諸葛孔明
言わずと知れた
三国志の英雄軍師
その名は中国のみならず
世界の英雄史にも
燦然と輝いている
しかし、彼は古今東西
どんな英雄とも異なる点がある
彼以外の英雄は
色々な大義名分はあれど
結局は自らの野望に生きている
だが孔明は違った
吉川英治の説を借りれば
「孔明は仕えていた亡き先帝
劉備玄徳の遺言を達成しようと
寝てもさめてもそのことばかりを考え
その権化の姿こそが全生活
全人格だった」というのである
つまり自らのことではなく
仕えた師の構想の達成のみが
彼の全てだったのだ
生活は質素で稀有の天才だったにも関わらず
常に学ぶことを忘れなかった
自由闊達・豪放磊落なスーパーマン
はたまた聖人型の英雄ではなく
忠誠一図で真面目、常に真剣で
人の心の機微に通じた
偉大な平凡人だったというのだ
このことは意外な驚きだった
突き詰めて言うと彼は
「師の志を自らの心とし
全生活をかけて戦った
真面目な平凡人」ということになる
それが千数百年を経ても
全世界の人々の心に残る
偉人として語り継がれているのだ
師の心を我が心とし生きる生き方が
後年の人々に語り継がれる人生となる
平凡な庶民が英雄として歴史に残ることは
可能だったのだ
実に興味深い