歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

アガサ・クリスチィ

2008年08月05日 | 気になることば
■先月末にニュースとして報道されたことだが、マイクロソフトが、カタカナ言葉の長音表記について、これまでの「2音の用語は長音符号を付け、3音以上の用語の場合は(長音符号を)省くことを “原則” とする」という社内規定を改めて、「より自然な発音に近い表記を採用」することにしたそうだ。

■確かに短い音節の語については「ユーザ」とか「ルーラ」とかは変なので、「ユーザー」「ルーラー」としたほうがいい。でも、正直なところ、もすこし長い言葉になると、「プリンタ」でも「プリンター」でもどちらでもいいんぢゃないかと思ってしまう。そりゃ仕事で書く文書ではどちらかに統一せざるをえないだろうけど、基本的にはその人の日本語のセンスによって、「ー」をつけたりつけなかったりで、かまわないんぢゃないかしらん。今後、語尾の「ー」をつける人がだんだん増えていくのはやむを得ないことで、それは別にかまわないが、わたしが自分の好みで「フォルダ」とか「エディタ」とか書くのにケチをつけて「今はフォルダーって書くんですよ」とか言う人が出てくるのは困るなあ。

■この流れは、おそらく、IT用語にとどまらず、それ以外のカタカナ言葉についても、語尾の「ー」をつける方向にゆるやかに進んでいきそうだ。たとえばわたしは、かの探偵小説作家も、かの指揮者も、どちらも「クリスティ」と書くんですけど、これも「クリスティーでしょ!」とか言われるようになるのはイヤです。

■指揮者のほうはさて置いて、アガサ・クリスティについていえば、この人のファミリーネーム(これは「ファミリネーム」ではおかしいですな)をカタカナでどう書くかは、長い間、実はついこの前まで出版社によってまちまちでした。ハヤカワ文庫では「クリスティー」、東京創元文庫では「クリスチィ」、新潮文庫では「クリスティ」だったのですよ! わたしとしては創元文庫の「クリスチィ」という書き方もいかにもアンティークな雰囲気で好きだった。東京創元文庫のクリスチィは訳もよかった。とくに短編は創元文庫の〈クリスチィ短編全集〉と〈……の事件簿〉シリーズで揃えて、何度も読んだ。

■さらに脇道にそれると、探偵Poirotの表記もハヤカワの「ポアロ」に対して東京創元は「ポワロ」と対立していて、これもわたしは「ポワロ」のほうが好き。いまでも自分では「ポワロ」と書きます。

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