読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

権力闘争に巻き込まれ翻弄される二人の愛の形、「蝉しぐれ」(2005年)

2009-05-03 20:39:45 | 映画;邦画
監督・脚本:黒土三男
原作:藤沢周平
音楽:岩代太郎
撮影:釘宮慎治
出演:(牧文四郎)市川染五郎、(文四郎・子役)石田卓也、(牧助左衛門)緒形拳、(登世)原田美枝子、(小柳甚兵衛)小倉久寛、(ます)根本りつ子、(ふく)木村佳乃、(ふく・子役)佐津川愛美、(藤次郎)田村亮、(磯谷主計)柄本明、(関口晋助)大滝秀治、(青木孫蔵)大地康雄、(里村左内)加藤武、(犬飼兵馬)緒形幹太、(島崎与之助)今田耕司、(小和田逸平)ふかわりょう

~江戸時代の東北の海坂(うなさか)藩。下級藩士の牧文四郎(市川染五郎)の父(緒形拳)は、藩の派閥抗争に巻き込まれ、冤罪によって切腹を命じられた。以後、文四郎は謀反をおこした父の子として数々の試練にさらされるが……。(シネマトゥデイ)~

原作は、1986年7月9日から1987年4月13日にかけて「山形新聞」夕刊で連載。1988年に文藝春秋 から単行本が刊行されています。時は、日本が後にバブル経済と言われるイケイケの時代に入る頃。藤沢さんはこういう時代になぜこの小説を書いたのか、興味がわきました。物語は、普請組につとめる父、今で言えば、県土木事務所の幹部でしょうか、その一家の長男とその牧家の近隣に住む小柳家の娘の恋と、藩に巻き起こった世継問題で翻弄される二人の運命を描いています。

結局、藤沢さんがなぜ?という疑問には答えを見つけることはできないのですが、タイトル「蝉時雨」(多くの蝉が一斉に鳴きたてる声を時雨の降る音に見立てた語、夏の季語)、師から授かる秘伝「村雨」(ひとしきり激しく降り、やんではまた降る雨。にわか雨。驟雨)という二つ言葉に作者が描きたかったもののヒントが隠れているのではという想像の域を出ないまま。

<藤沢周平作品ベスト10!
「蝉しぐれ」>
http://ttu.o-oku.jp/

さて、これで藤沢作品で映画化されたご作品を観終えました。映画化の年代順に作品を並べると次のようになります。

「たそがれ清兵衛」(2002年 配給:松竹 監督:山田洋次 出演:真田広之、宮沢りえ)
「隠し剣 鬼の爪」(2004年 配給:松竹 監督:山田洋次 出演:永瀬正敏、松たか子)
「蝉しぐれ」(2005年 配給:東宝 監督:黒土三男 出演:市川染五郎、木村佳乃)
「武士の一分」(原作:『隠し剣秋風抄』盲目剣谺返し 2006年 配給:松竹 監督:山田洋次 主演:木村拓哉、檀れい)
「山桜」(2008年 短編集『時雨みち』収録 配給:東京テアトル 監督:篠原哲雄 主演:田中麗奈、東山紀之)


<やっぱり男はつらいよ、「たそがれ清兵衛」(2002年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/b345a918af4c86e0ef5a8bf7fbcb2854

<爪を隠した能ある剣豪とその愛を描く、「隠し剣 鬼の爪」(2004年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/e7f0feb2378f68080ad68e94d080fffc

<切なくも神々しいサムライの本懐、「武士の一分」(2006年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/4550556a6e20c604ca74d20293cdde25

<ソメイヨシノの儚さではなく、細くも長い切なさを描く、「山桜」(2008年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/1e92c86411cb528179ea9b9080692b61


監督の黒土(くろつち)三男さんは私と同郷、熊本県出身。なんと言っても長渕剛さん主演の「英二」(1999)が印象に残っています。黒土監督が本作を撮るに到った経緯については、次のようなエピソードがあるそうです。

~(1990年に本書を読んだ)黒土監督は、編集者を介してすぐに映画化を打診しましたが、なかなか藤沢さんのOKは出ませんでした。「ならばシナリオを書いて読んでもらおう」と先に執筆を進め、丸3年がかりで許可を得たそうです。「でも、それからがまた長かった。時代劇っていうのは、撮影に莫大(ばくだい)な費用がかかるんですよ」。構想から15年。紆余(うよ)曲折を経て完成した。~

黒土三男(くろつち みつお、1947年(昭和22年)3月3日 - )は、「日本の脚本家・映画監督。熊本県熊本市出身。熊本県立熊本高等学校、立教大学法学部を卒業後、木下惠介プロダクションの助監督となる。2年間の勤務を経てフリーの脚本家となる。1978年(昭和53年)TBS系で放送された『コメットさん』でTV脚本家としてデビューした。1988年「とんぼ」「うさぎの休日」で第7回向田邦子賞受賞。1989年(平成元年)『オルゴール』で映画監督デビュー。自身がメガホンを取った作品は全て自らが脚本を手がけている」。

「山田洋次監督作品映画『幸福の黄色いハンカチ』で脚本家の一人として参加し、以来、木下惠介とともに山田洋次を師として仰ぐ。脚本、監督作品とも長渕剛を主演として起用したものが多い(長渕剛の『浦安の黒ちゃん』は黒土三男を元に書かれた曲である)が、映画『英二』の演出を巡り対立したため現在二人の間に交流はない。2006年5月、映画『蝉しぐれ』の撮影時に出会った庄内平野のお米を応援する「庄内米ファンクラブ」の初代会長に就任した」。

<インタビュー>
http://www.ontona.com/hito/interview/050928/top.htm

<黒土三男-Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92%E5%9C%9F%E4%B8%89%E7%94%B7

音楽を担当した岩代太郎さん。日テレアナウンサーの松本志のぶさんと結婚され、紳介さんには「がきデカ」のこまわり君呼ばわりされていますが、昨年開催された北京オリンピックでシンクロナイズドスイミング日本代表(通称:マーメイド・ジャパン)の音楽を手掛け、更にジョン・ウー監督作品『レッドクリフ』の音楽を担当するという今や引く手数多の売れっ子作曲ですね。岩代さんは東京出身ですが、お父さんの作曲家・岩代浩一が熊本出身ですね。

<岩代太郎>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B2%A9%E4%BB%A3%E5%A4%AA%E9%83%8E


さて、俳優陣。あえて私がコメントするまでもありません。個人的な備忘録として、写真とウィキペディアへのリンクを貼っておきます。

<市川染五郎>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%82%E5%B7%9D%E6%9F%93%E4%BA%94%E9%83%8E_(7%E4%BB%A3%E7%9B%AE)


<木村佳乃>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%A8%E6%9D%91%E4%BD%B3%E4%B9%83

私と同じ年の女優さんである原田美枝子さん。1974年、高校一年生で映画「恋は緑の風の中」(家城巳代治監督)でのデビューは衝撃的でした。

<原田美枝子>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E7%94%B0%E7%BE%8E%E6%9E%9D%E5%AD%90


<石田卓也>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%B3%E7%94%B0%E5%8D%93%E4%B9%9F_(%E4%BF%B3%E5%84%AA)


<佐津川愛美>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%90%E6%B4%A5%E5%B7%9D%E6%84%9B%E7%BE%8E

最後は、「武士の一分」にも出演していた大地康雄さん。大地さんも熊本生まれです。

<大地康雄>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%9C%B0%E5%BA%B7%E9%9B%84


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