昔は、学習塾などいうものは、ほとんどありませんでした。私が中学生のころ、学校の近くに一ヶ所だけあった塾は、算盤塾でした。また、当時のほとんどの親は、受験勉強のノウハウなどは持っていなかったので、子供たちはみんな自分なりの工夫で学習したものです。そのころの情報のほとんどは、「○○コース」や「○○時代」という学研か旺文社の学年別の月刊誌でしたから、今考えると、理念だけが先行してかなり能率の悪い学習をしていたように思います。
能率の悪さの一つの例が、数学の難問にぶつかったときです。解き方を何時間も考えて、その1問で1日が終わるようなこともよくありました。和田田秀樹氏の提唱する方法では、そういうときはすぐに解法を見て解き方を理解するということですから、そういうノウハウをあらかじめ知っていれば、かなり能率のよい学習ができたのではないかと思います。
そのかわり、そういう無駄な回り道をしてきたせいか、自分が20代になると、学習法も自分なりに工夫できるようになりました。ところが、現代は、子供たちが逆に塾や予備校で要領のいい学習の仕方を教えられすぎているために、自分で工夫する学習の仕方を身につけていないように思えます。
独学の方法ということですぐに思いつくのは、シュリーマンの「古代への情熱」でしょう。これは、語学の勉強法としては、古典とも言えるものです。しかし、方法がシンプルでありすぎるためか、実行できる人はあまりいないようです。日本では、本多静六氏の著書が、学習法だけでなく処世法一般も説いているという点で出色です。受験勉強法に関しては、高校生では和田秀樹氏の本、中学生では内藤勝之氏の本がおすすめです。このほかにも、書店の参考書のコーナーに行けば、さまざまな著者の受験勉強法の本があります。
当塾では、高校3年生になる生徒に対して、毎年春休み前に、
(1)学習法の本を10冊ぐらい読むこと、
(2)過去問を(答えを書き込みながらでもいいから)ひととおりやること、
(3)志望校の合格体験記などがあれば読んで参考書や問題集選びの参考にすること、
(4)1年間取り組むための問題集や参考書を丸一日じっくり時間をかけて決めること、
と勧めていますが、実行している子はまだあまりいないようです。何度も言っているはずなのに、毎年秋になってから、「そろそろ過去問に取り組もうかと思っているんですが」という生徒がいます。大抵の高校生は、先輩や友人や塾や予備校の先生のクチコミという狭いノウハウを聞きかじるだけで、本を通して幅広く学習法を学ぶという姿勢に欠けています。
受験勉強というのは、ある意味で単純ですから、そのように戦略が無くただがんばるだけの方法でも、そこそこの点数で合格することもあります。しかし、本当は、もっと大きな戦略を先に考えてから取り組むものなのだと、もっと強く伝えなければと毎年感じてい実行しているつもりなのですが…。