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ALGOの塾長日記~愚公移山~

-学習塾方丈記-

学習指導の由なしごとを
    徒然に綴ります。

「思いやり」

2009年08月25日 | 中学受験 行雲流水録
以前、絵本『14ひきの…シリーズ(いわむらかずお作)』について書いたことがあります。もう一つ息の長い絵本シリーズに「ねずみくん……」があります。こちらもとても有名な絵本なので、知っている方も多いかもしれません。奇しくもどちらも主人公はねずみです。この「ねずみくん……」シリーズは、シリーズ第1作が1974年に出版され、最新シリーズの「ねずみくんおおきくなったらなにになる?」で24作目です。私は、この「ねずみくん……」シリーズも大好きです。主人公のねずみくんは、小さいけれどとてもやさしくすてきな男の子です。

一番有名なのは「ねずみくんのチョッキ」。ねずみくんのお母さんが編んでくれた、すてきな赤いチョッキを、「いいチョッキだね。ちょっと貸してよ」とあひるくんに頼まれたねずみくんは、快く貸してあげます。ところが、あひるくんはさるくんに、さるくんはあしかくんに、チョッキをどんどんまた貸ししてしまって……。とうとう最後にはゾウくんにまで着られてしまい……、もうわかりますよね(笑)。ねずみくんのもとに、その赤いチョッキが返って来た時には、ゾウくんサイズにのびてしまっていたのです(笑)。あーあ。チョッキが着られなくなってしまって、とてもかわいそうなのですが、出てくる登場人物ならぬ登場動物たちがとてもかわいらしく、ついついニコニコしてしまう……そんな絵本です。

作者の『なかえよしを』さんの優しさが込められている「ねずみくん……」シリーズですが、そんな『なかえよしを』さんの思いの一端を知る言葉が「ねずみくんのきもち」の見返しにありました。ご紹介します。


「絵本のきもち」
『絵本のなかの動物たちとおつきあいしながら絵本の世界から人間の世界を見上げていますと現実の人間は、「人間らしく、人間として正しく」生きていないのではないかと思えてしまいます。大切なことは何なのかを見失っているとしか思えません。

大切なことはファッションで着飾ることでもなく、おいしいものを食べ歩くなどという物質的なことではなく、やはり人間がもともと持っている想像力ということではないでしょうか? ただ自分の心で想像するだけでなく、想像力というのは自分の心の中から飛びだして他の人の心になり、動物や植物の心となり、自然の心となり、未来の心となり、宇宙の心となることではないでしょうか?

自分以外のことを想像することが自分自身を考え知ることだとも思います。それなのに大人たちは知識をふりかざし、あたかも知識が大切であるかのようにふるまい、こどもたちに知識という情報をつめこんでしまいます。その分こどもたちの心から想像力が失われているのではないでしょうか?

この温かさを見つけるのが難しい現実の世界で大切なことはやはり想像力だと思いますし、一番大切なことは何かとなりますと、それは「思いやり」だと思います。「思いやり」は感謝、謙虚、愛情、慈悲、羞恥、そして誇りのことだと思います。なぜなら、これらは想像力を必要とするからです。いま、わたしたち人間に一番欠けていることではと絵本の世界で思ったのでした。』


常日頃から、私も「思いやり」のある人間になりたいと思っていますし、子どもにも「思いやり」のある人間になってほしいと願っています。しかし、「思いやりを持つことの基本が想像力にある」ということは、当たり前のように思えて、実はなかなか思い当たらないことです。

「思いやり」とはただ優しくすればいいというわけではありません。相手の気持ちや立場を想像し、本当にその人のことを考えること……。難しいけれど、『なかえよしを』さんの言葉を再度お借りして言うならば、「人間らしく、人間として正しく」生きるために、日々を送ることでしょう。そう考えると、なんだか不思議に背筋がピンと伸びた気がする言葉たちとの出会いでした。


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