TVを見ていたら
ニュースで
そう言うから
今日
ブタちゃんを見ないな
と
思っていたんだ
◇
TVでは
そんなに高い山じゃないから
誰かが援けに行くだろう
と言っていた
◇
◇
行った
◇
行ってみれば
確かに
ウチのぶたちゃんだ
◇
ああブタちゃん
太ったねえ
◇
御飯
美味しかったのか
◇
そうか
すまない
◇
ああ
ブタちゃん
膝だな
膝にくるよこれは
◇
こうなったら
木の台座に
車輪を付けて
1800年前に
諸葛孔明が乗ったような車を作ってな
あいつ
馬に乗れなくて
蜀に攻め入ったとき
ここは是非馬に乗り換えて
と部下に言われた時
『まぁ、馬なんで野蛮 [だわ] 』
と言ったそうだからな
◇
◇
まあ
それはともかく
こういう場合は
ブレーキだよ
ブレーキが肝心
◇
舵のまえに
まずブレーキが
確実に動作しないとな
予備を入れて
3系統は欲しい
◇
と言ってるまに
早くもブタちゃんが
車に乗って
走り出す
あぶない!
ぶたちゃん
ブレーキがまだなんだ!
慌てて飛び乗ったが
ブタ2頭
つうか
ブタちゃんと私
重量が充分有りすぎて
速い
速い
◇
速いなあ
ブタちゃん
止まれないね
止まれないぞ
◇
これはね
ぶうちゃん
この真っ直ぐの道が終わったら
もう終わりだよ
◇
そうだ
この先
生きていても
仕様がなかったかも
知れない
いっそ
手ごろな崖を見つけて
飛ぶか!
ブタちゃん
◇
向こうへ行っても
一緒だよ!
◇
◇
突然
ボム!
と空気のバルーンに
当たった様な気がして
車は止まった
◇
驚いて
振り返ると
◇
クマだ!
クマさんだ!
見れば
身の丈3メートルはある
大きいクマさんが
車のはしっこを
つかんで
小揺るぎもしないで
立っている
◇
て、典韋だ!
まるで
大旗を片手で地面に突き立て
『小揺るぎもしなかった』
典韋の様である!
◇
◇
クマさんは
歩けないブタちゃんを
軽々背負って
山のふもとまで
下りてくれた
◇
ここまで来たら
タクシーがある
◇
クマさんは
しゃべらず
表情も変えず
手も振らずに
帰って行った
◇
手をふって
見送る私たち二人
◇
◇
なあブタちゃん
いい人だったね
◇
大きかったね
◇
ケータイで
呼んだタクシーが来て
それで家に帰りました
◇
北御牧市八重原で
四方民家のない
山の上で
タイヤを崖に落として
JAFを呼ぼうとしたら
ケータイがなかった
おととし
2014年の夏を
一回
思い出しました
◇
◇
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