乳がん患者のサロン2 - ノエル編

乳がん患者の皆様、このサロンでのびのびと雑談しましょう。くつろぎの場です。

HER2陽性乳癌細胞の創薬標的

2008年09月30日 | 病気・症状
Her2陽性患者は乳がん患者の2割ぐらいといわれており、情報が少なめですよね。ハーセプチンやラパチニブが効かなくなったらどうなるの?という不安もあるし。。。
ひょっとしたら希望の光になるかも??というような記事を発見しました。

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「HER2陽性乳癌細胞の創薬標的としてBrkが有望」

 HER2阻害薬の「ハーセプチン」や「ラパチニブ」の単剤投与に反応するのは、HER2陽性患者の約半数に留まる。また、いったんこれらの薬剤が奏効した患者が、やがて治療に抵抗性を示すことも少なくない。米Cold Spring Harbar Laboratoryの研究者たちは、細胞質チロシンキナーゼのBrkを標的とする治療が、こうした問題を乗り越えるきっかけになる可能性を示した。詳細は、米科学アカデミー紀要(PNAS誌)電子版に2008年8月21日に報告された。

 乳癌患者の約4分の1において、癌細胞に受容体チロシンキナーゼHER2の過剰発現が見られる。HER2は癌細胞の際限ない増殖を容易にするため、陽性患者の予後は悪い。

 研究グループを率いたSenthil Muthuswamy氏らは、HER2に作用する治療薬の効果が限られていることから、HER2以外の分子が単独またはHER2と共謀して「ハーセプチン」「ラパチニブ」の効果を打ち消しているのではないか、と考えた。

 実際に、HER2に増幅が生じている患者のゲノムでは、それ以外の領域にも変異が認められる。それらの中に共犯者がいると予想したMuthuswamy氏らが注目したのがBrkだ。Brkは、多くの癌で過剰発現が認められており、乳癌患者の2/3がBrk陽性との報告もある。

 著者らが、200人を越える乳癌患者由来の標本を対象にこれらの遺伝子のコピー数を調べたところ、両方の遺伝子に異常な増幅がある標本が数多く見られた。それらはHER2とBrkの両方を過剰に発現していた。

 同じ細胞内でHER2とBrkの産生を誘導すると、BrkがHER2の活性を増強するとともに、HER2を標的とする治療に対する抵抗性も与えることが明らかになった。

 Brkはそれ自身、際限のない増殖を刺激するわけではない、しかし、HER2発現細胞の細胞周期の回転を速めて、増殖を刺激する。癌細胞の増殖は、細胞周期の制御が効かなくなった結果だ。それをBrkがさらに加速していた。この状態をMuthuswamy氏は、HER2は自動車のアクセル、Brkはギヤのようなもの、と説明した。

 同氏らは、Brkの発現がHER2阻害薬の効果を小さくすることも発見した。これは、治療には、HER2を標的とする薬剤に加えてBrkの作用を阻害する薬剤も併用する必要があることを示唆している。

 Brkを標的とする薬剤は安全と考えられる。なぜなら、Brkは正常細胞の増殖に関与せず、正常細胞における発現は非増殖性の細胞に限定されているからだ。従って、その機能を阻害しても好ましくない反応は少ないと考えられる。

 また、Brk阻害薬単独でも、HER2が奏効しない、またはHER2抵抗性となった腫瘍に有効な可能性もある。さらにBrkは、乳癌の診断や予後予測に有用なマーカーになると期待される。
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上記を要約すると、
HER2は癌細胞の増殖を促進する。
HER2過剰発現した患者は、Brkも過剰発現していたことが多かった。
BrkはHER2の活性を増強し、また、HER2を標的とする治療に対する抵抗性も与える。

HER2は自動車のアクセル、Brkはギヤのようなもの。

HER2を標的とする薬剤に加え、Brkの作用を阻害する薬剤も併用する必要があるだろう。
Brkを標的とする薬剤は安全と考えられる。Brkの正常細胞における発現は、非増殖性の細胞に限定されているからだ。(がん細胞は増殖性の細胞)。
従って、その機能を阻害しても好ましくない反応は少ないと考えられる。


私が病院でもらったパンフレットでは、がん細胞に「手」が書かれていていました。
普通のがん細胞には手が2本、her2が過剰発現すると手が6本。手が多いほど、それを使ってエネルギーを取り込む速さが増加し、がん細胞の増殖のスピードが上がる、という説明です。

で、上記の記事を読むと、BrkはHER2活性化をコントロールしているようだから、Brkに注目して薬剤を作ることを示唆、と私は理解しますた。


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なかのひと

This blog “The salon of breast cancer women authored by Noe:l” can be read in Japanese only:-)


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4 コメント

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Unknown (たかし)
2008-10-02 01:37:32
はじめまして。ラパチニブをぐぐっていたら、たどり着きました。昔良く聞いていた歌手の川村かおりが転移性乳がんらしく、ちょっと情報収集していたのですが、『Her2陽性患者は乳がん患者の2割ぐらい』『HER2阻害薬の「ハーセプチン」や「ラパチニブ」の単剤投与に反応するのは、HER2陽性患者の約半数に留まる。』って、分子標的薬のトラスツズマブやラパチニブだけではまだまだ乳がん殲滅には駄目なんですね~。WIKIPEDIAにはラパチニブはEGFRにも効くとありましたが、こちらは叩く力が弱いんですかね?

あと、Brk阻害剤が有望とありますが、骨格となるリード化合物は見つかってるんでしょうか?まだ5年~10年ぐらいかかりそうな話しですね。

モノクローナル抗体なら簡単に作れるんかな?当方、昔、有機合成をかじっていたので、低分子有機化合物は割合分かるのですが、抗体とかになると、ちょっと門外漢になってしまうので・・・。

ともあれ、武器が増えるといいですね。
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時代は分子標的薬へ (ノエル)
2008-10-02 12:33:09
たかしさん、コメントありがとうございます。

ASCOでは、ハーセプチン単独の奏功率は約3割、パクリタキセルと併用で約6割の報告があります。

ラパチニブは日本ではまだ未承認薬です。国内臨床試験の中間報告など、私は見つけられずにいます。

ラパチニブの海外の文献については、いくつか臨床試験の報告を見かけましたが、n数が少なく結果もバラバラなような気がし、ここにはアップしませんでした。自分が見た文献では、ラパチニブの奏功率は、ハーセプチンと同等かそれよりちょっと上回る程度でしたけど。
ASCOにでも報告されたら、その時はここにアップする予定です。

この記事では、Brk阻害剤のリード化合物については触れていません。「有望」どまりだから、まだまだ気の長い話になるのかもしれませんね。

私の主治医は新薬について、10年間ぐらい追跡調査でもしないと、本当のところの副作用はわからないと言っています。ハーセプチンですら、登場してまだ数年です。

モノクローナル抗体は、殺細胞性の抗がん剤より副作用が軽いというのがメリットですから、今後も開発は進むでしょうね。時代はモノからマルチへ向いているようです。

*参考*
「よっしぃの独り言-分子標的薬とは?」
http://blog.m3.com/yosshi/20071002/3
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Unknown (たかし)
2008-10-03 01:58:34
返信ありがとうございます。

>モノクローナル抗体は、殺細胞性の抗がん剤より副作用が軽いというのがメリットですから、
>今後も開発は進むでしょうね。時代はモノからマルチへ向いているようです。

昔、農学系学部で有機合成をしていた身としては(病気で大学院途中にドロップアウトしましたが、ちょっとだけ、ビールのキリンが特許を持ってるKRN5500「スピカマイシン」(大腸がんに有効と思われる抗がん剤候補)の全合成やってました。慶応大学の千田先生という人に華麗に先を越されましたがね~(苦笑))、肩身が狭いですね。iPS細胞やら抗体医薬品やら、時代はそちらに流れているようで・・・。

大学時代に隣の席のポスドクの先輩がパクリタキセルの全合成研究してましたが、最近は全合成は、はやらないのかな~。(笑)昔は、パクリタキセルはバッカチンとかいうイチイの木から取れる中間物質から半合成していたと記憶してますが、今調べると、イチイの細胞培養で作っているそうで。(驚!)

メラミンとかメタミドホスとかアフラトキシンとか、『化学物質』はなんだか批判の槍玉に上がってますもんね。

そういう世相を反映してか、こんな本も出ているようで。

「化学物質はなぜ嫌われるのか」
http://blog.livedoor.jp/route408/archives/51228612.html

今の所は、がん患者一番期待していると思われる、血管新生阻害抗体薬ベバシズマブ(アバスチン(R))の登場待ちという所ですかね。
日本は認可が遅いですが、イレッサの間質性肺炎のような事例もあるから、一概になんとも言えませんが・・・。

そういや~、川村かおりをワイドショーで久しぶりに見たけど、髪抜けてなかったな~、パクリタキセル飲んでないのかな~?
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たかしさん (ノエル)
2008-10-03 13:56:38
新薬の開発って、技術・経済力はもちろん、現代なら環境に対する先見の明もないと会社が傾いちゃいますよね。生命倫理のワクに縛られなければ、苦労してiPS細胞へと研究を進めなくてもよかったかもしれないし(苦笑)。

個人的には、生命倫理への深い配慮は必要だと思っています。が、他方、ある一国の利益のために、研究開発を推進、または阻止しようと、突然、倫理規程みたいなもんをライバル国や会社が主張することもあるんじゃないかと訝しくも思っています。

となると、患者は第一の犠牲者ですが、利権がらみで負けてしまった研究開発に携わった人たちも犠牲者だよなと思うのです。

メラミンなどの事件で、世の中が化学物質に神経質になっていますが、毒の摂取という点では、食品の保存にも少し神経を使ってほしい季節です。夏場より、今頃の方が食中毒に油断する時期だからです。食器をきちんと洗わないとカビが発生し、それこそアフラトキシンができちゃいます。保存食にジャムを作っても、それを保存する瓶のゴムパッキングが汚染されていたら、コワイもんができちゃいますし。

アバスチンは大腸癌で承認済み、乳がんにもちょっとは期待がもてるのかな?
パクリタキセルは静脈投与の薬です、飲み薬ではありません。投与終了後、半年ぐらいでショートヘアぐらいに髪が伸びる人が多いです。
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