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ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

数はこめかみの奥で理解?脳の「専門領域」発見=京都大学 霊長研

2007年01月04日 | 心のしくみ
 人の脳に数を理解する領域があることを、京都大学霊長類研究所の正高信男教授らが突き止め、3日付の米学術誌ブレーン・アンド・ランゲージ電子版に発表した。言葉を扱う脳の領域とは別で、なじみの薄い数字を使い、数字を素早く理解できるようになるほど神経細胞が盛んに活動していることを確認した。数の認識を専門に担う部位を特定したのは初めてという。

 特定した場所は脳の左半球(右利きの場合)の前頭葉で、こめかみの奥。研究成果は、脳の働きで習熟度を確かめる数学の効果的な教育法や、数学が極端に苦手な学習障害の治療法の開発などに役立ちそうだという。

[日本経済新聞 2007年01月04日]
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20070104AT1G0300U03012007.html

【右利きの人の脳、言葉と数 認識は別=京都大霊長類研究所】

 右利きの人は脳の左半球の前頭葉で数を認識しており、言葉をつかさどる言語中枢とは別の領域が担当しているとの研究結果を京都大霊長類研究所(愛知県犬山市)の正高信男教授(認知科学)らがまとめ、米科学誌に三日発表した。

 正高教授らは日本人が日常使う算用数字(アラビア数字)ではなく、なじみの薄いローマ数字で実験した。
 23歳~25歳の大学院生14人に、通常は文字の列としか思えないローマ数字を提示。「CMXCIX」だと「999」を表す。
 次にローマ数字の計算の法則を説明、50問を計算してもらった。「C」「M」などはこの場合、文字ではなく数字であることを明確に認識するよう実験を工夫した。

 脳の血流を機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)で調べると、理解が進むにつれて広範囲で血流が飛躍的に増えた。正答率が8割を超えた段階で左のこめかみ付近の内側に当たる部分だけが増え、ここが数を認識するのに重要な部位と判明した。

 正高教授は「ヒトが言葉を使いだしたのは約十万年前で、それ以前から数を数えていた。歴史が古く、言語中枢と認識する場所が異なるようだ」と話した。
 左利きの人は、認識する領域が人によって異なるため、研究対象にはしていない。

[東京新聞 2007年01月04日]
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20070104/mng_____sya_____004.shtml

京都大学霊長類研究所ホームページ
「数字を理解する脳の領域を解明」正高 信男教授研究グループ

<抗うつ剤>服用24歳以下で自殺行動 米FDAが警告強化

2006年12月14日 | 心のしくみ
 【ワシントン和田浩明】
米食品医薬品局(FDA)は12日、日本でも販売されている「パキシル」(塩酸パロキセチン水和物)などの抗うつ剤すべてで、服用すると自殺のリスクが高まるとの添付警告の対象を、現行の「小児と思春期の患者」から24歳以下に拡大するよう精神薬の諮問委員会に提案した。同委は対象の拡大を妥当と判断した。
 FDAがパキシルやプロザック、ゾロフトなど11種の抗うつ剤に関する372件の治験データ(計約10万人分)を調べたところ、18~24歳の患者で偽薬を服用した場合に比べ、自殺や自殺未遂、自殺願望を持った事例が有意に多かったという。
 米メディアによると、警告の強化は自殺した患者の家族らが求めているが、臨床医などからは「有効な薬の使用に歯止めをかける場合もある」と慎重な対応を求める意見も出ている。パキシル製造元の英グラクソ・スミスクライン社の今年1月の発表では、「世界100カ国以上で使われ、1億人以上の使用実績がある」という。
 FDAは04年、抗うつ剤に「服用開始後の初期に小児や思春期の患者で自殺リスクが高まる」旨の警告の添付を義務付けた。今年5月には抗うつ剤を服用する若い患者に自殺衝動が高まる傾向が見られるとして、医師に対し服用者を慎重に観察するよう警告した。
 ◇添付文書で注意…厚労省
 グラクソ・スミスクライン日本法人によると、パキシルの売上高は昨年国内で約500億円に上り、抗うつ剤の中で国内シェアは最大という。厚生労働省は今年6月、パキシルの添付文書で「若年成人に投与中に自殺行動のリスクが高くなる可能性が報告されているため、注意深く観察する」との注意喚起を行った。今回のFDAの対応については「情報収集し、新たな対応が必要かどうか検討したい」(安全対策課)と話している。

【江口一】
[2006年12月14日/毎日新聞]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061214-00000046-mai-soci

脳の安定した情報処理、周辺細胞が同調活動=京都大学

2006年10月04日 | 心のしくみ
 脳が安定して情報処理をできるのは、ある細胞が死滅しても、周囲の細胞が補って活動する仕組みがあるためであることが、桜井芳雄・京都大大学院教授(神経科学)らのサルを使った実験でわかった。

 損傷を受けた脳の治療や、新たなコンピューター開発にもつながる研究で、4日付の米科学誌「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」電子版に掲載される。

 研究グループは、サルの記憶をつかさどる脳領域に電極を付け、細胞の活動を詳しく見た。その結果、画面に出る四角形の色の違いなどを記憶する際、働く脳細胞に近接した細胞の約8割が、1000分の1秒以内の精度で、ほとんど同時に反応していることがわかった。

 隣り合う脳細胞の信号を分離して検出し、細胞ごとの働きを解明することはこれまで技術的に不可能だったが、研究グループは信号の来る方向を正確に割り出す手法を確立。個々の細胞の信号検出に世界で初めて成功した。

[読売新聞 / 2006年10月04日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20061004i302.htm

[The Journal of Neuroscience]
"Dynamic Synchrony of Firing in the Monkey Prefrontal Cortex during Working-Memory Tasks"
http://www.jneurosci.org/cgi/content/abstract/26/40/10141

「脳内マリフアナ」、小脳での運動学習能力に影響=大阪大学

2006年08月24日 | 心のしくみ
 脳内ではマリフアナに似た「脳内マリフアナ」と呼ばれる物質が作られているが、この物質が小脳での運動学習能力に影響していることを大阪大の狩野方伸教授(神経生理学)らのグループが解明した。狩野さんは「運動音痴に悩む人や運動神経に優れた選手など、運動の学習能力に差が生まれる仕組みの解明につながる可能性がある」としている。米科学誌「Journal of Neuroscience」に24日、掲載された。

 脳の神経細胞は、シナプスと呼ばれる接続部分で、グルタミン酸などの物質を受け渡すことで情報を伝えている。狩野さんらは01年、グルタミン酸が出過ぎて情報伝達が過剰になると脳内マリフアナが神経細胞から出され、神経の過剰な興奮を抑えるブレーキ役になっていることを解明した。

 今回は、脳内マリフアナの受容体であるCB1というたんぱく質が、動物の運動を制御する小脳の神経細胞に特に集中していることに着目。CB1を遺伝子操作で働かなくしたマウスで、運動機能の変化を調べた。

 正常なマウスに一定の合図を聴かせた直後に目の周辺に電気ショックを与えると、1週間後には合図を聴いただけでまばたきをする割合が約7割になった。しかし、遺伝子操作のマウスでは3割以下で、実験前とほとんど変化がなかった。

 遺伝子操作したマウスでは脳内マリフアナによる神経伝達の異常が小脳で起きたため、神経反射など新しい運動パターンの学習ができなくなったと考えられるという。

[2006年08月24日/朝日新聞]
http://www.asahi.com/science/news/OSK200608240048.html

Endogenous Cannabinoid Signaling through the CB1 Receptor Is Essential for Cerebellum-Dependent Discrete Motor Learning
J. Neurosci. 2006 26: 8829-8837; doi:10.1523/JNEUROSCI.1236-06.2006
http://www.jneurosci.org/cgi/content/abstract/26/34/8829

マウスの不安行動を制御する大脳内の仕組みの一端を解明=理化学研究所

2006年07月28日 | 心のしくみ
 脳内の情報伝達に重要な役割を果たすセロトニン(5-HT)は、行動の動機付けや快感時に神経細胞から分泌されるドーパミンや、恐れや驚きなど不快時に分泌されるノルアドレナリンと同じ神経伝達物質の一つです。セロトニンの働きが阻害されると、ドーパミンやノルアドレナリンなどによる情報伝達をコントロールすることができず、精神状態が不安定になり、“うつ”などの精神症状や不安行動を引き起こすと考えられています。しかしながら、脳内のどの部位で、どのようにセロトニンが関与することにより、このような症状を引き起こすかは、よく分かっていませんでした。

 国際研究チームでは、不安や“うつ”関連行動に関する脳内での作用メカニズムを明らかにするため、神経細胞から分泌されたセロトニンを、次の神経細胞に伝える役割を果たす10数種のセロトニン受容体のうち、その1つ(5-HT2A)を全身で働かなくしたマウスを作成し、実験を行いました。このマウスに、不安や“うつ”関連行動を客観的に解析する「高架式十字迷路」などの課題を与えたところ、1つのリスク(不安)に対して、1つの選択肢しかない場合には、通常のマウスと違いが現れませんでした。一方、2つ以上の選択肢があった場合、通常のマウスであれば葛藤の上、より低いリスク(不安)を選択しますが、5-HT2A受容体を欠損させたマウスでは、葛藤もせず、高いリスクを高頻度に選択しました。さらに、行動遺伝学技術開発チームが開発した技術を用い、マウスの大脳皮質だけで5-HT2A受容体の機能を回復させたところ、通常のマウスと同じ行動を示すようになりました。これらの結果から、大脳皮質における5-HT2A受容体が、セロトニンの分泌にともなう、葛藤的不安行動に深く関与していることが分かりました。

 セロトニンは、複数の受容体を介して多くの生命現象をコントロールしています。今回、不安行動を制御する仕組みの一端が明らかになったことにより、不安や情動障害などの薬物治療に対して、より有効性の高い方法を確立できる可能性があります。

[2006年07月28日/理化学研究所プレスリリース]
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2006/060728/detail.html

Cortical 5-HT2A Receptor Signaling Modulates Anxiety-Like Behaviors in Mice
Science 28 July 2006:Vol. 313. no. 5786, pp. 536 - 540
DOI: 10.1126/science.1123432
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/313/5786/536

(写真はマウスの行動を解析して不安を評価する時に用いる高架式十字迷路)