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医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
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遺伝子ない異常タンパク チーターでも伝播を確認=信州大学、麻布大学

2008年05月10日 | 生きもの色々
 BSE(牛海綿状脳症、狂牛病)の原因になるタンパク質性の感染因子「プリオン」と同様に、遺伝子を持たない異常タンパク「アミロイド」が、ネコ科の哺乳(ほにゅう)動物のチーターで伝播(でんぱ)し病気を引き起こしている可能性が高いことを、信大大学院(松本市)の樋口京一・加齢適応医科学系教授(病態遺伝学)と麻布大のグループが突き止めたことが、9日までに明らかになった。伝播するアミロイドは、これまで同教授らがマウスなどの小動物では確認していたが、「より人に近い大型動物では世界初」(池田修一・信大医学部教授)とされ、人レベルでの追究が大きな課題になってきた。

 野生や飼育されているチーーターは近年、肝臓、腎臓、腸など、脳を除くほぼ全身の臓器にアミロイドが沈着して死ぬケースが目立ち、研究者らの間で絶滅を危惧(きぐ)する声が上がっている。

 樋口教授らは、厚生労働省研究班の一環として、アミロイドによる疾患「アミロイドーシス」で死んだチーターのふんの中から、AAという名前で呼ばれるアミロイドを採取。マウスの血液中に少量注射したところ、AAアミロイドは伝播して“増殖”した。

 AAは、ふだんはSAAといわれるタンパク質として血液中に少量存在。炎症が起きると値が上昇する。AAアミロイドは、SAAの構造が変化してアミロイド化したもので、関節リウマチ、地中海熱、ハンセン病などの患者の一部に沈着する。ただ、AAアミロイドによる伝播が起きたのは、あらかじめ人工的に炎症を起こして通常よりSAAの血中濃度を高めておいたグループのみだった。

 樋口教授は「(空気感染ではなく)チーターがふんや尿をなめたり、お互いの体をなめ合ったりする中で伝播するのだろう」と指摘している。

 アミロイドーシスに詳しい池田修一教授の話 このような現象が、人の慢性炎症に伴うアミロイドーシス発症にかかわっている可能性があり、今後の医学研究の大きな指針になりそうだ。

[信州毎日新聞 / 2008年05月10日]
http://www.shinmai.co.jp/news/20080510/TE080509LSI090001000022.htm