歌わない時間

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中島京子『小さいおうち』

2013年07月14日 | 本とか雑誌とか
中島京子『小さいおうち』(文春文庫)について。今年の三月、入院中に読んだ本です。直木賞を獲ったというニュースでこの小説のことを知って、それ以来、気になっていました。このタイトルは、岩波の同名絵本と関係あるに違いないと睨んでいたので。(ただし岩波のは、正確には『ちいさいおうち』でした。)

話は昭和五年の春から。『小さいおうち』作者は戦後も戦後、一九六四年の生まれ。なのに、昭和十年代の東京の中流家庭の空気感が上手に再現されている(ように感じられる)。巻末には参考文献をあげておいて欲しかった。

最終章でいっきにこの小説は地を蹴って離陸していきます。そのちからわざは確かに見もの。ただいろんなプロットのさばき方はあまり綺麗ではありません。仕上げはざくざくしている。過去と現在がアクロバットのように交錯するところはロバート・ゴダードのようですが、ゴダードもまた、小説の終わらせ方には苦慮していた。

『小さいおうち』が直木賞とるほどの作品かどうかは疑問だと思いました。最終章の力わざに対してではなく、戦前のお女中生活の再現に対しての努力賞かも。山田洋次監督で映画化されるそうです。

リー・バートンの岩波版『ちいさいおうち』への言及はしかしさほどでもなかった。最近あらためて大人買いしたほど気に入っている絵本なんですけどね。でも中島さんも子供のころ『ちいさいおうち』に接して、その記憶を今もわすれずにいる人なんでしょうね。

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