ノアの小窓から

日々の思いを祈りとともに語りたい

金田一春彦先生

2015年04月15日 | 思い出



     有名人の顔は、時に、遠い親戚や職場の同僚より、鮮明に焼きついているのです。
     ひとこともお話をしたこともなく、とくに先方は私のことなど知る由もないのですが、
     知らない間に親しみを覚えて、勝手に記憶のアルバムにお入れしていたりすることって、
     どなたも経験があるのではと思います。

     有名な俳優さんとか、タレント、政治家。マスコミに露出の多い評論家とか・・・。

               


     金田一春彦さんは著名な言語学者で、伝説的な言語学者・金田一京助氏のご子息です。
     といっても、私とは何の関係もありません。

     私が先生を存じ上げていたのは、テレビを通じてです。
     その頃、我が家では、NHKの教育番組をよく見ていたのです。
     私がとくに勉強熱心だったというより、
     「チャンネル権」を握っていた家族の選択でした。

     でも、金田一先生の穏やかな笑顔とわかりやすい説明は、一時間ほどの番組を飽きさせず、
     連続であれば、また、観たいと思わせられる魅力がありました。

               

     はっきりした日付は思い出せないのですが、80年代始めごろでしょうか。
     新宿から東京行きの中央線に乗っていたときです。

     向かいの座席に、金田一先生が掛けておられるのに気がつきました。
     私の胸はときめきました。
     すごい先生が目の前におられる! 

     先生がちらっと眼を上げられた時です。
     私は思わず、頭を下げていました。

     先生は、すぐに、眼もとに笑みをにじませて目礼を返してこられました。

     それだけのことだったのですが、
     私はまるで、なつかしい恩師にお会いしたようにうれしくなりました。

     誰かが、このやり取りに気づいたとしても、先生とかつての学生の出会いくらいに思われたでしょう。
     じっさい、金田一先生には、ものすごい数の学生やお知り合いがおられるでしょうから、
     覚えのない顔からあいさつをされることも、めずらしくなかったかもしれません。

     それにしても・・・。

     この出来事で、私は金田一先生を、勝手に私のアルバムに
     入れさせていただいたのです。
     自分の行いに多少のうしろめたさを覚えたのは、だいぶ後のことでした。


             反省?! 
             いえいえ。
                感謝です。