超人日記・俳句

自作俳句を中心に、自作短歌や読書やクラシックの感想も書いています。

<span itemprop="headline">ロシア象徴派とツァラトゥストラ</span>

2010-07-21 00:52:51 | 無題

最近、亀山郁夫氏の「終末と革命のロシア・ルネッサンス」を読んでいる。
今日はロシア象徴派の詩人アンドレイ・ベールイとアレクサンドル・ブロークの項を読んだ。
彼らはともに哲学者ウラジミール・ソロヴィヨフのもうすぐ世界の終りが来るという預言に心を奪われた。そして世界の終わりを待望し、終末に現れる理想の女性ソフィアを熱望した。
彼らはそれぞれに、自分の憧れの女性に理想の女性ソフィアのイメージを投げかけ、彼女たちを崇拝した。
ベールイはアルゴナウタイ、つまり「古代ギリシアの黄金の羊毛を求めるアルゴ船の乗組員」という名の芸術団体を結成し、世の終わりを待ち望んだ。今日の夕陽の色はただ事ではない、この世の終わりの予兆に違いない、などと話し合った。
彼らにとっては何もかもが世界の終りの兆候となりえた。彼らは兆候知の病に取りつかれたと言ってもいいだろう。何気ない出来事がこの世の終わりの前兆に感じられ、尋常ではない時間を生きていることに陶然とした。
けれどもいくら待ってもソロヴィヨフの説いた時間の終わりは到来しない。ベールイもブロークも、世の終わりを待望し、理想の女性ソフィアを待ち望み、やがては失望に終わるプロセスを捉え直し、自分たちの悲喜劇を笑うアイロニーの視点を持つに至るのである。
そこでブロークは神秘家や理想の女性や道化が登場する狂想曲的なコメディー、「見世物小屋」を書き、
これをメイエルホリドが演出した。
もはやブロークは世の終わりを待ちわびる神秘家ではなく、苦悩を通じて歓喜へ至るディオニュソスに自分をなぞらえていた。
ここで決定的な影響を果たしたのはニーチェ愛好家のロシア最大の古典学者イワーノフである。
私は一人のディオニュソス研究家イワーノフが、ロシア象徴派とその後のロシア・アヴァンギャルドの芸術家たちを動かす立て役者となった時代の面白さに思いを馳せた。
異様な光を放つ夕暮れの空を見ながら、ルドルフ・ケンペのリヒャルト・シュトラウス集を取り出して、「ツァラトゥストラかく語りき」を真摯に聞きたくなって本を閉じた。



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