Annabel's Private Cooking Classあなべるお菓子教室 ~ ” こころ豊かな暮らし ”

あなべるお菓子教室はコロナで終了となりましたが、これからも体に良い食べ物を紹介していくつもりです。どうぞご期待ください。

ダマスクローズ 221

2021年04月24日 | ダマスクローズをさがして ― Ⅲ

  

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チョウセンアサガオ(朝鮮朝顔、Datura metel、別名マンダラゲ(曼陀羅華)、キチガイナスビ(気違い茄子)、トランペットフラワー、ロコ草)は、ナス科の植物。園芸用にはダチュラの名で広く流通しています。原産地は南アジア。日本へは、江戸時代(1684年)に薬用植物としてもたらされ、現在は本州以南で帰化、野生化したものが見られます。

一年草。草丈は1mほどで茎はよく枝分かれし、葉は大型の卵型で、長さ10~20センチメートル、幅7~15センチメートル。夏から秋にかけて長さ10~15センチメートルほどの漏斗状の白い花を咲かせます。萼は筒状で、長さ4~5センチメートル、先が5つに分かれ、果実は球形で直径3~5センチメートル。短いとげが多数付いており、中に多くの種子が入っている。熟すと割れて種子を飛ばします。

有毒植物で、経口後30分程度で口渇が発現し,体のふらつき、幻覚、妄想、悪寒など覚醒剤と似た症状が現れます。成分はヒヨスチアミン( Hyoscyamine), スコポラミン( Scopolamine) などのトロパンアルカロイドなどです。

 

チョウセンアサガオに纏わる中毒事件には、次のような事例があります。

家の畑から引き抜いた植物の根を使って調理したきんぴらを食べた人が、約30分後にめまい、沈鬱となり、以後瞳孔拡大、頻脈、幻視等の症状を呈して入院。ゴボウと「チョウセンアサガオの根」を間違えて採取、調理し食べていました。

1家族3名がチョウセンアサガオを誤食し、意識障害・幻覚などの症状を訴える。チョウセンアサガオの開花前のつぼみをオクラと間違え、かき揚にして食べていた。

家庭菜園でチョウセンアサガオを台木としてナスを接ぎ木し、実ったナスを加熱調理し喫食したところ、意識混濁などの中毒症状を発症した。

 

チョウセンアサガオの薬効は、古くから知られており、中国明代の医学書「本草綱目」にも、患部を切開する際、熱酒に混ぜて服用させれば苦痛を感じないとの記述があります。 ベラドンナやハシリドコロなどと同様にアトロピンを含んでおり、過去には鎮痙薬として使用されました。世界初の全身麻酔手術に成功した江戸時代の医学者である華岡青洲は、本種を主成分としていた精製した麻酔薬「通仙散」を使用していました。このことから日本麻酔科学会のシンボルマークに本種の花が採用されています。

薬用植物で毒性も著しく強く、「キチガイナスビ」といった別名を持ち、近年ではエンジェルズ トランペットの名で、園芸店で販売されている場合もあるので要注意。

和名のチョウセンは特定の地域を表すものではなく、「在来種、日本のものによく似ているが少し違う」という意味での命名です。また、アサガオの名を冠してはいるが、チョウセンアサガオはナス科に属し、ヒルガオ科に属するアサガオとは別種で、単に花がアサガオに似ていることによる命名です。なお、キダチチョウセンアサガオ属は、木本化する多年草のグループで明確に種類が異なります。

                                                                       

ギリシャの自然主義者テオプラストスは、5枚の花びらから100枚の花びらまで、さまざまな薔薇について書いてきました。6/6で既に取り上げたように植物誌の中で、『花びらの数、花びらの滑らかさ、色、香り、薔薇には様々な種類があります。

殆どの薔薇の花は5枚、幾つかは12枚或いは20枚。たくさんの花びらの薔薇もあるそうで100枚の薔薇もあるそうだ。そのような薔薇はギリシャのピリッポイ(Philippi)近辺で育てていて、パンガイオンの丘から移植したということです。

内側の花びらは非常に小さい。香りがなくて大きな花びらではないもの。大きな花びらで花びらの裏側がざらついているものは香りがいい。よく言われているように、色と香りのいいものは土地柄が影響しているようだ。土が同じでブッシュの中で育っていても甘い香りノイバラ、香りのない薔薇はあるようだ。最も良い香りの薔薇はキュレネの薔薇だ。これで作る香水は最も香り高い。麝香ナデシコの香りも他の花も、特にサフランの香りは(この花は場所によって薔薇つきが大きいが)この地のものが一番優れている。中略、薔薇の茂みは、焼いたり、切り取ると、今までよりも良い花が咲くようになります。 放っておくと茂りすぎる。 時々移植したほうが薔薇にとっていいようです。 野生種は茎と葉の両方が粗く、花も鈍い色の小さな花になってしまいます。』と述べています。

又、ヘロドトスは、1/18で『ミダスの息子の庭にある薔薇は、60枚の花びらを持ち、他のすべての薔薇を超える香りを持っている。』又、『これらの薔薇は、萼片、棘、ローズヒップがR. gallicaに似ている。』ともご紹介をしました。

レーンフォックス(Robin James Lane Fox 、1946/10/5生まれ、、英国の古典主義者、古代の歴史家、園芸作家)は、「これらの薔薇がR. x damascenaではなくR. gallica であると信じている人はたくさんいる。」と述べています。しかし、植物全体の形態と構造の説明がなければ、その内容は判然とはしません。しかし、テオプラストスやヘロドトスが野生の薔薇ではなく、栽培種の薔薇について説明しているという事は間違いなさそうです。そして、ロサ ダマスケナ以外に、以下の説明に合致する薔薇は今のところ存在しないように思えるのです。

 

ローマ人は、公的、社会的、個人的な生活の中で薔薇に取り憑かれていました。香りであれ、芸術、医学、衛生、衛生、装飾、神々への贈り物であれ、庭での使用であれ、薔薇はいたるところにありました。花はローマ世界で非常に重要であり、遠くの国から運び込まれた花と競わせる程の花がない位にローマの植物栽培は世界の最前線にありました。この状況を説明する情報は多数あります。

古代地中海の花卉園芸に関して、テオプラストスは、ca.310~ca.287の間に書いたHistoria Plantarum(The History of Plants)の中で薔薇を賞賛していますし、プリニウスは、Naturalis Historia XXI の冒頭でも花と花輪について語っています。プリニウスは、とりわけ、アテネのムネシテウス(Mnesitheus of Athens、紀元前4世紀)、エジプトのアレクサンドリアの偉大な学者であり詩人であるカリマコス(紀元前311年から240年)、およびダマスカス出身のシリアギリシャ人であるダマスカスのアポロドルス(Apollodorus, BC181)からも例を引いて説いています。

  

  

BC30〜20のローマのプリマポルタ(Prima Porta)にあるリヴィアのヴィラ(Villa of Livia、古代ローマの別荘)に描かれた庭。下の絵は上の一連の絵の一部分です。

 

描かれた絵を分析した結果、ヴィラに描かれた薔薇をロサ ケンティフォリア或いは、ロサ ガリカと特定するには疑問が残るという結論になります。

                                   

コジャッティ(Coggiatti、1986~) の述べる、この花に関する「診断的要素、植物の習性、花の一般的な形態学、5枚の花びらの鮮やかな赤色、歴史的特徴のいくつかの考慮事項」は、ガブリエル (Gabriel ,1955~) が提案したダマスクローズの可能性を無視していますが、この絵を見る限り、Coggiattiは間違っているように思えます。 描かれているバラは軽く二重になっているため、この花は種ではなくハイブリッドを示しています。ロサ ガリカの花びらがわずかに2倍になることがあっても2倍になることはないからです。現実的には、当時わずかに二重の花を持つ薔薇である可能性があるのはダマスクだけでした。 おそらく一重のローザガリカと八重のロサ センティフォリアを混同したようです。

  

             ロサ センティフォリア

 https://jp.depositphotos.com/49810921/stock-photo-rosa-centifolia.html