏は続く。この曲は、1841年、リストが30歳のときに作曲された。モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」に基づいた作品。騎士長のテーマ、ドン・ジョヴァンニとツェルリーナの二重奏「お手をどうぞ」、騎士長のテーマとドン・ジョヴァンニのアリア「シャンパンの歌」が絡み合った3つの部分にわけられる。モーツァルトの旋律を引用しながら、リストによって再構築された作品。この曲で、ブルース・リウは、自己の持つ音楽性をすべて投入したような、凄みのある演奏を聴かせる。オペラの場面を彷彿とさせるような盛り上げ方は、一朝一夕で完成するものではあるまい。曲への没入の激しさが、聴き進むほど、リスナーの耳に突き刺さる。ただ、ブルース・リウが並のピアニストと違うのは、どのような場面おいも歌心を常に忘れていないこと。その意味で、リストの曲が持つ魅力を存分に知らされたコンサートとなったようだ、(蔵 志津久)
「2つのメヌエット」「未開人」「めんどり」「ガヴォット」
ショパン:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」の「お手をどうぞ」による変奏曲 作品2
ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 作品35
3つの新しい練習曲
リスト:ドン・ジョヴァンニの回想
ショパン:3つのエコセーズ 作品72 第3、第4、第5
ピアノ:ブルース・リウ
収録:2023年2月24日、東京オペラシティ コンサートホール
放送:2023年3月22日、午後7:30~午後9:10
今夜のNHK-FM「ベストオブクラシック」は、2021年第18回「ショパン国際ピアノ・コンクール」で優勝したブルース・リウの東京オペラシティ におけるピアノ・リサイタル(2023年2月24日)の放送である。
ピアノのブルース・リウは、1997年パリで生まれる(カナダ国籍)。両親は中国・北京からのフランス留学生で、後にカナダへ移住。モントリオール音楽院で学び、ダン・タイ・ソン(1980年アジア人初の「ショパン国際ピアノコンクール」優勝者、現在カナダ、モントリオール在住)に師事。クリーヴランド管弦楽団、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団、モントリオール交響楽団などのオーケストラと共演し、中国NCPA管弦楽団とは北米ツアーを行う。近年では、ウクライナ国立交響楽団およびリヴィウ・フィルハーモニー管弦楽団との2年連続の中国ツアーや、サル・ガヴォーでのラムルー管弦楽団との共演がある。仙台、モントリオール、テルアヴィヴ、ヴィセウなどの国際ピアノ・コンクールで入賞、そして2021年第18回「ショパン国際ピアノ・コンクール」優勝を果たす。
今夜、ブルース・リウの最初の曲は、ラモー:「クラヴサン曲集」から「やさしい訴え」「キュクロペス」」「2つのメヌエット」「未開人」「めんどり」「ガヴォット」である。ブルース・リウのピアノタッチは実にまろやかで、流れるようにバロック時代の作曲家ラモーのクラブサンの作品が現代のピアノで演奏される。この繊細で、上品な仕上がりは、なかなか魅力に満ちている。これは師であるダン・タイ・ソンの薫陶の賜物といった感じがした。しかも、ただ古の音楽に思いを巡らすだけではなく、現代的なピリリと引き締まった感覚もあちこちに姿を現して、決して飽きることはない演奏内容となった。
次からは、ショパンの作品へと変わる。ショパン:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」の「お手をどうぞ」による変奏曲 作品2、ショパン:ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 作品35そして、ショパン:3つの新しい練習曲である。ブルース・リウのショパン演奏は、自然な流れの演奏において、時折見せる劇的な盛り上げを巧みに取り入れるところに真骨頂があるようだ。決して安易な妥協をせず、曲の本質に真正面から切り込む。ショパンの音楽は、こんなにも力強い側面が隠されてるのだよ、とでも言いたいように・・・。通常だと鼻につくところだが、ブルース・リウの場合は、ショパンの音楽が持つ多様性を存分に語りつくすので、そのようなことは微塵も感じさせない。ショパンの音楽が持つ流麗な流れを、ブルース・リウが奥深いところで身に着けていることが、リスナーににじわじわと伝わってくるのだ。
そして、リスト:ドン・ジョヴァンニの回想へとブルース・リウの演奏は続く。この曲は、1841年、リストが30歳のときに作曲された。モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」に基づいた作品。騎士長のテーマ、ドン・ジョヴァンニとツェルリーナの二重奏「お手をどうぞ」、騎士長のテーマとドン・ジョヴァンニのアリア「シャンパンの歌」が絡み合った3つの部分にわけられる。モーツァルトの旋律を引用しながら、リストによって再構築された作品。この曲で、ブルース・リウは、自己の持つ音楽性をすべて投入したような、凄みのある演奏を聴かせる。オペラの場面を彷彿とさせるような盛り上げ方は、一朝一夕で完成するものではあるまい。曲への没入の激しさが、聴き進むほど、リスナーの耳に突き刺さる。ただ、ブルース・リウが並のピアニストと違うのは、どのような場面おいも歌心を常に忘れていないこと。その意味で、リストの曲が持つ魅力を存分に知らされたコンサートとなったようだ、(蔵 志津久)