ALGOの塾長日記~愚公移山~

-学習塾方丈記-

学習指導の由なしごとを
    徒然に綴ります。

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2011年03月02日 | 中学受験 合格力随想

通常、 作文の苦手な子といった場合、二つのケースが考えられます。一つは、本人が苦手と思いこんでいるケース。もう一つは、本当に苦手なケース。実は自分が苦手と思っていることと実際に苦手なことは、結構一致しないことの方が多いのです。このことは作文にも当てはまります。

まず、本人が苦手と思っているケースですが、 体験学習で教室に来た生徒に、最初に聞きます。「作文好き?」と。すると、面白いように生徒の答えが三つに分かれます。

第一は、「大好き」という子。実はこんな子に限って、苦手なことが多いのです。なぜ好きだと思っているかというと、学校などでこれまで作文を書く機会があまりなかったので、作文に対して苦手意識がなく、漠然とどちらかといえば得意だと思っているのです。しかし、練習無くして、作文力はつきません。

第二は、「普通」と答える子。この「普通」と答える生徒は、かなり得意なことが多くあります。つまり、自分の実力がよく分かっているということで、非難されないぐらいの書く力はあると自負しているということです。

第三は、「苦手」という子。この「苦手」という子は、大体は「普通」か「得意」な子で、実際に「苦手」なことはあまりありません。 なぜ普通や苦手と思っている子が得意なことが多いのかというと、学校で熱心に作文を教える先生にあたると、苦手な子が増えるという事情があるからです。

これは他の教科でも同じことがいえるようです。以前、社会科の熱心な先生に教わって、社会が大嫌いになったという話がありました。同じように、算数が好きで算数の熱心な先生に教わっている子が、算数が嫌いで苦手になるということもありました。

これはどういうことかというと、先生がその教科が好きで熱心であると、つい生徒の欠点が目につくので、その欠点をなんとか直してしまおう無理矢理に取り組み、強度のストレスを与えるからです。その繰り返しの中で、子供たちはその教科が苦手だと思うようになっていきます。

特に、作文はこの度合いがほかの教科よりも強く出やすい分野です。したがって、作文を教える場合は欠点をなるべく指摘しないことが大事です。少なくとも指導者と生徒の間に信頼関係ができるまでは、一言も注意をしないというぐらいの決心が必要です。また、指導者と生徒の間に信頼関係ができたとしても、二つ褒めて、一つたまたま注意するところが見つかったというような注意の仕方をすることが大切となります。

作文はメンタルティの高い学習であり、子供たちは自分の全人格をかけて文章を書いていると考えて下さい。ここが、計算問題や漢字の書き取りと本質的に違うところです。子供たちが全人格をかけているということは、欠点の指摘がその人格の否定になりかねないことになります。ところが、指導者はその作文の欠点が目についた場合、欠点を直そうと軽い気持ちで関わります。ここに大きなギャップがあるのです。


例えば、こういう例がありました。小学校3年生のよくできる子が体験学習に来ました。指導者の説明のとおり作文を書き上げました。とても上手にかけているので、褒めるところばかりで、直すところがほとんどありません。そこで、指導者がたくさん褒めたあと、ついでに一言、「実は数字は、縦書きのときは漢字で書く方がいいよ」と言うと、その子は突然泣き出しました。それぐらい作文の指導というのは微妙なのです。

また、次のような例もありました。高校3年生が小論文の指導を受けにきました。大学入試までの1年間の時間があるので、苦手な小論文をなんとかしようと思って来たのです。普通の教科はよくできますが、小論文は「超」がつくほど苦手で、小学校高学年から中学・高校まで、学校から作文の宿題が出たときは、保護者の方が代わりに書いてあげざるを得ないほど苦手だったということです。

これは、たぶん小学校低学年のころの作文指導を受けるとき、強く欠点の指摘をされたというトラウマが残っていたのではないかと思います。 「事前の指導」と「事後は褒めること中心の評価」という指導を行うと1週目からすぐ書けるようになり、その後、ぐんぐん上達し、翌年大学に合格しました。 これらの例でもわかるように、小学校低中学年のころの作文の指導というのは、褒めることが非常に大事なのです。

次に、実際に苦手な子の場合です。 苦手な子の原因は、一言でいうと読む量が不足していることです。なぜ読む量が不足しているかというと、生活の時間帯の中で、本を読む時間が取れていないからです。

この理由はいくつかありますが、一つは、スポーツが好きで表で遊んでばかりいるので、家に帰ると食事をしてあとは寝るだけという形で生活している子です。もう一つはテレビやゲームが好きなので、本を読まないという子です。

本を読まない子は、活字が苦手なので、漫画すらも読まないということがあります。こういう子供に対しては、その子のレベルに応じて、つまりどんなにやさしい本でもいいですから、一日50ページ以上好きな本を読むという時間を確保していくことが大切です。読む時間を毎日確保できれば、本にはもともと子供たちを引きつける力があるので、必ず読書好きなっていきます。このことは、子供たちの問題ではなく保護者の方の問題であり、保護者の方が読書時間を確保しようとするかどうかににかかっています。


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