読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

「超バカの壁」(養老孟司著・新潮新書刊)

2006-01-21 16:23:56 | 本;ノンフィクション一般
1.若者の問題、2.自分の問題、3.テロの問題、4.男女の問題、5.子供の問題、6.戦争責任の問題、7.靖国の問題、8.金の問題、9.心の問題、10.人間関係の問題、11.システムの問題、12.本気の問題

まえがきで、「この本は、『バカの壁』、『死の壁』、の続編。既刊の二冊に、余計なことを書いたから、その後いろいろな相談を受けることになってしまった。お前のいうことを、具体的に自分の例に当てはめたら、どういくことになるのか。つまりその種のいわば身の上相談が増えてしまった。そうした質問を編集部の人がまとめて、それに答える形で作ったのが、本書である」といい、あとがきで「私が考えていることは、虫の話を除けば、これでおしまいである。ここまで吐き出せば、残りわずかの人生、あとは虫だけで十分じゃないかと勝手に思っている」と閉める。

全編を通じて著者が主張するのは、一元論、一元的現実、科学的客観性を前提に置くことの危険性だ。以下、著者ならではの箴言を抜粋する。

「『自分に合った仕事』なんかない」;
「仕事というのは、社会に空いた穴。道に穴が開いていた。そのまま放っておくとみんなが転んで困るから、そこを埋めてみる。ともかく目の前の穴を埋める。それが仕事というものであって、自分に合った穴が空いているはずだなんて、ふざけたことを考えるんじゃない」。

「保守の意味」;
「社会が本当に進歩するというのは、どんどん変化するのではなく日々平穏になっていくことなのではないでしょうか。つまり、我々が今防げない危険をだんだん封じ込めていけるようになることが進歩しているということになる」。

「らしさが消えた」;
「託児所がないとか仕事が大変だとかいうことは、当事者にとってはそれぞれ大きな問題です。しかしいずれも子供に価値を置いていないところから生まれているのです。少子化対策で、予算を増やしたり、援助したりというのは悪いことではないけれど小手先のことで、あまり意味がない」。

「ああすればこうなる」式とは;
「ああすればこうなる」式の考え方というのは意識中心社会ならではの考え方です。都市の人がはまりがちな考え方だと言っていい。でもその原則が通じるのは実は思っているよりも限られた範囲だと知っておいたほうがいいのです。これが第一原理になるとまずい。

「憲法第九条と後ろめたさ」;
「初めから人間は罪を背負っているものである。その後ろめたさとずっと暮らしていく、つき合っていくとというのが大人なんです。私が憲法九条改正に反対する理由もそれです。九条はそのままにしておいていい。そうしておけば、軍隊を動かすのは何となく後ろめたいから、いろいろと論争が起きるでしょう。それでいいと思っています」。

「国立宗教の誕生」;
「無宗教で慰霊というのは無理があります。もしも中立派がいうところの無宗教な墓地を作ったら、その管理もすべて国がやるということになる当然、そこで働くのもすべて公務員になります。それは名前こそ「○○教」ろなっていなくとも、実際には国が新しく宗教を作ったと同じことになります。それは政教分離に反する行為ではないですか」。

「震災と戦争のPTSD」
「もともと日本人は世界でもっとも災害に対して強い人たちだったはずです。なぜならば、歴史上記録にあるマグニチュード6以上の地震の一割が日本で起こっていて、噴火の二割が日本で起こっているのです。その日本の陸地面積は世界の四百分の一にすぎません。0.25%しかない陸地の上で世界的な大災害の一割、二割が起こっているということは、かなりひどい災害国家なのです。そこでずっと生きてきたわけですから、本来災害に対する耐性は世界一だった」。


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