≪空想、これは空想です≫
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最初
『さみしい、さみしい、さみしい』
と思って
このままでは
堪えられない
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よし
山に入って
イノシシか
鹿でも狩り出して
鍋で食おう
と思って
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それで山に入ったら
クマに捕まった
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器用に縄で
私は縛られて
一回ぐらい
蹴られたり
しながら
巣の洞穴まで
山道を歩いている
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前を行くクマの
背中の
筋肉とか見ていると
『人間か?』
とも思う
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妙に上手に
縛ったしな
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洞穴について
クマは私を木に繋いで
なんか用事がある
帰って来たら食う
といった調子で
来た道を下りて行った
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なるほど
さっき私と出会った時も
その用事に
行く途中だったのか
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これでまたあれだよ
帰ってきて
暫く一緒にな
暮らしていれば
情が移って
「ヨシ!
食わない事にする!」
って
クマ
宣言するかも
しれないし
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あれだなあ
そうすると
クマと暮らすか
食われるか
と云う選択は
それを迫られた
女性というのは
古代より
無数にいたのだろうなあ
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おらは
どっちだろう
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このまま
事故にでもあって
クマが戻らなければ
別の展開はあるのだが
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そうこうするうち
山の木の間を
クマの耳が
ぴょこぴょこ
近付いてきた
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ダメか
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クマは
帰って来た
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よく見ると
手にホームセンター
コメリ
の袋を下げている
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やっぱり
人間じゃないの?
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ワイナリーの人?
◇
◇
クマは
コメリの袋をドサッと投げ出す
クマの臭い
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ダメか
やっぱりクマだ
漢字で書こう
熊だ
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袋を見たら
味噌だ
味噌煮か
そうだろうなあ
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それには賛成だ
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◇
こう
あれだね
ちゃんとさばいた
鶏肉かなんか
奥から出して
それで
味噌煮とか
してくんないか
おめも食え
とかな
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ネギとか
きざむのにな
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お役に立ちます
生かしておいて
もらえれば
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◇
そしたら
熊は
キョトンと
不思議そうな顔で
こっちを見て
お前は
どこかで見た事がある
と言っている
手旗信号
みたいなやつで
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しめた
いい展開だ
じゃあこのまま
知り合いのふりをすれば
助かる
とも思える
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熊は言った
知り合いだから
背中からさばくと
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ダメか
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手旗信号だから
誤訳が
あるとよいが
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