詩のノォト fossil in blue

生涯にわたる詩のブログ、生と死に揺らぐ詩、精神の暗く重い音のない叫びの詩

音叉の夢

2004年11月08日 | 20才~26才
わたしは音叉を持っていた
誰かの音叉
学校の中
自分の音叉が探しても見つからない
―自分の音叉がいい―
構造も変わらない
質も同じ
気軽に借りることも出来る
のに
胸が苦しくて
締め付けられるほど
―何故自分のを使えないんだろう―と思った
―みんな自分の音叉を使っているのに―
―どうしてわたしはこんな悲しい思いをしなければいけないんだろう―
わたしの音叉
さっきまであの黄色いバックに入っていたはずの
―入っていたはずの―?!
わたしの音叉は
何故消えてしまったんだろう
何故、今、わたしの手元に無いの
わたしだって音叉を使いたい
自分の音叉でちゃんと調弦して
ちゃんと調弦して
そして
自分の
ギターが弾きたい
―わたしはギターが弾きたいの―
ギターが弾きたい
それだけ
それだけなのに
なのに
わたしの音叉がない
―guitar―!?
ギターがない
肝心のギターはどこにあるの
誰か見た?
いいえ、誰も見てないわ、誰かの声
その時
真っ暗な遠い宇宙空間の
無数の星と星の間に
肌色のギターが
漂っているのを見た
真っ白な
真新しい弦が
うれしそうに
ピンと張りつめられて
真っ黒な暗闇に浮き出るように光っていた
わたしはそのギターを知っているけど
わたしのものではない
でもそれはわたしのものだわ
だってほらわたしに愛されるのを待って
あんな寒々とした
生物のいない空間だけの中を
流れている

―音叉がないとギターが弾けない―
わたしは悲しみに満ちたわたしの全存在で音叉を持っていた
誰かに借りた音叉かもしれない
わたしは心の中でもがくのを諦めて
音叉をひざで弾いてみた
音叉はやっぱり鳴らない
見ると音叉の先が二つとも割れていた
中に錆びて赤茶けた鉄の肌が見えた
それはもはや音叉ではなく
音楽の手足でもなく
ただの鉄くず
―わたしの心が音叉を壊したのかもしれない―
わたしの心は
錆びた鉄の肌に重なって・・・

覚醒した

86.12.23



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