猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

草原の実験

2015-11-08 15:10:29 | 日記
ロシア映画「草原の実験」を観にいった。
その少女は大草原にポツンと建つ小さな家で父親と暮らしていた。家の前には家族を
見守る1本の樹。毎朝、どこかへと働きに出かける父親を見送ってはその帰りを待つ
少女。壁に世界地図が貼られた部屋でスクラップブックを眺め、遠い世界へ思いを
馳せながらも、繰り返される穏やかな生活にささやかな幸せを感じていた。幼なじみの
アジア系の少年が少女に想いを寄せている。どこからかやってきた青い瞳のロシア系
の少年もまた、美しい少女に恋をする。3人のほのかな三角関係。そんな静かな日常
に、徐々に暗い影がさしこんでくる。

繊細で美しい映画だった。セリフが一切なく、登場人物たちの表情や仕草や行動で
物語を理解しなければならなかった。俳優たちの表情演技が素晴らしい。それに映像
がとてもきれい。どこまでも続く草原、こんな風景見たことない。一応、舞台はカザフス
タンで、1949年に旧ソ連で実際に起きた出来事が基になっているということらしい。
風景もきれいだが、主人公の少女が透明感あふれる美しさで、強く印象に残る。少女
役のエレーナ・アンは撮影当時14歳だったそうで、大人っぽい感じもするけれど年齢
相応の幼さもあり、とにかく忘れられないキャラクターだった。彼女はロシアと韓国の
ハーフだそうで、最初「えっハーフ?」と意外な気がしたが、目元をよく見ると、東洋人
の血が入っているかな~、と納得した。
物語には関係ないのだろうが、少女が学校に行っていないのが気になった。それと、
2人の少年がちっともハンサムじゃなかったのは、少女の美しさを際立たせるためだ
ったのかな?と思った。
この映画、「衝撃のラストに言葉を失う」という触れ込みなのだが、実はそんなに衝撃
的ではない。タイトルがほぼネタバレになっているし、作中に伏線もある。けれども
確かに映像は凄い。相当な傑作だと思う。映画館で観られて良かった。



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蟻が空を飛ぶ日

2015-11-03 03:18:04 | 日記
2010年の日本映画「蟻が空を飛ぶ日」。
東大生の健二(黒田耕平)は勉強に励み、普通に暮らしていたが、その裏で暗殺者
として殺しの仕事をこなしていた。それは誰にも知られてはいけないし、知られなけ
れば普通の人間のように幸福に生きていくことができる。彼は自分にそう言い聞か
せながら、偽りの日々を過ごすのだった。そんなある日、いつものように大道寺を
リーダーとする4人のチームで仕事を開始、健二はターゲットの男を1人追跡してい
た。だがその男は真紀(折原怜)という女に殺されてしまい、彼女は更に健二をも
殺そうと襲いかかってくる。

とてもおもしろかった。が、この映画のジャンルは何だろう。サスペンスでもないし、
人間ドラマとも違う、恋愛映画といえばそうなのかもしれないが。こういう変わった
映画、私は大好きである。
主人公が東大生でありながら殺し屋、というのがシュールだ。彼が属する殺し屋の
組織は、ある事情のある者たちで成り立っている。健二は冷酷で冷静だが、繊細な
面もある。その健二の前に現れたのは、愛人の男を殺した女・真紀。健二たちが
狙っていた男を真紀が先に殺しており、その現場で2人は出会う。孤独な心を持つ
者同士、惹かれ合っていく。そして真紀も組織の一員になるのだった。
真紀が愛人の男を殺した理由は悲しい。だがその後彼女の犯す殺人は、同情さえ
吹き飛ぶ程残酷だ。折原怜の迫真の演技。黒田耕平は割と無表情なのだが、冷酷
だけど繊細で孤独、というキャラクターをよく表現していたと思う。ラストは意外な
(私にとっては)方向へ向かうが、ラストシーンまで凄くいい。
この映画の監督の野火明は、作品が極端に少ない。しかもDVD化されているのは
この映画だけである。更に言うとこの映画は2010年の作品だが、DVDが出たのは
今年の9月である。更に更に言うと、前作の「シークレット・ワルツ」から15年ぶり位
の長編映画なのだそうだ。15年も映画作らないで、何してるのかなあ~( ̄▽ ̄)
「シークレット・ワルツ」も是非DVDを出して欲しい。テレビ放送で1度観たが、とても
おもしろかった。強く望む。

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