「へンくつ日記」

日常や社会全般の時事。
そして個人的思考のアレコレを
笑える話に…なるべく

遺伝子操作は世界をバラ色に変えていくか

2018年11月30日 15時54分52秒 | Weblog
受精卵の遺伝子の操作(ゲノム編集)は
技術的にも可能で、動物実験等は色々な
研究施設でやっている…という噂だ。
ただ、人間に対しては、技術が未成熟で
あり、影響が世代を超えて続くこと、
更には倫理面の問題を挙げ、「十分な議論
と法整備を前に許容されるべきではない」
と批判し禁止すべきと、世界の学者は
今の時点では反対している。
そんな中、中国の南方科技大学准教授
賀建奎氏が、エイズにかかった父親から
受精した双子の卵にゲノム編集でエイズ
耐性を持たせることに成功した、と発表。
世界を驚かせた。
つまり、その双子は将来、父親の病気は
発症せず、普通に生活が出来る、という。
一見、科学の勝利のように聞こえるが、
彼は恐ろしいパンドラの箱を開けたとの
意見が多い。
(その後、中国政府は賀順教授に実験中止
命令を下した)

しかし一方で、オックスフォード大学教授で
「人類の未来研究所」所長ニック・ボストロム氏は
受精卵のゲノム編集の末に「人類史上最も知能が
高い特質を持つ遺伝子型」を持った人間が輩出さ
れるのは必然と語っている。
「物理的には二十年後」には〝ミュータント〟は
誕生し、世間の批判に影響されても「二十一世紀
後半には」新人類が世界を席巻すると予想する。
何故、社会が高い知能の人間を必要とするかには
「凄まじい勢いで加速成長する「AI(人工知能)」に
対抗し追い越されないようにするため」と答える。

なんだか、ナチスがユダヤ人虐殺の根拠とした優生
思想や選民思想に近いものを感じてしまうが、AI等の
テクノロジーの発達が人々の意識を変え、この考えを
正当なものとされる日が近いというのが氏の見解だ。

さて、仮にゲノム編集の技術が確立し、「先天性の病気
治療のためなら」と世論も賛同し、学術界がGOサイン
を出したなら、どうなるか。
「先天性の病気」云々を言い訳に、ボストロム氏の言う
「高い知能の人間」開発に、多くの研究者が向かって
いくのは火を見るより明らかだ。
そうして、〝ミュータント〟が世界を占めたとしたら
世界は平和になるだろうか。
 
ひとつ気になることがある。遺伝子操作で病気を排除し
高い知性のタネを組み込ませたとしても、性格や癖、
そして、その人間だけが持つ業(過去世から積み上げた
正や負の貯金)は、ゲノム編集では改変できないのだ。
DNAを幾ら探っても、業は見つからないからだ。
だから、高い知能を持った盗人が出来てしまうかも知れ
ないし、幼児への性的虐待を繰り返すIQ300の男や
殺人に興奮する天才、世界の破壊を密かに企む政治家が
出るやも知れないのだ。
そして人格の問題がある。人格は完全に後天性のものだ。
親の教育や環境、本人の努力無しでは、高い人格には到底
辿り着けない。勿論「高い人格こそが人生の目的」と考え
ない人間には、まるで関係ない話しだ。
「自分が賞賛を受ける」のが目的のミュータント、「貪欲に
金に執着する」天才、「異性に執着する」IQ300の男女
たちが世界に溢れたら、人類は破滅に向かうに違いない。
いくら高い知能の人間たちが大半を占めても、価値基準が
狂っていれば人格は磨かれない。つまり、知能は高いが
「クソ野郎」ばかりの社会になるのだ。

だから学者は、ゲノム編集にのめり込む前に、社会を
啓蒙すべきだ。「人生の目的は高潔な人間になること
である。それを第一とする人間が社会の大半を占めて
初めて、ゲノム編集が意味あるものとなる。今のまま
では研究を始められない!」と。
(しかし、まあ。そうなったら、いつまで経っても研究
は始まらないね)
 

 
(参考文献・『未来を読む』大野和基氏
インタビュー編 PHP新書・『遺伝子』シッダール・ムカジー著 早川書房)

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