歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

「歩って」。

2006年08月06日 | 気になることば
いま何冊か同時進行で読み進めていてぐちゃぐちゃなんだけど、そのうちの一冊、浅田次郎の『霞町物語』のなかで、「歩いて」という表現を期待するところに「歩って」という言い回しが出てくる。

「ああ……おめえか。何だかよ、歩ってるうちに、頭ん中が真黄色になっちまった。毒だな、ここいらは」(「卒業写真」)

麻布・霞町でずっと写真屋をやってきた明治生まれの祖父が、孫とともに神宮外苑の銀杏並木の下を歩いているところ。このすぐ後、息子の学徒動員の出陣式の思い出を語りはじめた祖父の言葉のなかにも、もう一度「だからずっと、どうしてこんなことになっちまったんだろうって考えながら歩ってきた。」とある。「歩って」は、誤字ではなくて浅田次郎の表現のままなんだろうと思われる。こういう言い方するのかな。よう分からん。

このほかにも『霞町物語』にはわたしがはじめて目にする東京方言がたくさん出てくる。

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