ラットは今日も、きみのために。

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医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

高血圧薬、アルツハイマー病防ぐ可能性=大阪大学

2008年05月26日 | 創薬
 高血圧や高脂血症の薬が、アルツハイマー病による記憶や認知機能の低下を防ぐかもしれない――。大阪大学の森下竜一教授、里直行准教授(臨床遺伝子治療学)らがこんな研究成果を近く学会で発表する。動物実験の結果でまだ研究が必要だが、病気予防につながる可能性がある。

 アルツハイマー病はβアミロイドという物質が脳に異常にたまり、神経細胞が侵されるのが原因と考えられる。

 森下さんらは、アンジオテンシン2受容体拮抗(きっこう)薬という高血圧薬(オルメサルタン)を飲ませたネズミと、飲ませていないネズミで、脳にβアミロイドを注入して認知力と記憶力を調べた。

 プールに入れて足がつく場所を探させると、薬を飲んでいないネズミは足場をあちこち探し回ったのに対し、4週間前から高血圧薬を飲ませていたネズミは、足場のある水域を中心に探すなど認知機能が高かった。足場発見までの時間も1回目は約50秒で大差なかったが、5回目には約35秒と約15秒で記憶力に差が見られた。

 βアミロイドは血管をうまく広がらなくさせる作用が知られる。その結果、神経活動に見合う血液が供給されず、認知機能などが低下するとみられる。今回の実験では薬の効果で血管が回復し、記憶に深くかかわる神経活動も増強されたと考えられるという。

 高脂血症薬では、いったん覚えた水飲み場の場所を1日たっても覚えているかをマウスで実験。薬の一つであるフルバスタチンを飲ませたマウスは、薬を飲んでいないマウスの3分の1ほどの時間で水飲み場を見つけた。

 成果は6月の国際高血圧学会と日本抗加齢医学会で発表する。(小西宏)

[朝日新聞 2008年05月26日]
http://www.asahi.com/health/news/TKY200805250195.html

肥満治療期待 たんぱく質発見=東京大学

2008年05月26日 | 遺伝子組替マウス
体の中の脂肪の分解にかかわるたんぱく質を東京大学の研究グループが見つけ、肥満の治療薬の開発につながる成果として期待されています。

研究を行ったのは、東京大学循環器内科の永井良三教授たちのグループです。研究グループは、筋肉の中に多く含まれる「KLF5」というたんぱく質に注目し、遺伝子を操作してこのたんぱく質の量を半分に減らしたマウスを作りました。そして、このマウスと通常のマウスに脂肪分を多く含んだ餌を与えて比較しました。その結果、遺伝子操作したマウスは通常のマウスの倍以上の餌を毎日食べていたにもかかわらず、4か月後の体重はおよそ10%少なくなっていたということです。また、脂肪を蓄える細胞の大きさがおよそ4分の1程度に小さくなっていました。研究グループは、このたんぱく質は脂肪の分解が進むのを防ぐ働きをしているため、体の中の量を減らすと分解が活発になるのではないかとしています。研究を行った永井教授は「このたんぱく質の働きを調節すれば、たくさん食べても太りにくくする肥満治療薬の開発が可能になると思う」と話しています。この成果は、アメリカの科学雑誌「ネーチャー・メディシン」の電子版で発表されます。

[NHKニュース 2008年05月26日]
http://www3.nhk.or.jp/news/k10014817541000.html#



【メタボ治療に朗報、新たんぱく質発見…筋肉のエネルギー消費調節=東京大学】

 筋肉でのエネルギー消費量を調節するたんぱく質を、東京大の永井良三教授らのグループが突き止めた。

 肥満やメタボリックシンドロームの治療薬開発に役立つと期待される。科学誌ネイチャー・メディシン(電子版)に発表した。

 研究グループは、KLF5と呼ばれるたんぱく質が通常の半分しかないマウスを作製。高脂肪食を与えたところ、基礎代謝量が上がっており、通常のマウスと比べて食べる量は2倍でも、体重増加は少なく、脂肪肝にもなりにくくなった。

 詳しい機構を調べたところ、KLF5は通常、SUMOというたんぱく質とくっついて脂肪を燃やす遺伝子の働きを抑えていた。また、PPARγという別のたんぱく質につくと、逆に脂肪を燃やす遺伝子の働きを促すことが分かった。

 PPARγを活性化させる物質は、高脂血症や肥満の治療薬として米国で臨床試験に入っている。永井教授は「詳しい機構が分かったことで、効率の良い、副作用が少ない薬の開発につながる」と話している。

[読売新聞 2008年05月27日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080527-OYT1T00040.htm