先日ここで紹介した、ウゴウゴルーガと言う日本のテレビ番組の「しかと」と言う短いコーナーであったが、センスの塊であったと説明した。
さて、その「しかと」であるが、これは一体何が良かったのか。
本来であれば理性で捉えきれるようなものではなく、全身の神経細胞の感受性を全開にして受け止めるべきであるような作品であり、そこには言語など必要のないものであるが、それに対してあえて言語化を試みる。
まず徹底的に抽象化されている。
我々の社会行動様式での競り合いや勝負のつき具合や、あるいはそこに起こる社会動態としての不条理や革命などが盛り盛りに盛り込まれている。
徹底的にそうした我々の生活に関連付けられるような具象的な要素が削ぎ落とされていて、そこにある社会動態が記号や抽象説明文を読まされているかのような、極限にシンプルな作品へと仕上げられているのだ。
が、一方でそれらを全く意識させない。
次にコミカルな絵にこれらを表現していることである。
最後に、それらがわずか数秒〜十数秒でまとめている。
本当にこれを作った人間は天才であった。
一方不満もある。
「しかと」のファンであるならば直感的に分かると思うが、中盤に差し掛かって出る「しかとinLove」の部分は、ちょっと安直に逃げて「まあよくある展開で手を抜いたろ」だとか「ネタも尽きたので恋愛ネタ入れればまあ受けるだろう」と言う手抜き感があった。
徹底して抽象化すべきものであるしかとに対し、フジっぽい恋愛要素と言う不純物が入ったのは大変に残念である。
ここだけ具象的要素を盛ったことで、ちょっと興ざめを起こしたのも事実である。
なお、「しかと」と言うタイトルは、「シカ」と「トナカイ」のカバン語にした後の略語という感じで、これもまたそうした説明を省いて徹底的に抽象化をしたと言うイデアに近づくための表現をしていて、この意味でも私はこれを気に入っている。