新・本と映像の森 155 灰谷健次郎『兎の眼』理論社、原書1974
286ページ、1986年第59刷、定価980円。
舞台はS町。H工業地帯のなか、T駅の近くの学校など。学校のとなりには「塵埃処理所」がある。つまり焼却場である。
いま『兎の眼』を読み返して、物語の舞台に焼却場とゴミ問題が大きな役割を果たしているのを気がついた。不思議なことにゴミ環境ネットの運動をやっていた時は、そのことをまったく思い出さなかった。
登場「人物」を登場順に書いていくのが本書の紹介になると思う。では最初から。
小谷芙美先生 結婚10日目。小学校の先生.1年4組の担任
臼井鉄三 長屋の子ども。小学生。ハエたちを飼っているハエ博士。
教頭先生
カエルたち 鉄三にふみつぶされる
ハエたち
子どもたち
文治
バクじいさん 鉄三の祖父
文治の父
鳩たち
足立先生
キチ 鉄三の犬
功 長屋の子ども
芳吉 長屋の子ども
純 長屋の子ども
四郎 長屋の子ども
武男 長屋の子ども
銀色の目をしたネズミ
海のカメ
春川きみ 2年生
春川諭(さとし) 1年生
ショウジョウバエたち
ミドリキンバエたち
イエバエたち
村野康子先生
瀬沼浩二
折橋先生
徳治 鳩ぐるい。鳩をとろうとして製鋼所の屋根から転落して入院
キンタロウ 鳩。徳治がいちばん可愛がっている鳩
ゴンタ 鳩。いちばんの年寄り
小谷先生の夫 名前不明。もっと前に出てきたけどメモに取り忘れた
建築士
善財童子
小谷先生の高校時代の恩師
セミたち
木村幸子先生
みさえ 純の妹
恵子
金龍生
伊藤みな子
淳一
勇二
照江
みな子のおばあちゃん
道子
清
やよい
毛虫
山内先生
太田先生
みな子のお母さん
ヒヨコたち
ミドリガメたち
小谷先生の家に入ったドロボー
犬とりたち
警察署長
せっしゃのオッチャン
勝一
校長先生
課長
江川洋子先生
小谷先生の両親と夫の両親
指導主事
トンビ
286ページ。これで、いちおう登場「人物」一覧は終わり。ところが本のタイトルの「兎の目」や「ウサギ」は出てこない。
それで困って、ボクがいま思いついた解決。
小谷先生は「ウサギ」年で、その「ウサギ」年の小谷先生から見たことを小説にしたってこと。違うかな?
もちろん、著者の灰谷健次郎さんは、足立先生に投影されていると思う。
あと、これは作品のなかから、ボクが気のついた珠玉のほんの一部。
「「ほかにもよい作品があるのに、あなたが見落としているかもしれないということ。作品だけでなしに人間もね。」
そういわれて、小谷先生はきゅうに不安になった。
「臼井鉄三に手こずっているようだけど、ぼくの経験からいうと、ああいう子にこそタラモノはいっぱいつまっているもんだ」」(p13)
「心の冷えていくのが小谷先生にわかった。わたしのつらいことは、あなのいっているつらいこととまるっきりちがう、と小谷先生はいいたかったが、もう口がひらかなかった。
その夜、小谷先生はウィスキーをがぶのみした。そして自分がこの世でひとり生まれてきたようなさびしい気持ちになった。
ウィスキーのビンの口にハエが1匹とまった。おっぱらわないで、じっとそれを見た。小谷先生はいつまでも、そのハエを見つめていた。」(p59)