ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

遺伝子なしiPS細胞、化学物質で代用…安全性向上に期待=米スクリプス研究所

2008年05月12日 | 再生医療
 さまざまな細胞に変化できる新型万能細胞(iPS細胞)は、これまで3~4個の遺伝子を体細胞に導入する必要があったが、2個の遺伝子と化学物質を体細胞に加えることでも作製できることが、米スクリプス研究所のシェン・ディン准教授らの研究でわかった。

 遺伝子を使わない安全性の高いiPS細胞を作る技術の開発に道を開く成果だ。京都市で始まった国際シンポジウムで11日、発表した。

 iPS細胞を世界で初めて開発した山中伸弥・京都大学教授は当初、「Oct3/4」「Sox2」「Klf4」「c―Myc」とよばれる4遺伝子を用いた。さらに昨年、がん遺伝子である「c―Myc」を使わない3遺伝子でもiPS細胞ができることを示している。

 ディン准教授は、同研究所が持つ数万種類の化学物質の中から、体細胞にiPS細胞のような万能性を持たせることができる物質を探した。その結果、「Oct3/4」「Klf4」の2遺伝子と化学物質の組み合わせで、マウスのiPS細胞を作ることができた。作製に成功する割合も、4遺伝子を使う場合よりも高かったという。

 ディン准教授は発表後、読売新聞の取材に対し、これ以外の組み合わせでもマウスや人のiPS細胞作製に成功していることを明らかにした。これまで必要と考えられてきた「Oct3/4」と「Sox2」も必須ではなく、「近い将来、遺伝子を使わず化学物質だけでiPS細胞を作ることができるだろう」と語った。

[読売新聞 / 2008年05月12日]
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20080512-OYT8T00216.htm

ヒツジの体内でサルの細胞作製、移植用臓器「工場」へ一歩

2008年05月12日 | 再生医療
 ヒツジの体内でサルの組織を作り、長期間生着させることに、自治医科大の花園豊教授(再生医学)らのチームが成功した。

 移植医療用の臓器や組織を家畜の体内で作る「動物工場」の実現に近づく成果で、米医学誌に発表した。

 研究チームは、母ヒツジのおなかにいる赤ちゃんに、さまざまな臓器・組織の細胞に変化できるサルの胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を、複数の個所へ注入。生まれた子ヒツジを調べたところ、最大で直径20~30センチの組織ができており、サルの神経細胞や軟骨、肝細胞に似た細胞などが含まれていた。

 通常、細胞や組織を異種の動物に移植すると激しい拒絶反応が起こる。研究チームは、免疫機能が未発達な赤ちゃんのヒツジを選んだことで問題を克服した。混合動物(キメラ)を免疫抑制剤を使わず、異種の大型動物間で作ったのは世界で初めて。サルの組織は1年以上も生着しているという。

 ES細胞や新型万能細胞(iPS細胞)は、再生医療の切り札とされている。しかし、現在の技術では、肝臓や膵臓(すいぞう)の細胞を効率良く作り出したり、臓器のような立体構造を作るのは難しい。このため、人のES細胞やiPS細胞を使って、ヒツジやブタなどの体内で人の臓器・組織を作れないか研究が進められている。

 花園教授は「異種の動物間で病気の感染が起こらないようにするのが最大の課題。iPS細胞でも研究を進めたい」と話している。

[読売新聞 / 2008年05月12日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080512-OYT1T00400.htm

炎症性腸疾患の仕組み解明 、根本的治療の可能性=北海道大学

2008年05月12日 | 免疫
 北海道大遺伝子病制御研究所の西村孝司教授(54)らの研究チームは12日、厚生労働省が難病指定する炎症性腸疾患を引き起こす原因が、体内にあるリンパ球の一種「CD8T細胞」の異常増殖により生み出される物質だとマウス実験で突き止め、疾患発生の仕組みも解明したと発表した。

 同疾患はクローン病や潰瘍性大腸炎などに代表され、患者は全国に約10万人いるとされるが、これまで原因は解明されていなかった。研究グループは「根本的な治療薬の開発につながることが期待できる」としている。

 発表によると、CD8T細胞はもともと体内にあるが、大腸内で何らかの理由で異常増殖すると「インターロイキン17」という物質を生み出し、この物質が炎症を引き起こすことが分かった。

 腸などの消化管で生み出されている「インターロイキン6」はCD8T細胞増殖を手伝う物質だが、この物質に対する抗体をマウスに投与することにより、CD8T細胞の異常増殖が抑えられ、マウスの大腸内の炎症がほぼ無くなったことも確認されたという。

[共同通信47NEWS / 2008年05月12日]
http://www.47news.jp/CN/200805/CN2008051201000723.html