太陽くんのせきは薬を飲んでようすをみて、改善されないようだったら写真を撮って検査する。ひと晩でかなりよくなっている。ゴホゴホといういやな感じのせきがまだ止まってはいない。
空は注射してから、脳外科診察へ。内分泌で注射しているプロファシーは、hCG(ヒト胎盤性性腺刺激ホルモン)製剤なので、やはりこのhCGというのは気になるから主治医に聞いてみた。影響がないと言えるわけではないが、腫瘍の原因はわかっていないことだし、もちろん注射すれば腫瘍マーカーとしてのhCGも上昇するだろうけど、自己産生のものではないから心配しなくてもいいという結論。再発を促すような明らかなデータなどないから、治療をやって子どもをつくるところまでという方針であるならいいのではないですかということだった。目標達成できなくても、こんな病気になっていなくても無精子症の人はたくさんいるのだから、はっきり言えばもうそれは脳腫瘍という第一の問題ではないということ。そんなこんなの話をたくさんしてきたので、書ききれない。最終の診察だから時間があった。
一昨日、神奈川県の「空」くんのお母さんからメールをいただいて、驚いてしまった。まさかの話にまだ信じられないくらいだ。3人めの空くんは、一昨年に中学1年生のとき脳幹部の腫瘍が発見されて、昨年残念ながら亡くなられていた。こうなると「空」という名前と脳腫瘍という病気の因縁を思わざるをえない。空という名前に決めるとき、ばあちゃんほかの人たちからずいぶんと止められた。強引に親の権利だからと押し切ったものだ。名前によって運命が決まるなどと、そんな話はまったく信じていない。今現在でもそういう類の話には耳を貸さない方だと自分では思う。しかし、こんな偶然を知ってしまうと、誰でも何かを考えてしまうのではなかろうか。
脳幹部の腫瘍では、手術は不可能、抗がん剤が効くものはなく、放射線がわずかに有効というきわめて悲観的な病であることが現在でもほとんど変わっていない。神奈川の空くんは、医師から宣告された余命をはるかに上回ってがんばり続けて、中学1年生は学校へ通ったという。できることなら、同じ名前として会って話がしたかったと思う。何も力にはなれなかっただろうが。