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アニメ市場は拡大も「アニメ格差社会」が発生か!?

2021-02-19 21:54:39 | IT・ビッグデータ・新技術

アニメ市場は拡大も「アニメ格差社会」が発生か!?
2/11(木) 18:00
https://news.yahoo.co.jp/articles/b96536a34c7bb54a4ad44ef7292ad2676c95a123

ジャーナリストの数土直志氏×まつもとあつし生配信対談の完全版を前後編でお届け。数土氏は2020年のアニメ業界をどのように分析し、そして2021年はいかに展開すると予想しているのでしょうか?

コロナ禍をよそに2兆5000億円市場へ急成長
 過日、「アニメの門DUO【来年どうなる】2020年のアニメ業界を振り返る」と題して生配信された、ジャーナリストの数土直志氏×まつもとあつし対談の完全版を前後編でお届けします。数土氏は2020年のアニメ業界をどのように分析し、そして2021年はいかに展開すると予想しているのでしょうか?
 

 
まつもと 激動したアニメ業界の2020年を数土直志さんと振り返ります。先日発刊された「アニメ産業レポート2020」も参照しながら来年の展望を語っていきたいと思います。まずはアニメ産業レポートの執筆者のおひとりでもいらっしゃる数土さんに2020年版のポイントを挙げていただきます。
 
数土 一番は、僕自身もサプライズでしたがアニメ市場が非常に大きくなったことです。広義の市場で15%くらい。「広義」というのは、いわゆるユーザー市場です。日本+世界各国のユーザー市場が15%増になって、2兆5000億円規模というすごい数字に突入してしまいました。それから業界市場、いわゆる制作会社の売り上げの積み重ねのほうも12%増くらいで、初めて3000億円に突入しました。
 
 中国が日本のアニメをあまり買わなくなった影響もあってか、TVアニメの本数は減っていますから、「アニメ市場は結構キツイのでは」「もう成長が止まったんじゃないのか」という声もあったのですがいやいや、まだこんなに成長しちゃうよ、ってことが明確になりました。
 
まつもと この対談でも「配信」が1つのキーワードになるのですが、やはりNetflixやAmazon Primeなど北米系外資の配信サービスによる日本アニメの積極的購入が影響を与えているという理解で良いのでしょうか?
 
数土 配信の市場自体は、確かに急成長していますが、アニメ市場全体を占める割合はそれほど大きくないんですよ。海外の市場については十把一絡げに1兆2000億円くらい、という数字が出ているのですが、その内訳についてはアニメ産業レポートに掲出されておらず、海外のどこの市場が大きくなったのかは不明です。
 
 ただ1つ言えるのは、「配信がトリガーになって周辺市場が一気に拡大しているのでは?」という推測です。日本と同様、映像だけではなく映像を中心としたグッズやゲームといったさまざまなモノで楽しもうという文化が海外でも広がり始めたのだろう、と。
 
まつもと グッズについては、海外での商流やチャネルがなかなか確保できませんから、オンライン配信やソーシャルゲームが中心になるのかな、と予想しますが。
 
数土 ところが、バンダイナムコは北米で流通会社を買収するなどの動きを見せています。「2020年から2021年にかけて、ガンプラを流通市場にガンガン流します。ウォルマートにも棚取りました」といった話も出てきているので、海外市場は変わりつつあるようですね。
 
まつもと マーチャンダイジングのチャネルも確保されつつある、という見立てですね。
 
数土 あくまで「今まで入れなかったところに入れるようになった」ということです。
 
まつもと あとは、後ほど2020年の動きとしても触れていただくのですが「劇場映画」ですよね。2019年は本当に劇場アニメバブルと言ってもいい状況だったと思います。
 
数土 「アニメの調子が良い」と言われていますが、それは誤解です。実際にアニメを作っている人は「いや、全然そんな気がしないんだけど」と答えるのでは。TVアニメの制作本数は実際のところ3年連続で減っています。そのTVアニメの凹んだぶんが劇場作品や配信作品で補われている形ですね。
 
 劇場作品については、興行・配給会社にとって「好調」なんです。けれどアニメ制作会社にとっては大きな変化はないということです。
 
まつもと そもそも劇場アニメにチャレンジできるスタジオは限られていますし。
 
数土 そうですね。最近『なるほどな』と思ったのは、ある人に「今アニメは両極で、真逆のところですごいことが起きている」と聞いたときです。
 
まつもと 見る場所によってずいぶん景色が違ってくる。
 
数土 そうそう。シリーズ1話の制作費が5000万円というようなアニメがある反面、今までとあまり変わらないキツイ予算で制作されているアニメもあるはずなので、十把一絡げに「アニメの調子が良い」とは言えないんですよね。
 
まつもと なんか「アニメ格差社会」みたいなことが起きているのかもしれませんね。詳しく知りたいという方は、ぜひ「アニメ産業レポート」を手に取っていただければと思います。ネットでサマリーも参照できますので、そちらもぜひご覧ください。
 
 さて、数土さんのお話にもあった「TVアニメが減っている」というトレンドは今後どうなっていくのでしょう? これまでの「アニメ産業と言えばTVアニメ」という関係がだいぶ崩れつつある印象を受けます。次は、劇場や配信でのアニメはどうなっていくのか、数土さんと一緒に考えていきましょう。
 
コロナ禍はアニメに何をもたらしたのか?
まつもと 私はアニメ産業イノベーション会議(ANIC)というNPOを運営しておりまして、2020年4月にNPO主催で生配信した際には「経済自体が大変な打撃を受けるのでアニメ業界にも逆風が吹くから警戒すべき」というお話をしました。ところが実際は、全体的には非常に好調でした。いわゆる「巣ごもり需要」が影響したと思われますが、数土さんは新型コロナがアニメ産業にどういった影響を与えたと考えていますか?
 
数土 おそらくやっぱり「キツかった」というのが実情だったと思うんですよ。制作の遅れもあったでしょうし、TV番組の編成組み換えについても、たぶん現場の人はすごく大変だったと思います。
 
まつもと アフレコ収録もしばらく試行錯誤の状態が続きましたよね。
 
数土 収録時間の増加で予算も上がったはずです。そこをどうやって対処したかという現実の話は、我々ではわかりかねます。しかしそれを乗り切ったのは確かですよね。アニメ業界って、結構ツラいハードルがあっても必ず乗り越えていくところが、僕はスゴいと思っているんです。
 
 音楽がライブを開催できなくなったり、実写映画がほぼ撮影できなくなったことを考えると、エンタメでは比較的まだ踏み留まれたジャンルかなと。とはいえ、納品の遅れなどもありましたから、キャッシュフローの面からも2020年の制作売り上げ自体は下がると思います。
 
まつもと 制作については、在宅作業を指示した会社もあったようです。もともと非常に集約的な労働環境だったアニメ制作の現場において、各工程でリカバリーを図ろうという努力があったことが垣間見られました。しかし、やはり制作の遅れ、つまり納品の遅れは当然入金の遅れにつながるので、そこに打撃があるということですよね。
 
数土 たとえば制作会社だと、たとえ制作は止まらなくても納品が3ヵ月先にいくと、お金も3ヵ月間入りません。経営者ならわかると思うのですが、お金が3ヵ月止まるって大変なことです。小さい企業は倒れかねません。皆さん、厳しい状況で制作していると思います。
 
まつもと 前述の生配信では、税務会計に詳しい方に出演いただき、持続化給付金など補助金の解説をしてもらいました。ただ、そこでわかったことは、コロナ禍の状況で3ヵ月間の納品の遅れを補うには、国あるいは地方自治体が用意した補助金では全然足りない、ということでした。そうなると、あとはいわゆる自助努力になってしまうのでしょうか?
 
数土 社内留保金をやりくりするとか、グループ会社であれば親会社やほかのグループ会社がファイナンスをして一時的にお金を貸すといったことになってくるとは思うのですが。
 
まつもと そうすると、これはコロナ禍以前からの傾向ですが、アニメ制作会社がグループ化していく、大きい会社の傘下に入っていくという動きがますます活発になるかもしれませんね。
 
数土 ええ。というか、すでに増えています。このコロナ禍で何が起こるかわからないからこそ、大きなお金を持った人が後ろにいるとありがたいというのはあるのでないかなと予想しています。
 
まつもと 「備え」ですよね。新型コロナの影響がどれくらい続くのか、まだ見通せない状況ですから、経営者としてはキャッシュやスポンサーを今後も確保できるか模索が続いているのだと思います。
 
コロナ禍が「ライブエンタメ」を直撃
まつもと それからもう1点、「ライブエンターテイメント」について。これまでのアニメ産業レポートでも、ライブが伸びているということが繰り返し指摘されてきました。ところがこのコロナ禍で180度変わってしまいました。しかも最近のアニメ作品ではライブと連動した企画が増えています。どのような影響が出てくるのでしょうか?
 
数土 Blu-rayやDVDが以前ほど売れないこの時代にアニメはどうやって生き残るのかと考えたとき、1つは海外も含めた「配信権の販売」、そしてもう1つが「メディアミックス」です。従来からメディアミックスには多様な手段がありましたが、最近はライブイベントやコラボカフェといったリアルに視聴者が消費するスタイルが増えています。ここに収益の活路を見出していた作品は今後どうするのか?
 
まつもと 当然、企画を変えざるを得ないとお考えですか?
 
数土 一番気になっているのが、このコロナ禍がどこかで終わったとしても、たとえば劇場に物販を設けて長蛇の列を作るとか、あるいはAnimeJapanみたいに東京ビッグサイトを満員にするとかして「熱気があって人気がある」ということを「演出」することができないのではないか、と思っています。この点を制作サイドはどう考えているのかです。
 
まつもと アニメ業界はイベントの配信化に素早く対応しましたよね。結果、これまではBlu-rayに封入されている抽選券を使わないと参加できなかったイベントにも配信で参加できるようになりました。私はリアルイベントになかなか参加できない働き方をしているのですが、配信イベントなら参加できることに気づきました。そして実際に参加してみると、その内容が豪華なことに驚きました。忙しい声優さんたちが2時間も3時間も語ってくれるのですね。
 
数土 従来のイベント開催の考え方は「大きな箱を用意して空席が目立つのも問題だから、買えない人が出ても小さい箱を満員にしよう」だったと思います。それが配信化で「見てくれる人には全員見てもらおう、そこから人気を広げていこう」という考え方に変わっていくのかもしれません。
 
まつもと そういったイベントの変化がアニメの企画そのものに影響を与えていくことは間違いありません。ただ、かつて『震災の影響を結構受けているな』という作品が東日本大震災からだいぶ経ってから登場したことを考えると、「アフターコロナを見据えたビジネスモデルがベースのアニメ作品」を我々が目にするのは2~3年後でしょう。
 
数土 長期的に考えると、現在アイドルアニメの企画を新たに、とは言い出しにくいと思うんですよ。イベントもできないのにアイドルアニメなの?と。すると一時的にアイドルアニメがスッと減るかもしれない。でも2年後はもうコロナがなくなっているかもしれないから、じつはそのときにこそアイドルアニメがあったほうがいいのかもしれないですけれど。
 
まつもと 本当に読めないですよね。完全に生活習慣が変わってしまうかもしれないし、ワクチンを接種した途端みんな何事もなかったかのように元の生活に戻ってしまうかもしれない。
 
数土 そうですね。あまり気づかれないですが、社会的環境とかビジネス環境って、作られるアニメ作品に相当影響を与えていると思うんです。SFとかファンタジーは、Blu-rayやDVDをポンと買ってくれる人はいなくなって一時期辛かったですが、いまはアメリカの配信会社がワッサワッサと買います。異世界系なんかも大人気ですよね。
 
まつもと 数土さんはSci-Fi系――1980年代から90年代半ばくらいまでの「日本風のSF」みたいな作品――が海外のファンにウケているし、ニーズもあると以前から仰っていましたよね。現在のコロナ禍で制作力も限られるなか、日本のアニメは日常系からそういった方向へシフトしていく傾向があると。

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