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ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

物体の動きの「速い」「遅い」、脳の別領域で処理=理化学研究所

2007年10月15日 | 心のしくみ
 目に映る物体のゆっくりした動きと素早い動きを区別するため、人間の脳が、視覚情報に含まれる速い変化と遅い変化をそれぞれ別の領域で処理していることを、理化学研究所のチームが突き止めた。自動車運転中に危険を察知したり、飛んでくるボールを避けたりできる人間の高度な危険回避能力の元になるメカニズムという。

 英科学誌ネイチャー・ニューロサイエンス(電子版)に発表する。

 人間の脳は、左右の目でとらえた画像など異なる視覚情報を神経細胞が集まる「大脳皮質」で処理し、区別している。ただ、物体の動きの速さを判別する仕組みはこれまで分からなかった。

 研究チームは、脳の活動を外から調べる機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)を改良し、大脳皮質の様子を細かく観察できるようにした。白黒の模様が高速と低速の2種類の速さで変化する実験用画像を被験者に見せて、脳の中の活発な部分を詳しく調べた。

[日本経済新聞 NIKKEI NET / 2007年10月15日]
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20071015AT1G1500E15102007.html

理化学研究所 プレスリリース
「速い」、「遅い」変化を処理する機能構造をヒト第一次視覚野で発見
- 動きのある画像を知覚するために重要な皮質機能構造をfMRIで解明 -
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2007/071015/index.html

http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2007/071015/detail.html

(図:今回の研究手法で用いた最適化(第一次視覚野をこのような撮像スライスで処理し、機能構造を見つけ出した)

タミフルの脳への興奮作用、ラットで実証 米の邦人教授=ワシントン大学

2007年09月29日 | 心のしくみ
 インフルエンザ治療薬タミフルに脳細胞を興奮させる作用があることを、米ワシントン大学(ミズーリ州)の和泉幸俊教授(精神医学)らがラットを使った実験で初めて明らかにした。内容は10月9日発行の医学専門誌「ニューロサイエンス・レターズ」に掲載される。

 タミフル服用と異常行動の関係については、タミフルを飲んだ10代の子が自宅マンションから飛び降りて死亡するなどの問題が相次いだ。

 和泉教授らは、ラットの脳から取り出した神経細胞を、タミフルと、タミフルが体の中で分解された時にできる薬効成分のOCBという化学物質の水溶液にそれぞれ浸した。すると、どちらも約10分後に神経細胞の活動が過剰に盛んになった。各薬物を洗い流した後も、40分以上神経細胞の興奮は続いた。タミフルそのものよりも、OCBの方が約30倍も作用は強かった。人間で未成年に異常行動が相次いでいるため、今回は思春期前の子どもに相当する生後1カ月の幼いラットの神経細胞を使った。

 また、エフェドリンという風邪薬に含まれる成分や、アルコールを、タミフルと同時に幼いラットに摂取させると神経興奮作用が強まることもわかった。

 脳には、血中の物質を脳内に通すかどうかを選別する血液脳関門という脳を守る特別な機能があるが、エフェドリンやアルコールは、血液脳関門のガードを緩めることがわかっている。

 和泉教授は、思春期前の子では血液脳関門の機能が未熟であることや、ガードを緩める作用があるものと一緒に飲むことで、タミフルが関門をすり抜けて脳に到達し、神経細胞に作用するのではないか、と推測している。

 タミフル輸入販売元の中外製薬広報IR部の話 現在、厚労省の指示に従いながら、タミフルや代謝産物が血液脳関門を通るかどうかなどの基礎研究を進めているところだ。

[朝日新聞 / 2007年09月29日]
http://www.asahi.com/science/update/0929/TKY200709290068.html

「ネコのおしっこ」か「バニラの香り」か? においの感じ方は遺伝子の違いが決定=ロックフェラー大学

2007年09月18日 | 心のしくみ
【9月18日 パリ/フランス発=AFP】同じ「におい」でも人によっては感じ方が違うのは、その人が持つ1つの遺伝子の違いによる可能性が高いという研究報告が、16日発行の英科学誌「ネイチャー(Nature)」で発表された。

 ヒトの嗅覚と味覚は極めて主観的なものであることは知られている。ある人が素晴らしい匂いだと感じる香水でも、別の人にとっては不快だし、ある人が究極の美酒と思うワインも、別の人にとっては単なる安酒に感じられる。さらに、そのどちらとも感じない人もいる。なぜ人によってにおいや味に対する感じ方が違うのかは、これまで解明されていなかったが、このほどニューヨークのロックフェラー大学(Rockefeller University)のLeslie Vosshall氏が行った実験により、この謎を解く鍵の1つが提供された。

 実験では、被験者に「アンドロステノン(androstenone)」など、数十種類の臭気の「強さ」と「不快度」を判断してもらった。アンドロステノンは、男性の尿や汗に含まれる臭気の原因物質。8割の被験者はアンドロステノンを「古い尿のようなにおい」だと評価したが、残りの2割は同じにおいを「バニラかハチミツのようで心地よいにおいだ」と評価した。

 一方、ノースカロライナ州のデューク大学(Duke University)で松波宏明(Hiroaki Matsunami)氏が率いる研究チームが行った実験により、アンドロステノンにより「OR7D4」と呼ばれる嗅覚受容体遺伝子の1つが作動することが分かった。ヒトの嗅覚受容体遺伝子は数百種類あるが、鼻腔の神経細胞は一度に1個の遺伝子しか作動できない。

 そこで2つの研究チームは共同研究を行い、互いの実験で入手した被験者のDNAサンプルを用いて「OR7D4」を調査した。その結果、一部の被験者の中で、「OR7D4」は一塩基多型と呼ばれるわずかな突然変異を起こし、基本的なDNAのブロックの一部が変化していたことが判明した。

 このDNA分析結果を、実験結果と対照してみると、アンドロステノンを「ネコの古いおしっこのようだ」と感じたグループと「バニラのようだ」と感じたグループの区分と、「OR7D4」遺伝子が従来どおりのグループと変化したグループとの区分とが、一致していることが確認されたという。

 これを受けて共同研究の総責任者のアンドレアス・ケラー(Andreas Keller)氏は、「同一の臭気が人によって感じ方が異なるのは、嗅覚受容遺伝子OR7D4の微妙な違いによって決定されると言える」と説明している。(c)AFP

[AFP BB-News /2007年09月18日]
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2284578/2153303

鳥のさえずり、学習制御 脳内の特有物質を発見=理化学研究所

2007年09月17日 | 心のしくみ
 親鳥の鳴き声をまねて多彩なさえずりを身につける鳥は、脳に特有の物質が存在していることを、理化学研究所脳科学総合研究センターの生物言語研究チームが突き止めた。さえずりの学習能力を遺伝子レベルで解明する成果で、日本神経科学学会(今月10~12日)で発表した。

 鳥類には、生まれながらに持っている鳴き声しか出せない種類と、親から学び、成長するにつれて、さまざまな歌声を出せるようになる種類がある。両グループの脳機能の違いは、詳しく分かっていなかった。

 岡ノ谷一夫チームリーダーと松永英治研究員は、歌声の学習能力があるジュウシマツとセキセイインコの大脳を分析。学習領域の遺伝子の働きを調べた結果、アンドロジェンという性ホルモンの受容体と、細胞接着分子のカドヘリンが作られていることが分かった。学習能力がないウズラやハトでは、これらの物質は検出されなかった。

 鳥のさえずりは、雌を引き寄せる性行動の一種。性ホルモンが関係しているのはそのためとみられ、カドヘリンは脳の神経回路をつなぐ役割を果たしているらしい。

 岡ノ谷リーダーは「鳥が歌声を学ぶ脳の仕組みは、人間が言葉を学ぶ仕組みとよく似ている。人間がどのように言語を獲得したのかを解明する糸口になる」と話している。(長内洋介)

[産経新聞 / 2007年09月17日]
http://www.sankei.co.jp/culture/kagaku/070917/kgk070917000.htm

食べ物のにおい認識、カギ握る細胞を解明=東京大学

2007年09月06日 | 心のしくみ
 脳の中には、いくつかの特徴的なにおいの組み合わせを認識する神経細胞があることを、森憲作・東京大教授らのグループが解明し、米専門誌に発表した。においを識別する仕組みの解明につながりそうだ。

 一つの食べ物からは100種以上のにおい分子が出ており、それらは鼻の奥でばらばらに受け止められる。だが、その情報が脳で統合され、においとして感じる仕組みは解明されていない。

 食品業界などは、食べ物のにおいを分子構造と主観的な特徴から14のカテゴリーに分け、個々の食べ物のにおいは、その組み合わせで表現できるとしてきた。例えば、リンゴは「青葉のようなカテゴリー」と「フルーティーなカテゴリー」の組み合わせだ。

 グループの大学院生、吉田郁恵さんらは、嗅覚(きゅうかく)と関係する脳の嗅皮質にある神経細胞とこのカテゴリーの関係を、ラットで調べた。その結果、さまざまなにおいをかがせた時、個々の細胞は、一つあるいは複数のカテゴリーの組み合わせに対して、特異的に活動することがわかった。

 食べ物のにおいは、情報がさらに脳の別の場所に送られて識別されるが、第1段階の情報はこのようなカテゴリーの組み合わせとして統合されているらしい。

[朝日新聞 / 2007年09月04日]
http://www.asahi.com/science/update/0904/TKY200709040414.html

バイアグラに恋愛感情を高める働き?=ウィスコンシン大学マディソン校(米国)

2007年08月24日 | 心のしくみ
ワシントン──男性の勃起(ぼっき)不全治療薬「バイアグラ」に、男性の恋愛感情を高める可能性があると、米ウィスコンシン大学マディソン校の研究チームが23日、米生理学会誌に発表した。バイアグラを投与したラットで、恋愛感情に関連するホルモン「オキシトシン」の増加が認められたという。


社会行動を調節するホルモンとして知られる「オキシトシン」には、養育や出産のほか、性的な喜びに関連するとされている。


ウィスコンシン大学のメイヤー・ジャクソン生理学教授が率いる研究チームは、バイアグラの主成分クエン酸シルデナフィルをラットに投与。その結果、オキシトシンのホルモン・レベルが上がったという。


ジャクソン教授は、「バイアグラのような薬には、勃起不全に効く以上の作用があるかもしれない」と話し、「この論文を読んだ人々が、私たちの研究をさらに発展させて、他の動物や人間でも確認してもらいたい」と述べている。

[CNN/ロイター / 2007年08月24日]
http://www.cnn.co.jp/science/CNN200708240023.html

プロ棋士の「ひらめき」を共同研究=理化学研究所、富士通

2007年08月03日 | 心のしくみ
 理化学研究所(野依良治理事長)と富士通は3日、プロ棋士の「ひらめき」を脳科学で解明する共同研究を始めると発表した。日本将棋連盟が協力し、2年かけてプロ、アマ20人の脳を分析する。同連盟の米長邦雄会長は「タイトル保持者には全員、実験に協力してもらいたい」と意欲をみせている。

 将棋の対局では、棋士は最もいい指し手を直感的に選んでいるとされる。しかしそれらは豊富な経験に裏付けられており、単純な「勘」でもない。

 人間の脳で思考をつかさどるのは大脳だが、こうした「直感的思考」には、小脳が重要な役割を果たしているのではないかと言われている。理研は今回、その仮説の検証を目指す。

 計画では、プロ棋士10人とアマ選手10人が被験者として協力。将棋に関する課題を解いている時の脳はどの部分が活発に働いているか、理研の機能的MRI(磁気共鳴画像化装置)で調べる。脳波も測定し、時間的な変化を分析する。基礎データがそろえば、対局中のプロ棋士の脳の働きを観察する実験も試みる。

 富士通は成果を人工知能開発に応用することを狙っており「成功すれば、より人間らしいコンピューターの実現が近づく」(秋草直之会長)と話している。【元村有希子】

[毎日新聞 / 2007年08月03日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20070804k0000m040058000c.html

理化学研究所 プレスリリース (2007年08月03日)
 理研-富士通が脳機能活動に関する共同研究プロジェクトを開始
 - 将棋における直感思考の解明を目指す新たな試み -
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2007/070803/index.html

富士通プレスリリース
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2007/08/3.html

「見られていると親切に」、ヒトと動物に共通パターン=マックスプランク研究所、エルフルト大学(ドイツ)

2007年07月30日 | 心のしくみ
【7月30日 AFP,ワシントンD.C./米国】ヒトも動物も、他者から見られていると分かると好意的な態度を示す。そんな研究結果が26日、米国の科学誌「サイエンス(Science)」に発表された。

「ヒトも動物も、自己の評判がかかっている場合には、利己的な行動を改め他者に尽くす行動をとるようになる。後者の態度のみが社会的に報いられることを知っているからだ」と記事は主張する。 

 コンピュータのモニター上に、目のような形をした2つのサインを表示するだけで、コンピュータを扱っている人間の行動は改善されるという。

 似た例としては、カフェテリアに置かれた募金箱に両目の図柄が描かれていると、花の図柄が描かれている場合に比べて、募金の額は格段に増えるという。

 研究チームを率いるドイツのマックスプランク進化生物学研究所(Max-Planck Institute for Evolutionary Biology)のManfred Milinski氏と、エルフルト大学(The University of Erfurt)のBettina Rockenbach氏は、他者の目から見られていると察知すると行動を改めるようにヒトの脳が「プログラム」されていることを突き止めたという。

 ヒトに限らず一部の鳥類や魚類も、見られていると分かると行動を変えるという。

 ベラ科の掃除魚は、大型魚の体や口の中をきれいにすることで知られているが、掃除中に次の「顧客」に見られていると丁寧に掃除をするが、そうでない場合には、むしろ大型魚の皮膚を食いちぎるようなやりかたをするという。(c)AFP

[AFP,BB-News 2007年07月30日]
http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2260259/1916281

「プラセボ効果」のメカニズムが明らかに=ミシガン大学(米国)

2007年07月26日 | 心のしくみ
 「プラセボ(偽薬)効果」を引き起こす脳の領域が米ミシガン大学(ミシガン州アナーバー)のDavid J. Scott,氏らの研究によって明らかにされ、医学誌「Neuron」7月19日号で報告された。プラセボ効果とは、患者自身効果があると思い込むことにより、偽薬を投与しても実際に効果が認められる現象。
 研究グループは、報酬予測に役割を果たすことが知られている脳領域である側座核(NAC)に着目。被験者には、試験のため新しい鎮痛薬またはプラセボのいずれかを投与すると伝え、全員にプラセボ(生理食塩水)を注射した。被験者はこの「薬」の鎮痛効果に対する自身の期待度を評価し、その後、「あごの筋肉に生理食塩水を注射する」という中程度の痛み課題を与えられ、「薬」の有無による痛みの緩和のレベルについても評価した。

 第一の実験では、PET(ポジトロンCT)を用いてNACからのドパミン(脳の報酬反応を誘発する物質)の分泌量を測定。その結果、薬剤の鎮痛効果に対する期待が大きいほどドパミン分泌も多いことが判明。さらに、「薬」による痛みの緩和を高く評価した人ほど、プラセボ投与時のNACの活性が大きかった。

 第二の実験では、機能的磁気共鳴画像(fMRI)による脳スキャンの間に、被験者にさまざまな額の金銭的報酬を期待させた。このときのNAC活性が大きかった人ほど、プラセボ薬の有効性についても高い期待を示していたことがわかった。

 この知見は、プラセボ効果が生じるにはNAC系が活性化される必要があることを裏付けるものだと著者らは述べている。将来、さまざまな疾患の治療法開発にこの情報が役立つとも考えられるという。

原文:
Scientists Unlock Secrets of the 'Placebo Effect'
http://www.healthday.com/Article.asp?AID=606504
[2007年7月19日/HealthDayNews]

[NIKKEI NET いきいき健康 / 2007年07月26日]
http://health.nikkei.co.jp/hsn/hl.cfm?i=20070726hk000hk

頭の中身も整理が必要?=大事な記憶のために物忘れ-脳科学実験で判明=スタンフォード大学

2007年06月04日 | 心のしくみ
 人間の脳は大事な記憶をすぐ思い出せるようにするため、関連する相対的に不必要な記憶を忘れ、脳の活動を効率化している可能性があることが分かった。米スタンフォード大の研究チームが4日、20人を対象とする実験結果を米科学誌ネイチャー・ニューロサイエンスの電子版に発表した。物忘れには悪いイメージがあるが、頭の中身も整理が必要と言えそうだ。
 実験の主な段取りはまず、ATTIC(屋根裏)というキーワードでDUST(ちり)やJUNK(くず)などの関連する単語6つと、MOVIE(映画)というキーワードとそれに関連する6単語を覚える。
 この後、(1)ATTICとDの頭文字を見て、DUSTを思い出すことを繰り返し、かかった時間を毎回記録する(2)ATTICと関連する6単語の頭文字を見て、それぞれの単語を思い出せるかテストし、(1)の作業を行わなかったMOVIEと関連6単語のテスト結果と比較する。
 DUSTは作業を繰り返すにつれ、思い出すのにかかる時間が短くなった。意外なことに、JUNKなどの残り5単語については、(1)の作業を行わなかったMOVIEと関連6単語より、忘れてしまう確率が高かった。
 実験中の被験者の脳を機能的磁気共鳴画像診断装置(fMRI)で調べると、DUSTを思い出す回数が増えるとともに、脳の前部帯状皮質や前頭前野の一部の血流が少なくなり、効率的に活動していることが分かった。

[時事ドットコム / 2007年06月04日]
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2007060400014

寝た方が覚える 単語テストで実験=ハーバード大学

2007年05月07日 | 心のしくみ
 記憶は睡眠によって補強されることを米ハーバード大のチームが実験で確かめ、米神経学会の年次総会で発表する。徹夜でテストに臨むより、勉強した後に眠った方がテストの成績はよくなるかも――。

 18~30歳の健康な男女48人に、20ペアの単語を記憶してもらい、12時間後にペアをどれだけ覚えていられたか調べた。

 朝9時に記憶後ずっと起きたままでいて夜9時にテストする「覚醒(かくせい)組」と、夜9時に記憶後眠って朝9時にテストをする「睡眠組」に分けた。さらにそれぞれの組の半数の人には記憶後に、片方だけがテスト対象とは違う20ペアの単語を見せて、記憶を妨害した。

 妨害のない場合で、睡眠組の成績は覚醒組より12%ほどよかった。妨害した場合では、睡眠組の成績は覚醒組を44%も上回っていたという。

 同大のジェフリー・エレンボーゲン博士は「睡眠障害があると、認知症の記憶障害などを悪化させる恐れがある」と指摘している。

[朝日新聞 / 2007年05月07日]
http://www.asahi.com/science/update/0501/TKY200705010312.html

脳内メカニズム解明 写真見て「痛い」=群馬大学、岡崎・生理学研究所

2007年05月01日 | 心のしくみ
 肉体的な痛みを連想させる写真を見ると、実際には痛くなくても脳は「痛い」と感じる――。群馬大学大学院医学系研究科の斎藤繁教授らが、人が痛みを感じるときに特徴的な脳の活動を発見し、米国の脳科学専門誌に発表した。味覚など他の感覚と比べて、痛みには感情の動きが大きく関与しているためらしい。

 男子学生10人に、注射針が刺さった腕の写真を5秒間見せ、「痛み」を想像してもらった。この時、機能的MRI(fMRI)と呼ばれる装置で脳の活動を調べると、10人全員で、本当に痛みがあったときに興奮する側頭葉の一部などが興奮していた。この部分は情動をつかさどっているとされる。

 一方、花畑や湖の「平和的」な風景写真を見せた場合は、視覚野しか反応がなかった。

 傷が治った後でも痛みを訴え続けたり、心理的に強いショックを受けて「心が痛い」と訴えたりする患者がいる。しかし検査で異常が見つからず、痛み止めの薬なども効かないため、治療が難しい場合が少なくない。

 共同研究者の一人、自然科学研究機構・生理学研究所(愛知県)の柿木隆介教授らは痛みには感情の動きが深く関与している可能性を考えており、「今回の結果は、『心の痛み』に対する治療に役立つのではないか」としている。

[朝日新聞 / 2007年05月01日]
http://www.asahi.com/health/news/TKY200705010002.html

脳:明暗の分布で質感 NTT研究所、物の質感とらえる仕組み解明=NTT、マサチューセッツ工科大学

2007年04月19日 | 心のしくみ
 人間が物の質感をとらえる仕組みを、NTTコミュニケーション科学基礎研究所(神奈川県厚木市)と米マサチューセッツ工科大の共同研究チームが明らかにした。脳や網膜は、画像の中で明るい部分と暗い部分がどう分布しているかによって、表面の光沢や明るさ、透明感といった質感を感じているという。この発見を応用すれば、簡単な画像処理で、質感をリアルに表現したり、自在に操ることができるという。18日付の英科学誌ネイチャーで発表した。

 同研究所の本吉勇・研究主任らは、物の表面に凹凸があり、明るさや光沢が異なるさまざまな画像で明暗の分布を調べた。すると、光沢が強く全体に暗い画像では、明暗の分布を示すグラフが明るい側に広がっていることが分かった。逆に分布の広がりが小さい場合には、光沢を感じにくくなる。網膜や脳内の視覚神経組織には、それぞれ明るい点や暗い点に反応する2種類の神経細胞(ニューロン)がある。研究チームは、これらの反応の強さのバランスによって、質感を知覚できるとみている。

 本吉さんは「人間が質感を感じ取る仕組みは、意外に簡単だと分かった。この仕組みを応用すれば、低コストかつ高速で画像や映像の質感を変えられる」と話している。【須田桃子】

[毎日新聞 / 2007年04月19日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20070419ddm002040017000c.html

日本電信電話株式会社 NTT先端技術総合研究所 ニュースリリース
http://www.ntt.co.jp/news/news07/0704/070418a.html

NTT物性科学基礎研究所 元吉勇さんのページ
http://www.brl.ntt.co.jp/people/imotoyoshi/material-j.htm

睡眠薬「マイスリー」に“夢遊病”の副作用 米FDA報告

2007年03月16日 | 心のしくみ
 【ワシントン=渡辺浩生】米国の薬局で最も処方されている睡眠薬「アンビエン」(日本名マイスリー)を服用すると、睡眠中に車を運転しようとしたり、食事をするなど異常な行動をひき起こす危険性があることが、米食品医薬品局(FDA)の報告で分かった。米国では不眠症に悩む人が増加し、睡眠薬はテレビ広告で積極的に宣伝されているが、FDAはアンビエンを含む13種類の睡眠薬について、危険な症例を患者に周知させるよう製薬会社に求めた。

 FDAによると、異常行動は、睡眠時遊行症(夢遊病)の一種とみられ、非常にまれだが、睡眠中に起きあがって車を運転する▽夜中に過食する▽電話をかける▽インターネットで買い物する-などの内容の報告があった。いずれも本人には全く記憶がなかった。

 米紙ニューヨーク・タイムズによると、路上でパジャマ姿のまま逮捕されて初めて目を覚ます「睡眠ドライバー」もいた。飲酒前後に薬を服用すると、異常が発生する確率が高くなるという。

 FDAに報告されたこうした異常行動の多くが、「アンビエン」の服用と関連していることも分かった。この薬は、仏サノフィ・アベンティス社が開発、世界約100カ国で販売され、日本でもアステラス製薬が商品名「マイスリー」で販売している。

 昨年5月には、民主党のパトリック・ケネディ下院議員が運転する車が連邦議会議事堂の外のさくに衝突する事故が発生。本人は「アンビエンの服用後で、記憶がなかった」と訴えたという。

 FDAは今回、同様の異常を懸念し、アンビエンに限定せず、「ルネスタ」(米セプラコール社)など計13種の睡眠薬について、表示や医師による説明を求めた。

 米国では、昨年の睡眠薬の売り上げが2000年に比べ60%も増加。テレビでの処方薬の広告が影響しているとの見方も出ている。医薬品業界は昨年、睡眠薬の宣伝費で6億ドルも投じており、ミネソタ大学のマーク・マホワルド博士は「広告の規模は常軌を逸している」と批判している。

 FDAの報告に対し、仏サノフィ社は、夢遊病の症例は確率が1000人に1人以下のまれな副作用で、表示もしているという声明を発表している。

[産経新聞 Sankei-Web / 2007年03月16日]
http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/070316/usa070316002.htm

Wikipedia「マイスリー」のページ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%BC

認識や愛情行動促す物質を特定、治療へ応用も=金沢大学

2007年02月08日 | 心のしくみ
 相手とのコミュニケーションを取ったり、母親が子どもを守ったりする生き物の「社会行動」に関係するたんぱく質を、東田陽博(はるひろ)・金沢大医学系研究科教授(神経化学)らのグループがマウスの実験で特定した。発達障害の治療に応用できる可能性があるという。7日付で英科学誌ネイチャー電子版に発表する。

 東田教授らは、脳などに多い「CD38」と呼ばれるたんぱく質を作れないマウスが、異常な行動をすることに注目。約30匹で実験を繰り返した結果、記憶能力などは正常にもかかわらず(1)雄が雌を認識する(2)母親マウスが巣から引き離された子どもを巣に戻す――といった行動にかかわる能力が、約9割のマウスで欠けていた。

 さらに、このマウスでは「オキシトシン」と呼ばれるホルモンの脳内濃度が低くなっていた。注射で補充すると行動が正常に戻ったことから、東田教授は「CD38が脳内のオキシトシンの分泌を促し、母親の愛情行動などを支えていることがわかった」としている。

 オキシトシンは、子宮収縮や母乳の分泌などに関係するホルモンとして知られる。最近になって、このホルモンが脳で働くと、「相手への愛情や信頼感が生まれる」可能性が指摘されている。他人とのコミュニケーションがうまく取れない発達障害との関係も研究されている。

[朝日新聞 / 2007年02月08日]
http://www.asahi.com/health/news/TKY200702070403.html

金沢大学Web広報誌
医学系研究科・東田教授 科学誌Natureに論文掲載http://www.kanazawa-u.ac.jp/university/administration/prstrategy/eacanthus/0702/08.html
要約:http://www.kanazawa-u.ac.jp/university/administration/prstrategy/eacanthus/0702/images/08_pdf_01.pdf