日々の出来事

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恩人の死

2010-12-29 01:49:48 | Weblog
恩人がまた一人亡くなりました・・・。
私の臨床家としての姿勢を決めてくれた大恩人でした。
死にそうだった私を、生後9日目から面倒みてくれた小児科医が亡くなられたのです。

2010年6月30日、東京都三鷹市にあった阿部医院が閉院しました。
その最後の日の最後の時間に、獣医大学へ見学に出た帰りにお寄りしました。
先生は85歳、肝臓癌を患っておられました。
以前のブログにも書きましたが、今生の別れをし、お礼を伝えてきました。
形見に、机の上にあった辞書をいただきました。
この辞書で勉強して戦争を乗り越え、医師になったそうです。

この方に会わなければ、今、私はここで生きてはいませんでした。
獣医師になることもなかったでしょう。
常に患者と共にある臨床家としての姿勢を、背中で教えてくれました。
町の小さな小児科医院でしたが、私には命の現場でもありました。

母の水腎症を触診で見抜き、すぐに転院させてくれたあの瞬間は忘れられません。
具合のよくない母を触診し、腎臓が触れない、おかしい・・・、
エコー検査のできる病院を紹介され、腎臓らしいということで都立病院へ転院となりました。
破裂していれば万が一もあったでしょう。
患者をよく診る、適切に紹介する、一生勉強を続ける、
臨床家としてあるべき姿を実際に見せていただきました。

阿部公明先生、本当にお世話になりました。
先生の熱いハートは忘れません。
私も同じように生き、いつか同じように旅立ちたいと思っています。
その日までは、私も全力で患者を診ていきます。
生前にお別れできて本当によかったです。

「もう十分生きたし、治らんものは治らんよ!」
とおっしゃっていましたね。
先日、先生の死を知りましたが、私はメソメソしませんよ。
先生にいただいた恩義は、仕事で社会に返します。
先生に助けていただいた命を、最大限燃焼させて生きていきます。