ALGOの塾長日記~愚公移山~

-学習塾方丈記-

学習指導の由なしごとを
    徒然に綴ります。

星に願いを…

2009年03月12日 | 中学受験 行雲流水録
「地球の出」「地球の入り」「満地球」……何だか変な言葉です。月から見た地球の姿をこう言うのだそうです。

宇宙航空研究開発機構JAXAが打ち上げた月探査衛星「かぐや」には、地形カメラをはじめとする15種類の観測ミッションがあって、月の地表や地中、周囲の環境についてさまざまなデータを収集しました。最新の技術によって、これまでわからなかったことを知る喜び、今後広がる数々の可能性。「かぐや」が研究者や私たちにもたらしたものは、夢や希望に他なりません。

月の表面は、ご存じの通りクレーターだらけでデコボコしています。他の天体や隕石が衝突した跡ですが、月は地球と違って大気がないために、今でも隕石が頻繁に落下しているそうです。「かぐや」で地質を観測したり鉱物を発見したりすることで、将来には人間の居住空間を作ることができるかもしれないとのことですが、隕石がバンバン落下してくることを考えると、地下に作るのがよいような気になります。

「かぐや」からの映像を見ても、月の水も緑も空気もないデコボコの地表は、太陽の光をあびれば照らされますが、ただただ土ばかりです。延々と続く冷たい砂漠を見ているようです。知らずに見たら「白黒の映像か?」と勘違いしてしまいます。その地平線から日が昇るがごとく姿を現すのが地球です。白黒の月面、漆黒の空、その彼方から頭を出す青はうそのように明るく美しい青です。これが「地球の出」。そして月の空に浮かんだまん丸の地球が「満地球」。まぎれもなく私たちが存在する地球は、まっ黒の空間に“浮かんで”います。その映像を見て、私は自分自身が宙に浮いたような落ち着かない感覚になりました。

月から見た地球は、輝くように鮮やかで、地形もはっきりと見えます。その地上で今この時も人間同士争ったり、憎しみ合ったりしている。そのことはとても情けないことです。地球が星だということを知らない時代の人々が、自分の欲のままに となりの土地を奪い合ったのは、当然起こった感情でしょう。しかし、「無」ともいえるまっ黒な宇宙に私たち自身が浮かんでいるのだという事実を目にしたら、「私」も憎い「相手」もみな美しい地球の一部なのだということに気付くでしょう。「我々」は広い宇宙の中にぽつんと浮かんだ星で、身を寄せ合って生きているだけなのです。

月にある鉱物を利用してホテルを作り、月旅行ができるようになる時代も遠からず来るでしょう。そのようなことを一つの目標として夢や希望を広げるのは、すばらしいことです。ただ、そこに人間の利害や争いは起こらないでしょうか。地球の土地は誰のものでもなかったのに、いつの間にか誰かのものになってしまいました。誰のものでもない月も、早い者勝ちで競い合う、覇権主義や経済活動の対象になってしまうかもしれません。人類が、地球上で繰り返されてきた争いの歴史を月でも巻き起こす可能性は、あながちゼロではありません。

月から地球を見れば、誰もがきっと思いを一つにするでしょう。個人の欲や憎しみは生まれないような気がします。人類が月に進出する時、地球人という大きな仲間として歴史を刻んでほしい、そんな願いを抱いた「満地球」の映像でした。


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