乳がん患者のサロン2 - ノエル編

乳がん患者の皆様、このサロンでのびのびと雑談しましょう。くつろぎの場です。

医師の対応マニュアル

2009年04月15日 | 患者の気持ち
がん告知や緩和ケアについて、医師のアンチョコになりうるマニュアルを発見。患者へ病状を伝える一見本です。

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「緩和ケアに引き継いだ後も元主治医は1日1回患者に会って欲しい」

【泌尿器科学会2008】
 癌を告知する時や、緩和ケアを紹介する際には、具体的にどう伝えればよいのか。緩和ケアにシフトした患者に元主治医はどう対応すべきか。閉塞性腎症への対処法は?──4月25日から開催された第96回日本泌尿器科学会総会のシンポジウム「緩和ケアーの実際」では、緩和ケアにおける患者とのコミュニケーションのあり方について議論された。

 ここでは、シンポジウムで交わされたディスカッションをQ&A方式でまとめた。議論のポイントは、
(1)告知時に気をつけるべき点とは、
(2)緩和ケア科に担当を譲るときどのようなタイミングで相談するか、
(3)引き継ぎの際の留意点は、
(4)その後の元主治医の対応はどうあるべきか──という点だ。

シンポジウム座長
鳶巣賢一氏 静岡県立静岡がんセンター病院長
篠原信雄氏 北海道大学腎泌尿器外科准教授

演者
木澤義之氏 筑波大学人間総合科学研究科講師、緩和医療学会教育委員長
戸谷美紀氏 国立がんセンター中央病院がん看護専門看護師
堀夏樹氏 NTT関東病院緩和ケア科部長、元泌尿器科医
三浦剛史氏 日本医科大学泌尿器科
小串聡子氏 日本医科大泌尿器科

Q 最初に癌と診断したときの告知において気をつける点は?

A
 ・患者に事実を充分に伝えること。最善の場合、最悪の場合など、どのような転帰をたどる可能性があるかを伝えておくことが中でも最も重要である。(木澤氏)

Q 初回治療後の退院時に留意すべき点は?

A
・最初の治療後の退院時で、見かけ上は全部切除した状態だが、将来に再発する可能性がある(あるいは高い)場合、事前に、退院後の検査計画を説明しつつ、再発のリスクが高いこと、その時の徴候、もし再発したときの治療法の概略などを説明している。時には、再発後の治療では根治は望めず、延命治療になることも説明し、経過観察の計画に入る。こういった手順を踏まないと受診しなくなる患者がでてくる可能性がある。(鳶巣氏)

Q 再発の告知時に気をつけるべき点とは?

A
・最初にすべきは「今まであなたはほんとうによく頑張ってきました。私たちも頑張りました」といった“いたわり”、患者、そして医療者がやってきたことは間違いではなかったこと、標準的な治療法に則って治療を行ってきたもので決して間違いではなかったことを確認した上で、お互いもう一踏ん張りしましょう、と今後の方針を伝える。(堀氏)

 ・最初の診断の時よりも再発の告知の方が患者のショックが大きいという調査結果がある。また患者は、「今まで頑張ってきたのにうまくいかなかった」「今までの治療が無駄だった」などと感じていることが多い。患者のやりきれない気持ちを語ってもらう機会を設け、患者が次のステップに進めるよう配慮する。(戸谷氏) 

Q 予後告知はどの段階で行うか?

A
・予後告知については、患者に対する臨床研究の結果が報告されており、これによると再発の時点で予後告知を望む患者(全てを教えて欲しいと望む患者)は4割程度しかいない。全く望まない患者は10~20%、望んだときだけ教えて欲しいという患者が約30%となっている。そのため、患者個々人の意向を聞いて対応すべきだ。ただし、再発の時点で予後告知を希望するかどうかを聞くわけにはいかないので、もっと早い時期から、患者への情報提供の仕方について話し合いをしておく必要がある。(三浦氏)

・再発が確認された時点で、「さまざまな治療を行っていくつもりだが、残念ながら、治る可能性はほとんどない」ということを何とか伝えるようにしている。具体的な生命予後の話には触れないが、この時点で最初の担当医が伝えなければ、緩和ケア医も引き継ぐのが難しくなる。(鳶巣氏) 
Q 緩和ケアの紹介やコンサルテーションをするのはいつか?

A
・治療の中止と同時に緩和ケアを紹介すると、患者は主治医の交代と抗癌剤治療の中止という2つのことを同時に体験することになり、紹介されたくないという気持ちから病院に来なくなってしまう場合がある。緩和ケアを紹介するのは、時期ではなく、苦痛に焦点を当てることが重要だ。望ましい例は「もっと日常生活を活動的にするために痛み、眠れない、吐き気が止まらないというところを診てもらいましょう」という紹介の仕方だ。「末期だから診てもらいましょう」「もうすることはないので診てもらいましょう」という紹介は望ましくない。(木澤氏) 

Q 末期で緩和ケアを紹介する際の主治医の説明とは?

A
・「化学療法をやめてしまう」ではなく、「これ以上化学療法を行うのは、逆にあなたの寿命を縮めます。だから、ここで考え方を変えて、緩和という医療であなたの寿命を延ばしましょう」という説明があるとよい。「もうやることがないから緩和です」というのは最悪である。(堀氏) 

Q 緩和ケアにシフトしつつある患者に対する主治医の対応は?

A
・患者には「治療してもらった」「一緒に頑張った」という気持ちがある。そのため、主治医が顔を見せなくなるのはつらい。1日1回、5分でも顔を出してもらうと、患者はその夜はよく眠ることができる。(堀氏) 


Q 疼痛管理時の吐き気への対処法は?

A
・オピオイド投与初期の吐き気は、消化管由来の場合もあるが、多くは中枢性であるためプロクロルペラジン(ノバミンなど)がよい。便秘をコントロールできているかどうかが両者の鑑別に重要だ。(堀氏) 

Q 再発し、予後告知を受ける時期の患者から、「罰が当たったのかな」といった自分自身を責めるような訴えがあったときの対応は?

A
・この時期に不眠が見られることがある。精神的な問題だけからの不眠か、身体症状からの不眠か、また早期覚醒なのか中途覚醒なのか、といった睡眠障害のパターンを把握し、まず夜の睡眠を確保するためにベンゾジアゼピン系薬剤やトランキライザーを使う。「いろいろと考えてしまって眠れない」という訴えに対しては、不安を感じていることを聞きながら、解決できることとできないことを明確化していくことが重要である。(堀氏)

・回答に窮して患者と医師の間のコミュニケーションが断絶してしまうことがよくあるので、すぐに答えを出そうと思わず、「どうしてそう思うか?」と問いかけ、患者の気持ちを語ってもらう。(戸谷氏)

Q 全身倦怠感にどう対処するか。

A
・エネルギー温存療法がある。1日のエネルギーは限られているため、患者のやりたいことに優先順位を付け、それができる時間帯(午前中が多い)に集中して取り組んでもらい、後は怠けてもらうというもので、看護チームと一緒になって指導する。薬物療法ではコルチコステロイドを使う。有効率は約6~7割で、1カ月で効果が切れてしまうことが知られているため、予後と副作用のバランスを考えて使う。(木澤氏) 

Q 家族へのケアは?

A
・臨床心理士を交え、家族が持つ「自分たちは間違ったことをしてきたのではないか」「患者のライフスタイルを誤ったほうに導いてきたのではないか」といった悩みに対してカウンセリングを行う。また、亡くなった後についても、ソーシャルワーカーを交え、最後までサポートすることを保証することが重要だ。(堀氏) 

Q 緩和ケアの地域ネットワークを上手く構築するには?

A
・一般成人2581人を対象に、「痛みを伴う末期状態の場合、患者はどこで療養したいか」を聞いた調査がある。結果を見ると、希望する療養場所は緩和ケア病棟23%、自宅59%、今まで通った病院10%であったのに対して、希望する死亡場所は緩和ケア病棟50%、自宅11%、今まで通った病院33%というものだった。しかし現実は約8割が病院で亡くなり、緩和ケアが十分に提供できていない。茨城県県南・県西地域では、緩和ケアのトレーニングを受けた医師による診療所・在宅ケア、一般病院緩和ケアチーム、緩和ケア病棟での緩和医療専門医、大学病院の緩和ケアチームが連携して緩和ケアを提供するためのカンファレンスを行っている。最初のうちは10人ぐらいしか来てもらえなかったが、粘り強く全ての機関に連絡するほか、常に広報し、来られたら歓迎して、顔見知りの関係を作ることを重要視している。何でも言い合える関係が重要であると考えている。 

・医師のマンパワーは限られるので、医師が医師の裁量権を減らすことに同意し、薬剤師、訪問看護師などに譲り渡すことを考えていく必要がある。(会場からの意見)
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自分が再発していないためか、母のがんが再発し、抗がん剤治療が難しくなってきた時、彼女がどんな気持ちで生活していたのか、いま一つ気持ちがつかめなかったです。診察室で医者が病状説明をしても、なんかうわの空に見えたし。。。ですので、

>予後告知については、再発の時点で予後告知を望む患者(全てを教えて欲しいと望む患者)は4割程度しかいない。全く望まない患者は10~20%、望んだときだけ教えて欲しいという患者が約30%

には、やっぱりなぁ、今後のことなんて考えたくないよなあと思ったし、

>再発の時点で予後告知を希望するかどうかを聞くわけにはいかないので、もっと早い時期から、患者への情報提供の仕方について話し合いをしておく必要がある。

には、主治医が彼女の性格を見定め、そういうことを一切言わないのはさすがだなあと思いました。我々家族側も口に出すことはしないと決めたことでもありました。
患者家族としては、いつ緩和ケアに移るべきか、患者にどのように伝えるかは難しい課題ですよね。

>治療の中止と同時に緩和ケアを紹介すると、患者は主治医の交代と抗癌剤治療の中止という2つのことを同時に体験することになり、紹介されたくないという気持ちから病院に来なくなってしまう場合がある。
>緩和ケアを紹介するのは、時期ではなく、苦痛に焦点を当てることが重要だ。望ましい例は「もっと日常生活を活動的にするために痛み、眠れない、吐き気が止まらないというところを診てもらいましょう」という紹介の仕方だ。

>「化学療法をやめてしまう」ではなく、「これ以上化学療法を行うのは、逆にあなたの寿命を縮めます。だから、ここで考え方を変えて、緩和という医療であなたの寿命を延ばしましょう」という説明があるとよい。

家族としても、とても参考になります。実際、担当して下さった緩和の先生も、自然な説明でケアへとギアチェンジして下さいました。

>「もうやることがないから緩和です」というのは最悪である。

激しく同意です。

>患者には「治療してもらった」「一緒に頑張った」という気持ちがある。そのため、主治医が顔を見せなくなるのはつらい。1日1回、5分でも顔を出してもらうと、患者はその夜はよく眠ることができる。

これは、自分がその時になれば、やはり同じ気持ちになるような気がします。
自分が「頑張った」ことって、希望を持って努力していた時です。そんな時に一緒に頑張ってくれた人の顔を見ると、何だか不安を吹き飛ばしてくれるような気になるんじゃないかしら。

>1日のエネルギーは限られているため、患者のやりたいことに優先順位を付け、それができる時間帯(午前中が多い)に集中して取り組んでもらい、後は怠けてもらう

やはり、午前中がよさそうなんですね。その方が、介助する側も時間が作りやすいという利点はあるでしょう。
患者が希望することに対し、解決できることとできないことを明確にすることは、家族の重要な仕事です。「それはできないよ」っていうのも、仕事・・・かな。

>一般成人2581人を対象に、「痛みを伴う末期状態の場合、患者はどこで療養したいか」を聞いた調査がある。結果を見ると、希望する療養場所は緩和ケア病棟23%、自宅59%、今まで通った病院10%であったのに対して、希望する死亡場所は緩和ケア病棟50%、自宅11%、今まで通った病院33%

希望する療養場所と死亡場所に差異がありますね。患者の微妙な心理状態を出しているように思います。
しかし、この調査に答えた人は一般の人たちであり、病気による痛みや苦しみなど経験していないわけです。
実際、私が知る末期状態の人たちの中には、自宅だと不安だから病院の方がよいとか、病院でないと苦しみが緩和できないとか、病院にいることを希望する方は少なくなかったです。痛かったり苦しかったりすると、場所なんてあまり関係なくなるような気がします。


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なかのひと

This blog “The salon of breast cancer women authored by Noe:l” is able to read in Japanese:-)