私の若いころですが、「男がやりたい仕事」として
「プロ野球の監督」か「オーケストラの指揮者」だと言った人がいて、
大いに、世の男性の共感を得ていたように覚えています。
自分の右手と指揮棒で、そうそうたるプロの人たちの動きを指図し、統制して、
一試合、一曲を作り上げていく「快感」が強調されていたような気がします。
ひと一倍お気楽な若い娘であった私など、
試合の間中,気難しい顔で腕を組んでグランドをにらみつけている野球監督や
髪ふり乱し、全身をくねらせながら指揮棒をふるっているコンダクターなど、
苦しみの仕事にしか見えず、自分は、男性を到底理解できないと思ったものです。
だんだん、年を重ねていくうちに、しかし、
誰かが、プロ野球の監督をしなければいけないし、誰かが
オーケストラの指揮をしなければいけないことが呑み込めてきたのです。
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演出家は、芝居におけるコンダクターで、監督です。
演出家がいなくては、芝居が作り上げられないのです。
たしかに脚本はありますが、それを生きた世界に作り上げるのが監督です。
教会の演出家Yさんは、あるちょっと名の知れた劇団で主役を張り、
演出も務めておられたとか。
ふだんは穏やかなYさんですが、演出を始めるとにわかに演劇人の顔が現れます。
たとえ素人役者であろうと、役者になってもらわないと、劇は劇になりません。
そこで、練習の主導権を握り、演技指導をしていきます。
「役者」が最初に注意を受けるのは、声です。
お腹から出る大きな声を出さなければなりません。初めは座って
ホンの読み合わせをします。そのときに、セリフの背後に隠れた意味を
みんなで確認するのです。
小説とは違って、脚本は「セリフ」だけで、ストーリィを展開します。
それを読み取って、全員に流れを徹底させるのです。
演出の前に、解釈があるのです。
では、続きはあす。
どうか、懲りずにお訪ねください。!!