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前立腺癌の化学的予防(Chemoprevention)論文

2006-06-01 | 前立腺癌
Pharmacotherapy. 2006;26(3):353-359.
前立腺癌の化学的予防について、1967年~2005年までの英語の論文をMEDLINEと書誌で検索した結果をまとめた論文。(詳細は本論文を参照してください)
 
リコピンとβカロチン
リコピンは強力な抗酸化作用を持ち、抗癌作用がある可能性がある。
47,894人対象アンケートによる最初の前向きコホート研究では、日常のリコピン摂取量が多いと前立腺癌のリスクが減少。
次の症例対象試験では、リコピン摂取と前立腺癌は弱い逆相関関係にあったが、βカロチンでは認められなかった。
The Physicians Health Study試験(ランダム化2重盲験プラセボ対照)を含んだnested症例対象試験では、アスピリンとβカロチンの研究がなされた。リコピンの血中濃度が低いと前立腺癌に罹患しやすいと証明された。
もう1つのnested症例対象試験ではβカロチンサプリメント(50mg隔日)群はプラセボに比べて前立腺癌リスクの有意な減少を示さなかった。
50歳から65歳の喫煙男性29,133人を対象としたα-tocopherol β-carotene (ATBC)試験の結果、αトコフェロールとβカロチンサプリメントを服用した患者ではプラセボに比べ前立腺癌リスクが上昇した(138対112)が統計上は示されていない。

ビタミンEとセレニウム
ATBC試験でαトコフェロールは34%前立腺癌リスクを減少させると報告された(log-rank test, p <0.01)。Nutritional Prevention of Cancer Studyでは、皮膚癌予防の目的で米国の低セレニウム地域の1312人の患者が高セレニウムイースト(セレニウム200ug/日に相当)とプラセボに無作為に割り付けされたが、結果、前立腺癌の発生が減少した(RR 0.51, 95% CI 0.29–0.88)。PSA基準値の低い男性(<4 ng/ml) (RR 0.35, 95% CI 0.13–0.87)と血中セレニウムの基準値が低い男性で (RR 0.14, 95% CI 0.02–0.59)最も顕著であった。Selenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial (SELECT)試験は、前向きランダム化2重盲験試験で、前立腺癌おけるビタミンEとセレニウムを評価するために始まっている。対象は、直腸指診で異常なし、PSA値4ng/ml未満の健康な男性で、試験の終了は2013年。

NSAIDs(非ステロイド抗炎症剤)
症例対象試験ではアスピリンに有意な差は認められなかったが、12試験のメタアナリシスではアスピリンに10%前立腺癌リスク減少がみられた(OR 0.9, 95% CI 0.82–0.99)。別のレビューで他のNSAIDsと前立腺癌リスク減少の関連が報告されている(RR 0.61, 95% CI 0.45–0.85)。選択的COX-2阻害剤の試験も始まっている。

5-α-リダクターゼ阻害剤
5-α-リダクターゼ阻害剤は、テストステロンが、最も強力なアンドロゲンであるジヒドロテストステロンに変換するのを防ぎ、米国では良性前立腺過形成の治療薬である。現在the Prostate Cancer Prevention Trial (PCPT)と the Reduction by Dutasteride of Prostate Cancer Events (REDUCE) 試験が行われている。
Finasteride(フィナステライド)
PCPT試験が最初の大規模第3相試験である。対象は直腸指診で異常のないPSA値3ng/ml以下の健常な55歳以上の男性18,882人で行われた。2003年3月、目標に達したためData and Safety Monitoring Committeeは15ヶ月早い試験の中止を呼びかけた。フィナステライド対プラセボで、24.8% (95% CI 18.6–30.6%)前立腺癌有病率が減少した。詳しく解析したところ、フィナステライド7年間服用した男性1000人に対し、14人が前立腺癌を予防でき、4人がハイグレードの癌に罹患することになる。確実な推奨は困難。
Dutasteride
第2相の2重盲験プラセボ対照投与量決定比較試験で、良性前立腺過形成男性においてフィナステロイドより2重作用の5-a-リダクターゼ阻害剤Dutasterideのほうが血中ジヒドロテストステロドを有意に抑制することが証明された。

今後、REDUCEやSELECT臨床試験の結果によってさらなる考察が可能になるであろう。


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