Photo: at Zurich Switzerland,,,
掲載済みの小説「フォワイエ・ポウ」は、下記から入れます。
1)第1回掲載(2月9日)
2)第2回掲載(2月10日)
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エセ男爵ブログ・連載小説
『フォワイエ・ポウ』
著:ジョージ青木
1章
2.(クリームチーズ・クラッカー)
おつまみが出来上がったので奥のテーブルに出し、目の前にいる栗田係長には直接、本田が手渡した。
「マスター、 これがおつまみですね!」
「そうです。うちは、基本的にお客様全員に必ずお付けするおつまみはないのでして。そう、いわゆる御通しってやつは、ご用意していません。ま、相手を見て、おつまみらしきものをお出ししています」
「チーズクラッカーとは、さすが凝ってらっしゃる・・・」
「いえいえ、私がわがまま言って自分流にしてしまったのでして、自分としては別に凝っているわけでもないのでして、どちらかといえば、手抜きなのですよ」
「・・・」
栗田からの返事は返ってこない。栗田の手元は、にわかに忙しくなった。生ビールをあおりながら、チーズのアルミラップを懸命に開き、ナイフで切り取ってクラッカーに載せて、味をきいていた。本田はそんな栗田の様子を伺い、間合いを計りながら話を続けた。
「いや~、栗田さん、実はですね・・・」
ここでようやく栗田の口が開いた。
「あ、マスター、失礼、これ、おいしい、おいしいです。だから、食べるのが忙しくて口が忙しくて、失礼しました」
「いやいや大丈夫ですよ、実は私、酒を呑み始めたら飲み終わるまでほとんど食事しないのです。ほんのわずかなおつまみがあればいいのです、が、日本人は食べながら、飲む。飲みながら、食べる。だからどうしてもおつまみが欲しい! おつまみがなければ、酒が喉を通らない、という、日本人の常識?そんな平均的な感性、と、言いますか・・・」
「分かった!マスター、分かりますよその感覚、つまり、欧米では飲むときには食べないという人がほとんどなのですから」
「ウム・・・ そういえば、そうですね」
「このクリームチーズ、まだ日本に入っていないというか、少なくともスーパーやデパートの食品売り場では、まだ見かけませんから、お客さんにとって特にチーズの好きな人には、そうとう受けるんじゃないですか?」
「それならいいのですが、実は、チーズは苦手、嫌いな人もいましてね、そのような方には、例のかわきものをお出しするのですが、ここでは、ポッキーチョコか、チョコレートのついていないプレーンなポッキーをお出しします」
「ピーナツは?」
「ああ、殻付の美味しいヤツを、置いていました。美味しいやつですよ。でも、中にはマナーが悪い客が居ましてね。つまり剥いた殻を散らかすんですよ。必ずボックス周りを掃除しないと、あとから入ってくるお客様に申し訳ない、したがって掃除する。掃除してお役を迎え入れる。面倒で非効率でどうしょうもないからやめたのです」
栗田は、熱心にマスターの話に聞き入っている。
一通り話を聴いた栗田係長は納得し、さらにクリームチーズの入手先を聞いてきたので、説明する。東京にいる知人の輸入業者に依頼したところ、一回一回の仕入れ単位が多く、小規模のバーでは無理だと判明し、酒屋さんに相談した。結果、専属の酒屋さん経由で仕入れている、と説明する。
このバーの「つきだし」には少々特徴がある。
読者はすでに十分にご承知の通り二~三流BARのおつまみは、「かわきもの」と称する、オカキ・ピーナツなど、ある程度の期間の保存が可能なもの、すなわち乾いている「手の掛からない」食品であるから、飲み物と一緒に客に具するにスピードがあるから、したがって客を待たせなくてよい。
オードブルの定番として、チーズクラッカーを用意している。このバーに訪れた客の全員に最初に出される「おつまみ」なのだ。
つきだしの名は、『チーズクラッカー』である。
その内容は・・・
2~3種類のチーズが主役となるが、ソーダクラッカー数枚、さらにプチトマトとパセリが副えられる。
さて、主役のチーズは如何なるものか?
「チーズ」はクリームチーズなのである。業務用ないし欧米の家庭でもちいるチーズは、巨大であるから、まずチーズのブロックを裸にして切り分けなければならず、こんな飲み屋で取り扱えない。したがって取り扱っているチーズは、その直径約5~6センチ、厚み約5~6ミリ、ちょうど円形のビスケットの大きさそのもの、それが銀紙でパッケージされている。このように小分けしたチーズは、すでに市販の円形の紙箱に入った6Pチーズとほぼ同じか、やや少な目の分量であるから、一人一人おつまみに出しても無駄が生じない。かつ1ダース単位、つまり12枚単位で仕入れができる。しかもマスターの独断と偏見により、プレーンチーズを始め、ナッツ入り、パイン風味、オレンジ風味の四種類を仕入れている。銀紙でラップされたチーズはそれぞれ、そのパッケージの表に種別が判別できるよう、絵入りで中身が説明されている。パッケージが小さいので、比較的小さな冷蔵庫でも収納管理しやすく、ある程度チーズのバリエーション対応もなんなく維持できるのである。但しチーズの場合、客によっては好き嫌いがあり、チーズのにおいを嗅ぐことすら受けつけない客もいる。店を訪れた客全員にこれを提供するには、かなりの問題があるかもしれないが、しかし、この店を訪れた全員の客に必ずチーズクラッカーを「おつまみ」として具する。
さらにもう一点、何故、おつまみが「チーズクラッカー」になったか?単純な理由があった。
<・・続く・・・(2月17日金曜日・掲載予定)>
掲載済みの小説「フォワイエ・ポウ」は、下記から入れます。
1)第1回掲載(2月9日)
2)第2回掲載(2月10日)
--------------------------------------------------
エセ男爵ブログ・連載小説
『フォワイエ・ポウ』
著:ジョージ青木
1章
2.(クリームチーズ・クラッカー)
おつまみが出来上がったので奥のテーブルに出し、目の前にいる栗田係長には直接、本田が手渡した。
「マスター、 これがおつまみですね!」
「そうです。うちは、基本的にお客様全員に必ずお付けするおつまみはないのでして。そう、いわゆる御通しってやつは、ご用意していません。ま、相手を見て、おつまみらしきものをお出ししています」
「チーズクラッカーとは、さすが凝ってらっしゃる・・・」
「いえいえ、私がわがまま言って自分流にしてしまったのでして、自分としては別に凝っているわけでもないのでして、どちらかといえば、手抜きなのですよ」
「・・・」
栗田からの返事は返ってこない。栗田の手元は、にわかに忙しくなった。生ビールをあおりながら、チーズのアルミラップを懸命に開き、ナイフで切り取ってクラッカーに載せて、味をきいていた。本田はそんな栗田の様子を伺い、間合いを計りながら話を続けた。
「いや~、栗田さん、実はですね・・・」
ここでようやく栗田の口が開いた。
「あ、マスター、失礼、これ、おいしい、おいしいです。だから、食べるのが忙しくて口が忙しくて、失礼しました」
「いやいや大丈夫ですよ、実は私、酒を呑み始めたら飲み終わるまでほとんど食事しないのです。ほんのわずかなおつまみがあればいいのです、が、日本人は食べながら、飲む。飲みながら、食べる。だからどうしてもおつまみが欲しい! おつまみがなければ、酒が喉を通らない、という、日本人の常識?そんな平均的な感性、と、言いますか・・・」
「分かった!マスター、分かりますよその感覚、つまり、欧米では飲むときには食べないという人がほとんどなのですから」
「ウム・・・ そういえば、そうですね」
「このクリームチーズ、まだ日本に入っていないというか、少なくともスーパーやデパートの食品売り場では、まだ見かけませんから、お客さんにとって特にチーズの好きな人には、そうとう受けるんじゃないですか?」
「それならいいのですが、実は、チーズは苦手、嫌いな人もいましてね、そのような方には、例のかわきものをお出しするのですが、ここでは、ポッキーチョコか、チョコレートのついていないプレーンなポッキーをお出しします」
「ピーナツは?」
「ああ、殻付の美味しいヤツを、置いていました。美味しいやつですよ。でも、中にはマナーが悪い客が居ましてね。つまり剥いた殻を散らかすんですよ。必ずボックス周りを掃除しないと、あとから入ってくるお客様に申し訳ない、したがって掃除する。掃除してお役を迎え入れる。面倒で非効率でどうしょうもないからやめたのです」
栗田は、熱心にマスターの話に聞き入っている。
一通り話を聴いた栗田係長は納得し、さらにクリームチーズの入手先を聞いてきたので、説明する。東京にいる知人の輸入業者に依頼したところ、一回一回の仕入れ単位が多く、小規模のバーでは無理だと判明し、酒屋さんに相談した。結果、専属の酒屋さん経由で仕入れている、と説明する。
このバーの「つきだし」には少々特徴がある。
読者はすでに十分にご承知の通り二~三流BARのおつまみは、「かわきもの」と称する、オカキ・ピーナツなど、ある程度の期間の保存が可能なもの、すなわち乾いている「手の掛からない」食品であるから、飲み物と一緒に客に具するにスピードがあるから、したがって客を待たせなくてよい。
オードブルの定番として、チーズクラッカーを用意している。このバーに訪れた客の全員に最初に出される「おつまみ」なのだ。
つきだしの名は、『チーズクラッカー』である。
その内容は・・・
2~3種類のチーズが主役となるが、ソーダクラッカー数枚、さらにプチトマトとパセリが副えられる。
さて、主役のチーズは如何なるものか?
「チーズ」はクリームチーズなのである。業務用ないし欧米の家庭でもちいるチーズは、巨大であるから、まずチーズのブロックを裸にして切り分けなければならず、こんな飲み屋で取り扱えない。したがって取り扱っているチーズは、その直径約5~6センチ、厚み約5~6ミリ、ちょうど円形のビスケットの大きさそのもの、それが銀紙でパッケージされている。このように小分けしたチーズは、すでに市販の円形の紙箱に入った6Pチーズとほぼ同じか、やや少な目の分量であるから、一人一人おつまみに出しても無駄が生じない。かつ1ダース単位、つまり12枚単位で仕入れができる。しかもマスターの独断と偏見により、プレーンチーズを始め、ナッツ入り、パイン風味、オレンジ風味の四種類を仕入れている。銀紙でラップされたチーズはそれぞれ、そのパッケージの表に種別が判別できるよう、絵入りで中身が説明されている。パッケージが小さいので、比較的小さな冷蔵庫でも収納管理しやすく、ある程度チーズのバリエーション対応もなんなく維持できるのである。但しチーズの場合、客によっては好き嫌いがあり、チーズのにおいを嗅ぐことすら受けつけない客もいる。店を訪れた客全員にこれを提供するには、かなりの問題があるかもしれないが、しかし、この店を訪れた全員の客に必ずチーズクラッカーを「おつまみ」として具する。
さらにもう一点、何故、おつまみが「チーズクラッカー」になったか?単純な理由があった。
<・・続く・・・(2月17日金曜日・掲載予定)>
私の経験から言えば、
1)30歳になった時点で、
*酒を飲むと酔うものだ・・・
ということが判り、
2)35歳になったら、
*酔いがさらに回ることに気がつき、二日酔いの「悪寒」を始めて知り、
3)40歳になった時、
*悪酔いをすることを知り、
4)50歳になったとき、
*酒はある程度で(自分から)ストップしないと「翌日の仕事」に差し支えることが判り、
5)今、ほどほどにしないと「寿命をちじめる」ことが、
解りました・・・
そして、
お茶!
これも奥が深いですね。
私は珈琲党でして、紅茶の味など全く解りません。長期にわたる海外生活の繰り返しにより、日本茶と梅干と漬物なしに三度三度の食事を済ませることが可能になってしまいました。
日本人にあるまじき、悪しき?習慣です。
最近になり、あらためて日本茶の美味しさが解る年頃になってきました。
伝統的な良き日本文化を深めること、今からでも遅くはない。と、思っている今日この頃です。
PS:
今週末?来週早々、TSさんからのリクエスト=「ウイスキーの話」、投稿します。意外と難解難題で、期待しないで期待して下さい。
続けて購読いただき、ありがとうございます。
励みになり、書き進めていくヒントになります。
満腹中枢麻痺で太ってしまいます><
お茶なども面白いですね。
日本は食事をしながらお茶を飲むのが当たり前ですが台湾では食後にお茶を飲みますよね。
今日は応援だけして帰ります。
ですから、極力食べないようにしています。
このチーズくらいが適量で、より一層アルコール類が美味しく飲めます。
チーズクラッカーになった理由?その切っ掛けがあります。金曜日をお楽しみに、是非お立ち寄り下さい・・・
ですから、飲みすぎると、
翌日…
しかし、食べながら飲むことが苦手な私には、
このチーズは丁度よさそうです。
ところで、
>おつまみが「チーズクラッカー」になった理由、が気になります。
そこにも、マスターの“こだわり”があるのでしょうか?
>ただしログを持っての移転の仕方がイマイチよく分かりません。(TSさんコメントより・・)
私はさっぱりわかりません。
いまでも雨風呂には以前のブログがそのまま残ったままでみっともないのですが、アメーバブログの脱退の仕方が判りませんので、そのまま放り投げています。
こまめに「記事の移し替え」をしながら、逐次(自からの手動にて)削除するしか方法が無いようです。これも面倒だからやりませんが・・・
雨風呂のブログ利用契約者数は、たぶん(いい加減ですが)すでに100万人を突破していると思います。でも、私と同じように脱退したブロガーの数は相当なパーセンテージに上るのではないでしょうか、、、。
ただしログを持っての移転の仕方がイマイチよく分かりません。
ライブドア等からでしたら専用のMT変換がついており簡単にインポートできるのですが私のDokyunは対応してないでどうしたらいいものかと悩んでおります。