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U・ボート/ディレクターズ・カット版(1997年ドイツ映画)

2020年06月03日 | 映画の感想・批評
 感染予防対策を施しながら映画館での上映が再開された。ただ、以前と同じにはいかないだろう。「新しい生活様式」の模索の始まりと云われているが、不安が尽きない日々が続いている。
 「映画は映画館で!」と思うが、まだ、映画館に行っていないので、今回は、私のお気に入りの1本である1981年に製作された「U・ボート」を、監督自らが1997年に1時間以上も追加して再編集した「U・ボート/ディレクターズ・カット版」を取り上げる。参考情報で、1981製作版は、アカデミー賞6部門(監督、撮影、視覚・音響効果、編集、音響、脚色)にノミネートされた。
 物語は、第二次世界大戦下のドイツ軍潜水艦Uボートの艦長と、そのUボートに記者として同乗した若者の視点で、戦場の最前線という極限状態を舞台に、人間が描かれる。出港前日から始まり、いくつかの戦いで沈没寸前になるも、艦員の生命力で奇跡的に復活し、命からがら帰港する。3時間20分の長編だが、閉鎖された空間で敵の駆逐艦からの爆雷の衝撃に耐える迫力の映像と、士気を駆り立てる高揚感ある音楽が全編を通して流れ、あっという間に時間は過ぎる。
 私が気に入っている点は、戦争を舞台にしながらも、反戦メッセージが色濃く込められている点である。勝利を収めた戦いでも、勝者側だけの視点ではない点や、艦長が、上層部(いわゆる本部)には冷ややかで批判的な言葉を艦員に漏らすところや、爆撃が成功した場面でも、艦員らの複雑な表情、人によっては狂気染みた表情が強く印象に残っている。
 更に、衝撃的で本作のポイントとなるのは、ラストシーンである。こんなラストあるのか?と呆気に取られたのを今でも覚えている。ネタバレになるので内容は書かないが、今までの戦闘シーンはこのラストシーンの序章に過ぎないのではないか。この映画を、映画に登場する人物を、そして、「人間」=「人生」を物語っている。
 DVDには特典としてミニメイキングも付いているようです。ガツン!とくる映画を観たい時には、是非、お薦めです。
(kenya)

原題:Das Boot
監督・脚本:ウォルフガング・ペーターゼン
撮影:ヨスト・ヴァカーノ
出演:ユルゲン・プロフノウ、ヘルベルト・グリューネマイヤー、クラウス・ヴェンネマン他


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