猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

復讐者に憐れみを

2015-06-16 04:01:25 | 日記
2002年の韓国映画「復讐者に憐れみを」。
ろうあの青年リュ(シン・ハギュン)は姉の腎臓病の治療のため、工場の退職金をつぎ
込んで闇組織で移植用の腎臓を求めようとするが、金は取られ、逆に自分の腎臓を
摘出されてしまう。その直後姉のドナーが見つかったという連絡を受けるが、既に金は
なかった。仕方なくリュはろうあ学校の同級生だったヨンミ(ぺ・ドゥナ)と共に身代金
誘拐を企てる。ターゲットは会社社長パク・ドンジン(ソン・ガンホ)の幼い娘だった。

悲惨で、全く救いのない物語である。主要登場人物の中でリュとパク社長は善良な
人間だが、ヨンミの説得で、リュは誘拐事件を起こしてしまう。ヨンミは過激派の組織の
メンバーで、耳は聞こえるのにろうあ学校へ行き、バレて退学になったというおかしな
女である。誘拐は成功し、2人は身代金を要求する。別段危害を加えようとしない2人
に、幼い娘もそれなりに懐き、全てはうまくいくかに見えたが、目を離した隙に少女は
川で溺れてしまう。助けを求める少女の声はろうあであるリュの耳に届くことはなく、
少女は溺死してしまう。そして、娘を奪われた父親の復讐が始まる。
何が悪かったのだろうか。リュはとても姉思いで、初めは自分の腎臓を提供しようと
するが、血液型が合わないと言われてしまう。それではと臓器密売組織の元へ行くと、
金も自分の腎臓も取られてしまう。そこで恋人のヨンミが思いついたのが身代金誘拐
である。ヨンミが「悪い誘拐と良い誘拐がある」とリュに話す内容は、妙に説得力が
あるのが不思議だ。少女を誘拐してからも、リュの耳が聞こえさえすれば、少女は死
なずにすんだのだ。善良だったリュは殺人者になってしまった。
パク社長のリュとヨンミに対する、そしてリュの臓器密売組織に対する、凄惨な復讐
が始まる。韓国の映画は残酷シーンがきついが、この映画も例外ではない。川に流
れる真っ赤な血が、人間の憎しみの深さを物語っている。パク社長とリュはそれぞれ
加害者であり被害者でもある。それがとても悲しいのだ。人間対人間の憎しみには、
少しの救いもない。何が悪かったのか、誰が悪かったのか、私にはわからない。

ドラキュラ伯爵役で有名だったクリストファー・リーが亡くなった。子供の頃、この人の
怪奇映画をいくつも観たが、怖かったなあ。90歳を過ぎても現役だったというのが凄
い。でも素顔は知的なイギリス紳士という雰囲気だった。ご冥福をお祈りします。



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