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ALGOの塾長日記~愚公移山~

-学習塾方丈記-

学習指導の由なしごとを
    徒然に綴ります。

ノーベルの贈り物

2009年08月17日 | 中学受験 行雲流水録
ノーベル賞という輝かしい歴史と権威の賞があります。そんな賞を取られるのはさぞかしひとかどの天才なのだろうと思ってしまいます。しかし、受賞者のコメントを読んでいると、天才という言葉を使っては失礼かな、と感じるほど純粋にテーマと向き合っていることが伺えます。賞を取ること、偉業を成し遂げることを目標とするのではなく、ただ純粋に「好きだ」「知りたい」「自分を信じたい」という思いで研究を続けていることがとても印象に残ります。

先頃の受賞者下村脩氏はクラゲの体からGFP(緑色蛍光たんぱく質)を発見したことでノーベル化学賞が贈られました。「オワンクラゲから発光する緑がきれいだったから」。こんなビー玉を透かしてみた時に思うような小さな感動で、年間万単位のクラゲを家族総出で取り続けたといいます。小さな思い、感動は本当に大切なものです。賞を取ることを目標にしていたならば、途中で挫折していたかもしれません。しかし、「きれいだから」という純粋な気持ちから出た研究であればこそ何十年も続けることが出来たのでしょう。

虫取りに一生懸命になったこと。アリの巣作りを一日ずっと見ていたこと。きれいな石をいつまでもながめていたこと。こんなことは誰にでも一度はあるはずです。けれども、いつの間にか大人になると「そんなの当たり前」という変な知識が邪魔をして、本来あるべき「感動」「不思議」の思いを消し去ります。ぽつぽつとうつむき加減に話す下村氏を見ていると、他人の評価を気にせず、ただ自分の研究内容に正面から向き合ってきた純粋さを感じました。そんな下村氏に比べて、自分の日々の行動は無駄な背伸びをしている、と反省しきりです。

この世の中には私たちが知っていると思っていても、知らないことが多々あります。大人の狭い価値観より、子どもの視点の方がどれほど豊かで広いか分かりません。「そんなの当たり前」なんていう無駄な言葉、ちょっと忘れてみてもいいと思います。日々の生活に忙しくしているだけの私に、「好きだ」「知りたい」という純粋な気持ちが大切なことだ、と思い出させてくれたノーベル賞でした。

遺言状に「世界平和に貢献した研究をした人に与える賞を」と認めたノーベル。ノーベル賞受賞者の感概は、研究結果がどれほど優れているのかははっきりとは分からない私にも、ノーベルの心だけはしっかり届けてくれたように思います。結果を認められることが大切なのではなく、「好きだ」という気持ちが大切なのです。そして、その純粋な気持ちこそ、世界平和への共通の意識としてきっと必要なのでしょう。


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