ベイエリア独身日本式サラリーマン生活

駐在で米国ベイエリアへやってきた独身日本式サラリーマンによる独身日本式サラリーマンのための日々の記録

モツ焼き

2018-07-18 16:19:19 | 食材
 モツ焼きとは、主に牛および豚の内臓を焼いて食べる料理である。元々は朝鮮半島由来の料理のようだ。筆者が暮らす長屋には、屋外の公共スペースにガスバーベキューコンロがある。それはもっぱら家族友人らとワイワイバーベキューを楽しむために使われるものであり、30代独身日本式サラリーマンには縁の無い設備であると思っていた。が、どうも長屋の住民の中には一人でステーキ等を持ち込んでコンロで焼き、それをそそくさと部屋に持ち帰る人もあるようだ。そんな30代独身日本式サラリーマンらしい利用方法があることを発見し、ペルーのモツ焼き“RACHI”を食べてからも衰えることがなかった筆者のモツ焼き欲がついに日の目を見ることになった。


このモツ焼きバーベキューの特長は以下のとおりだ。参考にしてもらいたい。



①金網
ハンバーガーやビーフステーキを調理するアメリカ式ガスバーベキューコンロは、金網仕様ではなく隙間1.5センチ程度の格子状の鉄板仕様になっているため、そのまま日本式モツ焼きを敢行すると細かく刻まれたモツはたちどころにコンロの中に落下し、ガス炎により炭と化してしまう。金網が必要なのだ。細かい目の金網は米国式ホームセンターではなく中華系スーパーに行く方が入手が簡単だ。筆者はア・ドン超級市場で一人焼肉に手ごろなサイズの金網を購入した。



②モツを買う
ハチノス、ミノ、モツ、センマイ、レバー、ハツ、タン、マメなどがヒスパニック系やアジア系スーパーで部位毎に売られている。日本で売られているハチノスやセンマイには黒い薄皮が付着しており、それを除去するのが非常に億劫とされているのだが、こちらでは見事なまでに真っ白にな状態で売られているので逆に不安になる。牛ハツやマメは真空パックされた状態で売られていて、封を開けると防腐剤的な匂いがぷーんとするのでこれまた不安になる。ハートフォード地区のスーパーでは腸は豚しか今のところ発見できていない。牛腸はアメリカ式ソーセージの皮として需要があるのかも知れない。そしてどれも丸ごとで売られており30代独身日本式サラリーマンには大量すぎるし、調理も面倒であるため、その日の好みで多くても4種程度を購入する。



③モツの下処理を紹介するサイト
モツの部位の説明や下処理方法を紹介するサイトは数多あるが、モツ鍋に関する記載が多く、モツ焼きに関する情報を得るのはなかなか時間がかかった。ついに見つけたのが、“ぷちぐる”と言う名のホームページである。家庭料理研究家のケンタ氏によって壇一雄氏の料理エッセイ本“壇流クッキング”のレシピを実際に作ってみるという試みがなされており、その中のメニューの牛豚ホルモン焼きが非常に参考になった。このサイトは他にも30代独身日本式サラリーマンを刺激するメニューがずらりと並び素晴らしい。尊敬に値する。



④モツを焼く
長屋のバーベキューコンロ周辺に誰も居ないことを確認し、モツをふんだんに入れたトレイ、トング、金網そして取り皿を持って小走りでコンロに向かい、急いでモツを焼き上げる。アメリカ式ステーキを焼き上げるに十分な火力でモツたちは、10分程度でジュージューと音を立て始める。本当は太陽の下で箸でつまんで食べながらビールをいただきたいのだが、「アジア人30代独身風の男が奇妙な肉を焼いている」という噂が長屋でたつとまずいので、逃げるように立ち去り、部屋の中でひっそりといただく。壇先生のタレが実に旨い。 下ごしらえしたモツは一度では到底消費しきれないので、残りは冷凍保存するとよいだろう。




 世界中で起きている不幸な出来事を見て見ぬふりし、ただただ食われるために生きた動物の臓物を己の欲望だけのためにせっせと洗い、捌き、下味を付ける作業は苦痛を伴う。しかし30代独身日本式サラリーマンが長屋でどれだけ心を傷めたところで何も起きないので、楽しくビールをいただくしかない。また食べたい。そして次にモツを焼くときは長屋住民に見つかって「ヤァヤァ、何を焼いているんだ」と声を掛けられたいと思う。

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