本と映像の森 227 ゆうきまさみ『鉄腕バーディ レボリューション 第13巻』
9月末に発行された「鉄腕バーディ」の最終巻です!
「レボリューション」だけで13巻、その前の「鉄腕バーディ」が20巻ありますから、全33巻です。
まとめて言うと、思い切り広げた伏線と登場人物が活躍できず、わずか3人いや4人、レビとゴメスとバーディ(=つとむ)だけで、それも地球上からのワープ(わかります?)で解決してしまった。
解決のシーンは、ぼくの予想通りですが、実際は千明くんや人形・シルフィアも、帝国軍も、レビが支配下においた皇帝陛下も、連邦軍も、メギウス警部も、椿さんも、みんな何も手を出さず(手を出せず)に終わってしまいました。中杉の意識が吹き込まれた「人形」も、マッド科学者(あのギョロ目の)と一緒に消えてしまいました。
千明家の宇宙船も出番なく、宇宙戦争も勃発せず、実際はもっとからみあった結末があったのかもしれませんが、アッという間に完結してしまいました。
中杉さんがキイパーソンです。彼女の2040年までの「未来日記」が奥の院の「禁書」とされ、それをレビが手に入れ、レビが奥の院に追われる原因になったことくらいは書いてもいいでしょう。彼女はコンピューター研究者として…。
つまり、こういうことですね。ゴメスが地球の自然史博物館にバーディを案内して方立った疑問、「なぜ地球は過去の、人類まで進化してきた生物の歴史があるのに、わがアルタ星系には、アルタ人へ進化してきた歴史がないのか。」「なぜアルタ人と、地球人が似ているのか」
やはり、最初から書き直してみたくなりました。「風の谷のナウシカ」(マンガ版)の結末と、ナウシカの「相手」を、アスベルからセルム(森の人)に変更した設定にあきたらず、結末の「改作」をしたファンがいたように。 もっとも、実際、そんな暇はないですが。そんなこと夢中でしてるのが知れたら、則子さんからぶっとばされますからね。
そして、せっかく宇宙人(アルタ人の特殊体質イクシオラ)の若い女性と、地球人の若い男性の身体が融合したのに、ゆうきまさみさんの趣味なのか、セックスには、性夢程度以上には踏み込まない設定も、ちょっともったいないです。なにしろ、本来は男の子のレビ=クリステラは、神学校で、不慮の事故によって女の子のチュニスの身体と融合されたという設定なのですから。
つまり、この物語の核心は、男とも女とも定かではない、というか、男にも女にもなれる2人の主人公、つとむ=バーディとレビ=チュニカの2人であることは明白です。
そういう雌雄同体の設定は、アメリカの女性SF作家の『闇の左手』で有名ですが、ゆうきさんがそこから借りているかどうかは分かりません。
不満タラタラ述べましたが、やっぱり第1級の良書です。青少年にも大人にも、読んでいただきたいと推奨します。
最後は、中杉からのつとむへのファースト・キス、幸福なまとめで終わりましたからね。めでたし、めでたし。終わりよければ、すべてよし、です。