読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

6人のボブ・ディランが語る、「I'M NOT THERE」(アメリカ/2007年)

2009-05-24 07:39:27 | 映画;洋画
~アルチュール(ベン・ウィショー)は、プロテスト・ソングを書くのを辞めた理由を背広姿の男たちに詰問される。彼はアメリカを放浪しながらソングライティング技術を学んだウディ(マーカス・カール・フランクリン)や、社会派フォーク歌手のジャック(クリスチャン・ベイル)らについて語り始める。やがて彼らの物語は一つに結び付き……。(シネマトゥデイ)~

監督:トッド・ヘインズ
脚本:トッド・ヘインズ、オーレン・ムーヴァーマン
音楽:ボブ・ディラン
撮影:エドワード・ラックマン
出演:クリスチャン・ベイル(ジャック/ジョン牧師)、ケイト・ブランシェット(ジュード)、マーカス・カール・フランクリン(ウディ)、リチャード・ギア(ビリー)、ヒース・レジャー(ロビー)、ベン・ウィショー(アーサー)

シャルロット・ゲンズブール(クレア)、ブルース・グリーンウッド(キーナン・ジョーンズ)、ジュリアン・ムーア(アリス・フェビアン)、ミシェル・ウィリアムズ(ココ・リヴィングトン)、デイヴィッド・クロス(アレン・ギンズバーグ)

今日で68歳になるボブ・ディラン。私が彼のことを知ったのは、1972年のガロの名曲「学生街の喫茶店」の中で出てくる、その山上路夫さんの詞「・・・片隅で聞いていた ボブ・ディラン」でした。私の洋楽体験を振り返ると、カーペンターズのレコード「スーパースター」やミッシェル・ポルナレフの「シェリーに口づけ」などを買ったのが1971年、ビートルスをやっと知った頃ですので、ボブ・ディランの歌などは遠い存在でした。

ボブ・ディランにはマーティン・スコセッシ監督の「ノー・ディレクション・ホーム」(2005年)がありますが、私はまだ観ていません。本作を観てこの映画も観てみたくなりましたよ。本作では、ボブ・ディランという稀有なミュージシャンを6つの人格としてとらえ、それを6人の役者に演じさせるという手法を取っていますね。

一人の人物を二人が演じた作品としては、マリリン・モンローを描いたアシュレー・ジャドとミラ・ソルヴィーノが競演したティム・フェイウェル監督の「ノーマ・ジーンとマリリン」(1996)が思い浮かびます。本作では一人の人間を6つの人格に分けるというというところが、凄いところです。その6人は次のような人格と人名に分けられ、それぞれの役者が演じました。


「ウディ」;ホーボー(貨物列車にタダ乗りする放浪者)のように放浪する幼少時代。黒人少年(マーカス・カール・フランクリン)この名前は、ボブ・ディランがメンターとしたアメリカ合衆国のフォーク歌手・作詞家・作曲家、ウディ・ガスリー(Woodrow Wilson "Woody" Guthrie, 1912年7月14日 - 1967年10月3日)にちなんだものだと思います。


「アーサー/アルチュール」;天才詩人ランボーのような才能のきらめきを見せる青年時代。(ベン・ウィショー)
<殺しても残したい香りがある、「パフューム ある人殺しの物語」(独、仏、スペイン/2006年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/891c78fd510a4e45cc497f4f39e81b43


「ジャック/ジョン“牧師”」;プロテスト・ソングを歌う伝道師的時代。(クリスチャン・ベイル)
<二人のマジシャンのせめぎ合いと悲哀を描く「プレステージ」(米、英/2006年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/867b99524d6abfe19e17a79e3553fe72


「ロビー」;ジョーン・バエズとおぼしき女を愛した男。(ヒース・レジャー)
<ロック・オペラを思わせるアクション・アドベンチャー、「ROCK YOU!」(アメリカ/2001年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/cf84af88065ac5b7cfad97429974df14


「ジュード」;マスコミの寵児になりながらもフォークを捨てた“裏切り者”。(ケイト・ブランシェット)
<愛する人のためになら徹底した冷酷な女になれる、「さらば、ベルリン」(米/2006年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/817b3fb01e3b9b6032ad1fdf2dc21765


「ビリー」;初老のディラン。(リチャード・ギア)
<落ちぶれたジャーナリストの意地と執念、「ハンティング・パーティー」(2007年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/c24bf81c66e180f734159a590325dece


エンディングで追われるように貨車に乗り込んだ「ビリー」が、荷に埋もれた中から「これはファシストを壊す機械」と書かれたギターを発見しますが、これはウディ・ガスリーが自分のギターに書いた有名なスローガン「THIS MACHINE KILLS FASCISTS」(このマシンは独裁者たちを殺す)ですね。「ウッディ」に始まるストーリーが、一巡して終わるといった構成が心憎いところです。

<ボブ・ディランのメンター、ウディ・ガスリーと「わが祖国」>
http://blogs.yahoo.co.jp/asongotoh/52861304.html

<DYLAN 07>
http://www.dylan07.jp/

<ボブ・ディラン - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%96%E3%83%BB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%A9%E3%83%B3



さて、本作を撮ったトッド・ヘインズ監督(Todd Haynes、1961年1月2日 - )はアメリカ合衆国の映画監督・脚本家。カリフォルニア州ロサンゼルス出身。他の作品として「ポイズン」(1991)、「SAFE」(1995)、「ベルベット・ゴールドマイン」(1998)、「エデンより彼方に」(2002)などがあるようです。

<トッド・ヘインズ - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%98%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BA

<ボブ・ディランから励まされたトッド・ヘインズ監督が『アイム・ノット・ゼア』を語る>
http://cinematoday.jp/page/N0013634


本作の中で「ジュード」が慕う詩人アレン・ギンズバーグが登場します。彼については全く知らなかったのでここでチェックしておきます。

アーウィン・アレン・ギンズバーグ(Irwin Allen Ginsberg, 1926年6月3日 - 1997年4月5日)は、「アメリカの詩人。ジャック・ケルアックとともにビート文学の代表者のひとり。ニュージャージー州パターソンにロシアからのユダヤ系移民のルイス・ギンズバーグとナオミ・リーヴィの子として生まれる。代表作に、「吠える」等。朗読の名人であった」。

<アレン・ギンズバーグ- Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%AE%E3%83%B3%E3%82%BA%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%B0


このアレン・ギンズバーグを演じたのが、デイヴィッド・クロス。

デイヴィッド・クロス(David Cross、1964年4月4日 - )は、アメリカ合衆国ジョージア州アトランタ生まれのコメディアン・俳優・プロデューサー・脚本家・声優である。「メン・イン・ブラック」シリーズへの出演があるようですが、いまひとつ思い出せません。

<デイヴィッド・クロス- Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%82%B9_(%E3%82%B3%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%B3)


その他の俳優陣は以下の記事で取り上げました。

シャルロット・ゲンズブール(クレア)
<女優さんと結婚するには相当の覚悟がいります、「僕の妻はシャルロット・ゲンズブール」(仏/2001)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/1e05722c0b589d7d1fb18f33c150868f

ジュリアン・ムーア(アリス・フェビアン)
<20年後の哀しい世界、「トゥモロー・ワールド」(アメリカ・イギリス/2006年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/22291c2a720fcd72cbcce7fb473719b9

ミシェル・ウィリアムズ(ココ・リヴィングトン)
<公認会計士に仕組まれた罠と、「彼が二度愛したS」(アメリカ/2008年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/8d65a3f4dd8ed0921617d31746317fde

ブルース・グリーンウッド(キーナン・ジョーンズ)
<『インタビュー・ウィズ・シリアルキラー』(原題The Riverman、アメリカ/2004年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/57b08e450e17d7a5d62c7e755135f075

<私の中のボブ・ディラン~時代を先導した名曲たち~>
http://blogs.yahoo.co.jp/asongotoh/57664361.html


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